喘息(21) 鼻炎もきちんと治しましょう〜「ズルズルッ」から「ヒューヒュー」へ〜
0. 本記事のまとめ
・喘息と鼻炎は密接に関連しています。
・鼻炎を合併している喘息患者さんは、鼻炎の治療をしっかり治療する事が喘息のコントロールにもつながります。
1. One airway, one disease
吾妻さん: 失礼します。
Dr.Y: あぁ、吾妻さん。お久しぶりです。調子はどうですか。
吾妻さん: それが最近あまり良くないんです。
Dr.Y: どうしたんですか。
吾妻さん: 鼻炎がひどくなってきてしまって。
Dr.Y: 吾妻さんは確か、春と秋の花粉にアレルギーがありましたよね。
吾妻さん: はい。スギ、ヒノキ、ブタクサのアレルギーがあります。
Dr.Y: 花粉症ですかね。時期的にはブタクサですが。酷いですか?鼻水。
吾妻さん: はい。前にも後ろにも垂れてきます。それで耳鼻科に行ったんです。
Dr.Y: どうなりました?
吾妻さん: はい。抗ヒスタミン薬という炎症止めの飲み薬をもらいました。それから点鼻薬ももらって、鼻にシュッシュッと噴霧したら、少しはマシになったんですが…。
Dr.Y: どうかしたんですか?
吾妻さん: 同時期から咳の方も悪化してきて。喘息の吸入薬は忘れずきちんと使っているんですけれど。
Dr.Y: そうですか。アレルギー性鼻炎は、喘息とつながりが深いですからねえ。
吾妻さん: ちなみに花粉症とアレルギー性鼻炎ってどう違うんでしたっけ?
Dr.Y: 花粉症はアレルギー性鼻炎の一種です。アレルギー性鼻炎にはダニなどに対する通年性アレルギー性鼻炎と、花粉などに対する季節性のアレルギー性鼻炎があります。
吾妻さん: 確か喘息の増悪因子のところで、鼻炎や副鼻腔炎が出てきてましたよね。
Dr.Y: はい。"One airway, one disease"という概念があります。
吾妻さん: 一つの気道に、一つの病気・・・ですか?これはどういう意味ですか?
Dr.Y: 鼻腔と気管支は一つの気道でつながっていて密接に関連している、という意味です。実際、アレルギー性鼻炎と喘息は合併しやすく、そういう人では鼻炎が悪くなると喘息も悪くなりやすいです。
2. 鼻炎治療で喘息のコントロール改善を
吾妻さん: なるほど。そうすると、私みたいな人は多いという事ですか?
Dr.Y: はい。実感としても多いですし、あとはきちんと研究としても報告されています。国内の喘息患者さん約3万人を対象とした大規模な研究でも、喘息患者さんの約70%にアレルギー性鼻炎が見られたとしています(1)。
吾妻さん: かなりの合併率ですね…。なんで鼻炎が悪くなると喘息も悪くなるんですかねえ。
Dr.Y: 鼻水が喉に垂れ込む時に炎症物質を運んでくるとか、鼻が詰まって口呼吸になるため気道に入る花粉量が増えるとか、鼻炎で生じた炎症物質が血液に乗って全身をまわり気道でも影響を及ぼす、とか色々言われています。
吾妻さん: そうなんですね。鼻炎の治療をすると喘息の方も改善するのでしょうか。
Dr.Y:鼻炎の治療が喘息の病態も改善するという事はいくつかの報告で証明されているようです (2)。
吾妻さん: では、引き続き耳鼻科に通って鼻炎の治療していこうと思います。一方で、喘息の方の治療はどうしましょう。
Dr.Y: まずはきちんと花粉対策をする事が大事ですが、それと同時に、内服薬も一つ増やしましょう。ロイコトリエン拮抗薬 (LTRA)というお薬です。
吾妻さん: これはどんな効果があるんですか?
Dr.Y: 気管支に存在するロイコトリエン受容体という所に作用して炎症や気管支の収縮を抑えます。吸入薬による治療に上乗せする事で、喘息のコントロールを強める事ができます。
Dr.Y: この受容体は気管支だけでなく鼻粘膜にもあるので、喘息だけでなく鼻炎の方にも効いてくれると思いますよ。
吾妻さん: 分かりました。内服薬の効果にも期待したいと思います。
参考文献
1. Ohta K, Bousquet PJ, Aizawa H, et al. Prevalence and impact of rhinitis in asthma. SACRA, a cross-sectional nation-wide study in Japan: Prevalence and impact of rhinitis in asthma. Allergy. 2011;66(10):1287-1295. doi:10.1111/j.1398-9995.2011.02676.x
2. Khan DA. Allergic rhinitis and asthma: epidemiology and common pathophysiology. Allergy Asthma Proc. 2014;35(5):357-361. doi:10.2500/aap.2014.35.3794
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