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間質性肺炎(15) いざ、気管支鏡。
(注)この投稿は架空のシナリオに基づいて作成されています。内容は医療現場の一例をイメージしたものであり、実在する人物や事例に関連するものではありません。
■登場人物
Dr.Y: 総合病院に勤務する呼吸器内科医。
患者S:58歳男性。健康診断を契機に間質性肺炎を指摘され、Dr.Yの外来に紹介される。
1. 検査前、病室にて
(病室にて)
Dr.Y:コンコン、失礼します。
患者S:はい。
Dr.Y:Sさん、入りますよ・・・おはようございます。昨日はよく眠れましたか。
患者S:おはようございます。緊張しちゃって。なにせ入院するのは初めてなもんで。
Dr.Y:今日はとうとう気管支鏡ですね。外来でも説明しましたが、クライオバイオプシーという方法を用いて、間質性肺炎の病変を凍結させて採取するという方法を使います。
患者S:本当に痛くないんですよね。不安で。
Dr.Y:以前もお話した通り、肺の中で痛いのは一番外側の胸膜と呼ばれる部分だけで、気管支鏡で採取するのはここよりもう少し内側なので痛くないですよ。逆に処置中に痛みを感じるようなら胸膜に触ってしまっている可能性があるのですぐに教えて下さい。
患者S:わかりました。
Dr.Y:クライオバイオプシーでは、病変組織を採取しますが、それだけではなく周辺を生理食塩水で洗浄し回収する気管支肺胞洗浄という処置も行います。
患者S:はい。よろしくお願いします。
Dr.Y:では、また後ほど看護師さんがお迎えにきますので。わたしたちは内視鏡室の方でお待ちしてますね。
2. いざ、気管支鏡
(内視鏡室にて)
看護師Z:Sさんが到着しました。
Dr.Y:どうぞお入りください。
患者S:よろしくお願いします・・・ずいぶんたくさんお医者さんや看護師さんがいらっしゃるんですね。
Dr.Y:安全に行うために役割分担をしています。気管支鏡の術者、術者の介助をする人、気管支鏡で採ってきた検体を処理する人、鎮静薬や鎮痛薬を投与する人・・・看護師さんも目を光らせていますよ。
患者S:これだけ多くの人が処置に立ち会ってくれているなら、何か術中に合併症が起きても安心ですね。
Dr.Y:そんな事がないように細心の注意を払いますがね。万が一不測の事態がおきても全員できちんと対応します。はい、それでは口を開けてください。まずは咽頭麻酔・・・喉の奥の局所麻酔をします。
患者S:スーハースーハー、なんだか苦いですね。
Dr.Y:そのうち感じなくなってきますよ・・・お上手ですね。その調子です。喉の力を抜いて、大きく吸い続けてください。
患者S:スーハースーハー、喉の奥が変な感じがしてきました。
Dr.Y:喉頭麻酔(こうとうますい)が効いてきている証拠ですね。これをしっかりやっておくと、咳の反射などが起きにくくて後が楽ですよ。
Dr.Y:次はこちらのベッドに横になってください。もう一度、確認をするので、名前をフルネームで教えて下さい。
患者S:はい。Sです。
Dr.Y:Sさんですね。よろしくお願いします。ではこれから気管支鏡を始めますが、時間はだいたい30分くらい、長くても45分くらいです。
患者S:はい。お手柔らかにお願いします。
Dr.Y:途中で万が一苦しいとか、胸に痛みを感じるような事があったら教えて下さい。
患者S:口からカメラが入っているのにどうやって伝えれば良いですか。
Dr.Y:ベッドをバンバン叩いたり、あとは痛い場所を指さしたり、ジェスチャーで教えてもらえれば分かります。では、このマウスピースを加えてください。これからSさんの点滴に鎮痛薬と鎮静薬を入れていきます。少しウトウトしてきますよ・・・
3. 検査後、病室にて
(再び、病室にて)
何者か:・・・さん、・・・さん
患者S:うーん
看護師Z:Sさん、Sさん。
患者S:うーん・・はっ、ここは?
看護師Z:病室です。
患者S:あれ、気管支鏡の処置を受ける所でしたが。
看護師Z:もう終わって、病室へ戻ってきていますよ。気管支鏡は無事に終わりましたよ。
患者S:完全に眠るのではなくウトウトする程度だと言われていましたが。
看護師Z:ウトウトしていましたよ。鎮静薬の影響で、処置中の事を覚えていないのかもしれませんね。でも最後の方は鎮静薬の効果が弱くなってきてモゾモゾし始めてました。
(ドアが開き、Dr.Yが入ってくる)
Dr.Y:失礼します。あっSさん、完全に目が醒めましたね。
患者S:無事に終わったのですか?
Dr.Y:順調でしたよ。クライオバイオプシーで肺の組織も合計3つ採取し気管支肺胞洗浄も行い、病理検査にまわしました。
患者S:まだ喉の違和感が残っています。それから、痰に血が混じっていますが大丈夫ですか?
Dr.Y:少量の血痰はどうしても出てきますが、自然に減ってきますよ。血痰の量がどんどん増えてくるのでなければ問題ありません。
患者S:良かったです。ありがとうございました。
Dr.Y:受けてみてどうでした?つらかったですか?
患者S:そうですね。完全には思い出せませんが、全く辛くなかったと言えば嘘になりますね。やっぱり気管支鏡が肺の中を通っている時は息がしづらい感じがしましたし、咳も結構出た気がします。でも、確かに痛くはなかっですし、ウトウトしながらやってもらえたのは良かったです。。
Dr.Y:こればかりは個人差がありますね。麻酔のかかりやすさ、咳の反射の出やすさ、痰絡みの程度など、さまざまです。極力全員が楽にできるように、我々ももっと技術を積んでいかなくてはいけませんがね。
患者S:そういえば、おぼろげですが、「1、2、3、4」ってY先生が数を数えているのが遠くの方で聴こえていた記憶がありますが、あれは何をしていたのですか。
Dr.Y:おそらく、クライオバイオプシーの時ですね。クライオプローブで周囲の組織ごと凍らせている時に時間を測っていたのが聴こえていたのだと思います。
患者S:この後の予定はどうなりますか?
Dr.Y:明日、レントゲン検査を受けていただき、肺に穴があく気胸という合併症が出ていなければ、一旦退院です。それから来週もう一度外来に来ていただき、合併症が起きていないかチェックします。
患者S:肝心の検査結果はいつ教えてもらえるのですか?
Dr.Y:数週間後、今回の病理検査の結果を踏まえて我々臨床医と放射線科医、病理診断医がSさんの原因検索について話し合う多職種合議(MDD)カンファレンスというものがあるので、そこで結論がでた段階でお伝えします。
患者S:分かりました。ドキドキします。
(注)この投稿は架空のシナリオに基づいて作成されています。内容は医療現場の一例をイメージしたものであり、実在する人物や事例に関連するものではありません。診断や治療については記載された情報を基に自己判断せず、必ず主治医に相談してください。