間質性肺炎(1) 普通の肺炎と違うのか
(注)この投稿はフィクションであり、特定の患者さんや症例と関係するものではありません。
■登場人物
Dr.Y: 総合病院に勤務する呼吸器内科医。
患者S:67歳男性。健康診断を契機に間質性肺炎を指摘され、Dr.Yの外来に紹介される。
1. 間質性肺炎の「間質」とは
Dr.Y: 次の方、どうぞー。
患者S: ガラガラガラ、失礼します。
Dr.Y: Sさんですね。今日はJ呼吸器クリニックからの紹介でいらっしゃったのですね。
患者S: はい。よろしくお願いします。紹介状も持ってきました。
Dr.Y: 紹介状を見ると、「間質性肺炎疑いにつき、精査願います」と書いてありますね。
患者S: はい。でも症状は何も無いんです。健康診断で肺に影があると言われて、CTで精査してもらったら間質性肺炎と言われてしまいました。
Dr.Y: 確かに、こうやってお会いしても特に辛そうな様子には見えませんね。
患者S: 先生、間質性肺炎ってどんな病気なんですか?
Dr.Y: はい。間質性肺炎というのは、様々な原因により肺の間質という部分で炎症や線維化が生じる事で、肺が膨らまなくなってしまう病気です。
患者S:・・・間質?線維化?
Dr.Y: 肺は「実質」と呼ばれる部分と「間質」と呼ばれる部分で構成されます。「実質」というのは肺胞の中を指し、ここに吸った空気が入っていきます。「間質」というのはその周りの壁の部分を指します。間質性肺炎というのは、この間質で異常が起きるのです。
患者S: 異常ってどんな事が起きるんですか?
Dr.Y: 炎症や線維化が起きます。線維化というのは硬くなる事です。
患者S: 間質と呼ばれるところが炎症を起こしたり硬くなったりすると、どうなるのですか?
Dr.Y:肺が膨らまなくなるので、息を吸っても十分な量の空気が肺に入りません。また、ようやく入ってきた空気も一部しか体内に取り込めなくなります。
2. 普通の肺炎と何が違うか
患者S: これは普通の肺炎と違うんですか?
Dr.Y: 一般的に「肺炎」と言われるものの多くはバイ菌が悪さする細菌性肺炎を指します。細菌性肺炎では肺の実質がやられます。
患者S: 実質は空気が入ってくる肺胞のことでしたね。
Dr.Y: はい。バイ菌と自分の免疫細胞が戦った残骸が肺胞に溜まり、黄色い痰になって出てくるわけです。熱もうんと出ますし、痰が絡んで四六時中息苦しい。
患者S: 細菌性肺炎と間質性肺炎では症状も異なりますか。
Dr.Y: そうですね。間質性肺炎では細菌性肺炎と違って痰のない乾いた咳になる事が多いです。また、安静時は軽度でも動いた時に顕著に息苦しさを感じるようになります。これを労作性呼吸困難と呼びます。
患者S: 私は間質性肺炎と言われましたが、今の所これらの症状はありません。これはどういう事ですか?
Dr.Y:間質性肺炎には急に症状が出てきて一気に進行するものや、月単位・年単位で少しずつ症状が出てくるもの、進行が遅くていつまで経っても症状が出てこないもの、様々です。今は症状がなくても将来的に出てくる可能性があります。
患者S: 普通の細菌性肺炎だと急に進行しますもんね。そこも違う点ですか?
Dr.Y: そのとおりです。細菌性肺炎の多くは数日〜数週間にかけての急激なイベントです。しかし間質性肺炎はもっと長期間にわたってつきあわなければいけない事が多いです。
3. 治療はどうするのか
患者S: それは心配です。抗菌薬などで治せないんですか?
Dr.Y: 先ほど言った通りバイ菌が入って悪さをする細菌性肺炎とは全く別物なので、抗菌薬は効きません。
患者S: ではどうやって治療するんですか?
Dr.Y: 間質性肺炎は様々な原因で起こりますから、原因を調べないと治療法も決まりません。一概に「間質性肺炎は〜で治療します」というものではないという事です。また、そもそも進行が遅ければ治療せずに経過観察のみで十分な事もあります。
4. まとめ
・間質性肺炎は肺が膨らみにくくなる病気で、乾いた咳と動いた時の呼吸困難(労作性呼吸困難)が特徴です。
・急速に進行する場合もあれば、時間をかけて進行する場合もあります。
・細菌性肺炎とは異なる病気なので、抗菌薬では治せません。
(注)この投稿は架空のシナリオに基づいて作成されています。内容は医療現場の一例をイメージしたものであり、実在する人物や事例に関連するものではありません。