『卿卿日常』 中国ドラマ 鑑賞記録 2
中国には日本で言えば視聴率にあたるもの以外にも成績を数値化する指数がいくつもあるようで、本作は出だしの勢いを維持し数々の記録的ヒットを打ち立てました。日本を含む海外(中国から見て)でも期間No.1だったようです。
「楽しいドラマ」には色々なパターンがありますが、内容が濃くて飽きさせないもの、真実に光を当てて心に訴えかけてくるもの、とにかく面白くて笑えるもの、ミステリーであればプロットが秀逸で思わず引き込まれハラハラドキドキさせられるもの、などなど。
そんな中、本作はかつてない新しい面白さを備えたドラマだったのではないでしょうか。わたしも過去に経験のない程没入して楽しく鑑賞しました。
では早速、後半部分の感想パート2、いきたいと思います!
パート1はこちら→
終盤までのざっくり展開
主なポイントはざっとこんな感じ。
正妻 元英は無事金川に戻れるのか
五少主 尹岐と上官婧の関係はどうなるのか
火花を散らす尹峥と嫡长主 尹嵩の攻防
尹嵩の側室 郝葭の命運
李薇たちのレストランは営業再開できるか
六少主 尹峥は無事後継者となって九川を改革できるのか
そして 尹峥と李薇の愛のゆくえは?
これらに尹峥の任務上の難題や家族間のいざこざが絡んで、山あり谷ありで物語は進んでいく。と言ってしまえばそれまでなのだが、このドラマはメインストーリー以外のところに大事な主張を盛り込んでくるのが特色だ。
例えば、一つの重要なテーマである「女性のキャリア形成」。
これは李薇にとってはレストランの運営。そしてそれだけでなく、宮中の女性も一般の女性も夫に頼るばかりでなく自立して生計を立てられるような社会にしていくという、もっと社会貢献的な夢。
金川に戻った元英にとっては、初の女官として朝廷の実務に携わること。
上官は女侠として江湖を巡ること。
夫に見切りをつけて黛川に戻った赵芳如も、家業に参画。
三少主の節気ガールズや、他の女性たちも同じように皆何かしらで困難に立ち向かいながらも諦めず自立の道を模索していくのだ。
そしてそれを女性同士が助け合って切り拓いていくところに、このドラマが醸し出す気持ちのよい爽やかさの秘密があるのではないか、と思う。
ドラマ最大の魅力は?
わたしがここまで本作に引き込まれたのは、恐らくこれらのテーマを押しつけがましくないコメディタッチで見せてくれたからではないかと思っている。
何を描くにしても、必ず絶妙のタイミングでホロリとさせられたり、大笑いさせられたり。その間合いのよさには完全に脱帽だ。
世のドラマにはよく「予定調和」といわれる、先が読めてしまう展開がある。これはこうなるだろうなと思うと、得てしてその通りになる。読めてしまっているから感動が少ない。
ところが本作は必ず意表を突いてくるのだ。
ラブラブな場面でこちらが「ぽわぁ~ん」とトロけていると、いきなり笑い沼に突き落としてくる(笑)いい気になってお茶なんか飲みながら観ていて、なんど吹き出しそうになって慌てたことかw
かと思えば真面目に世の真理を説き、しんみりしていたと思うとすかさず新たな事件が勃発して侮れない。
緩急の間、シーン展開のテンポが半端なくよい。
半面、こちらを裏切ることなく存分に感情移入させてくれる匙加減も素晴らしい。もう少しこのシーンが長かったら間延びして醒めてしまう、逆にまだこちらの気持ちが追い付いていないのにどんどん先に追い立てられる、などの消化不良を起こさせない丁寧な演出。素晴らしい!!
脚本も秀逸だがそれを具現化する俳優さんたち、そして演技を付ける監督や撮影のカメラワーク等等、全てにおいてぬかりがない。丁寧にこちらを物語世界に浸らせてくれるのだ(拍手!)
そして古装剧のフレームで語られるこのドラマ、実は衣装と設定が時代劇なだけである。女性の自立や市民主体の政治改革など、そっくりそのまま現代に置き換えられるテーマ性を持っているというところも新しい。
最終話と初回のシーンが重なり、始めて会った時のメニューが再現されたり、選抜された新人女性たちにかつての自分たちを重ね合わせる演出など、取りこぼしなく非常に上手くて、感動的だ。
中秋節に絡めて皆揃って明るい未来へ向かっていく締め方も、本当に素晴らしかった。
そして俳優さんたちの演技!
主役二人はもちろんのこと、脇役の全ての人達がそれぞれの役処でベストな演技をしていると思う。
李薇役の田曦薇、尹峥役の白敬亭、二人ともわたしは初めて演技を拝見する役者さんだったが、李薇のまっすぐ心で体当たりしていくような、私利私欲なく相手のことを第一に思って行動する姿が、このドラマの大きな魅力だったであろう。その意味で田曦薇のあの大きな目(と旺盛な食欲w)で何事も明るく乗り切っていくたくましさの演技は、可愛らしくも爽やかだった。
尹峥は、もちろんラブストーリーとしても、兄弟権力争いの主軸としても、最も重要な役処だと思うが、白敬亭の衣装にマッチした流麗な歩き方、身のこなしと佇まいが本当に素晴らしい。知性的な落ち着きと表情豊かなコメディセンスのギャップには完全にやられてしまった。静と動、喜怒哀楽、全方位に発揮される演技力が秀逸で、優しくて包容力ある尹峥を好演している。
上手いなー!
美しいなー!
かわいいなー!
白敬亭、もう沼落ち寸前(笑)
ついでに、後半に披露される太くて迫力ある怒鳴り声にもシビれること請け合い。
次に観る時に注目したいこと
今、平台のaiqiyiでは順次日本語字幕が仕上がっているのでもう一度観る予定なのだが、その時にぜひチェックしたい事柄。
それは、尹峥と李薇がいつお互いを好きになったのか?! 特に尹峥!
この点については最終回で二人の会話にもなっていて結局、分からないということに落ち着いたのだが、観ているこちらも分からなかった。
これ程までに自然な流れで、いつしか心を寄せ、深く愛し合うようになるまでの軌跡が丁寧に描かれている作品を他に知らない。
通常一般のドラマでは「○○は○○のことが好きになった」という前提、というか、既成事実的な描き方がされるものだと思う。がこのドラマはそこを敢えて明確にしない。そんなところも斬新で興味を掻き立てられる作品なのだ。
さて。書いているとキリがないのでこの辺で筆を置きたいと思います(笑)
正直、この素晴らしい作品の魅力を伝え切れたとは到底思えません。
なので、ぜひご興味を持たれた方は鑑賞して頂ければ!
笑って、泣けて、最後はきっとシアワセな気持ちになれるはずです。
EDの音楽もよかったなー。何曲もあります。
とにかく配役も筋書きも演出もカメラワークや衣装セット、その他全てが最高なドラマ『卿卿日常』でした!!!
拙いレビューをお読みいただきありがとうございました。