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間質性肺炎(4) 素人でも分かる、間質性肺炎のCT画像
(注)この投稿はフィクションであり、特定の患者さんや症例と関係するものではありません。
■登場人物
Dr.Y: 総合病院に勤務する呼吸器内科医。
患者S:67歳男性。健康診断を契機に間質性肺炎を指摘され、Dr.Yの外来に紹介される。
1. CTで見る肺の正常構造
患者S: CT、撮ってきました。
Dr.Y: お疲れ様でした。では、一緒に見てみましょう。
患者S: いやいや、そんな。私が見ても、素人なので何がなんだか。
Dr.Y: 皆さん、最初はそうおっしゃいますけれど、ちゃんと説明されれば分かると思いますよ。他の患者さんも、何度か見ているうちに見慣れてきて、私が説明する前に「あまり変化ないですね」とか言ったりするくらいですから。
患者S: はあ、そんなものですか。
Dr.Y: これは体の断面を足元の方から見上げているような図になります。画面の上が体の前面で、下が背面になります。
患者S: なるほど。そうすると向かって右側が体の左側、向かって左が体の右側ですね。
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Dr.Y: はい、その通りです。左右が逆になります。
患者S: CTでも肺は黒く映るのですか?
Dr.Y: はい。レントゲンでもCTでも空気を含んでいるところが黒く写ります。
患者S: 肺の中でも一段と黒く抜けているところは何ですか?
Dr.Y: そこは気管支、空気の通り道ですね(下図の青い部分)。逆に白い点々は血管です(下図のピンクの部分)。
患者S: なるほど。2枚目の断面の右肺の真ん中に大きな白い塊がありますが、これは血管にしては大き過ぎるような・・・。
Dr.Y: これは肝臓ですね。この断面がちょうど胸部と腹部の境目なので、腹部の肝臓の一番てっぺんが肺の断面でも見えてくるのです。
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2. CTで見る間質性肺炎の病変
患者S: なるほど。正常な構造がわかったところで、ここに異常は見られるのですか?
Dr.Y: はい。2つの断面の肺の外側の方を見てください。白く濁っていたり、網目状になっている部分が分かりますか?
患者S: はい、分かります。
Dr.Y: そこが間質性肺炎の病変です(下図の赤いマーカーで囲った部分)。
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患者S: 白く濁っているところと網目状になっているところは同じ病気なのでしょうか。
Dr.Y: はい、どちらも間質性肺炎の病変ですが、特に網目状になっているのは線維化を起こしている病変です。
患者S: 線維化というと、肺が硬くなって縮んできているところですか・・・。
Dr.Y: その通りです。聴診の時に息を吸うのにあわせてバリバリっと音がした部分です。
患者S: ここは元に戻りますでしょうか?
Dr.Y: 残念ですが、一度線維化してしまったところは不可逆性の変化を起こしているので、元には戻らないのです。なので、このような病変が増えていかない事を目標にしなくてはいけません。
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患者S: まだ可逆性を残している部分というのもあるのでしょうか。
Dr.Y: そうですね、この、すりガラス状に薄くにごっている部分は分かりますか?
患者S: はい。分かります。
Dr.Y: この部分をすりガラス影と言います。確定的な事は言えませんが、すりガラス影は線維化になる前の炎症を見ている可能性があります(*)。
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患者S: 炎症を起こして、その後線維化になるのですか?
Dr.Y: 基本的にはそうです。特発性肺線維症(IPF)は炎症をすっ飛ばしていきなり線維化を起こすので治療が難しいですが、多くの間質性肺炎ではまず炎症が起きて、その後線維化に進行します。
患者S: という事は、炎症の時点で抑えられれば線維化にならず元に戻る可能性があるという事ですか?
Dr.Y: その通りです。
患者S: もし、上手く抑えられなければ?
Dr.Y: ここも線維化を起こして不可逆的な変化になってしまいます。
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(*)正確には、すりガラス影の全てが炎症というわけではなく、微細な線維化を見ている事もありますので、すりガラス影=可逆性とは必ずしも言い切れないのが難しいところです。
3. 本記事のまとめ
・CTで正常構造と間質性肺炎の病変がどのように見えるかを書いています。
・網目状に見える部分は線維化を表しており、不可逆的な変化を起こしていると考えられます。
(注)この投稿は架空のシナリオに基づいて作成されています。内容は医療現場の一例をイメージしたものであり、実在する人物や事例に関連するものではありません。
参考文献:
日本呼吸器学会 特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き2022 第4版(南江堂)