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間質性肺炎(20) 11〜19のまとめ(患者さん向け: 診断に関して)

主治医が患者さんの問診や診察や血液検査などをもとに下す診断を臨床診断、放射線科医が患者さんの画像情報(レントゲンやCTやMRIなど)をもとに下す診断を画像診断と言います。

間質性肺炎では、臨床診断と画像診断は時に食い違い、結論が出ない事があります。

一方、内視鏡検査や手術などで病変の組織(細胞の塊)を採取し顕微鏡で観察して下す診断を病理診断と言います。

臨床診断と画像診断に病理診断も加える事で、総合的な視点から正確な診断と治療につながりやすくなります。

病理診断を行うために病変の組織をとってくる事を生検と呼びますが、間質性肺炎の生検には気管支鏡と手術の2つの方法があります。

気管支鏡の方が体への負担が少なく生検を行う事ができますが、手術に匹敵するほどの診断能があるかどうかは、まだ議論が分かれます。

気管支鏡で行う生検の技術の一つに経気管支凍結生検法というものがあります。これはクライオバイオプシーとも呼ばれ、肺の組織を凍結させて採取してくるというものです。

クライオバイオプシーでは従来の気管支鏡の生検方法と比べ、大きなサイズの組織が採れるので評価しやすいるというメリットがあります。合併症は起こり得ますが大事に至ることは少ない手技であると報告されています。

気管支鏡は、鎮静薬を使用して意識レベルを落とした状態で行いますが、どのくらい楽にできるかは術者の技術、麻酔のかかりやすさ、咳の反射の出やすさ、痰絡みの程度などの要因に左右されます。辛かったという人もいますが、中には鎮静薬の影響で処置中の事を覚えていない人もいます。

気管支鏡の後に注意しなくてはいけない合併症の一つに肺に穴が空いてしまう「気胸」というものがあります。

気管支鏡や手術によって生検を行った患者さんに対して、臨床診断、画像診断、病理診断をもとに総合診断を行います。

その際に、呼吸器内科医、放射線科医、病理診断医が議論をする事で診断に到達するMDD(multidisciplinary discussion, 多職種合議)と呼ばれる手法が使われる事が増えてきました。

このような手法をとるのは、一人の医師だけでは診断にバラツキがあると言われているためです。このようなプロセスを経ても確定診断がつかない場合は「暫定診断+診断確信度」という形で一旦の治療方向性を決めます。

MDDカンファレンスではそれぞれの医師が診断に関する見解が一致せず議論が白熱する事があります。このnoteではそのMDDカンファレンスの一例(シナリオは架空のものです)を紹介していますが、議論の進め方に決まったものはなく施設によっても異なります。

このように間質性肺炎の診断プロセスは通常の病気の診断と比べて特殊な性質がありますが、これは間質性肺炎の診断の難しさによるものであると考えられます。

そのため様々な検査をしても結局確定診断が得られないという事がありますが、大事なことは、まずきちんと診断を吟味する事、その上で完璧は求めすぎず、現在得られている情報を整理してそれを根拠に治療を前に進めていく事だと考えられます。


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