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間質性肺炎(19) 医師の診断をどう受け止めるか


この投稿は架空のシナリオに基づいて作成されています。内容は医療現場の一例をイメージしたものであり、実在する人物や事例に関連するものではありません。

主な登場人物
Dr.Y:
総合病院に勤務する呼吸器内科医。
研修医Z:Dr.Yと同じ総合病院に勤務する研修医。現在、呼吸器内科をローテートしている。


1. 専門家ごとに異なる視点

研修医Z: 先生、今日はお疲れ様でした!MDDカンファレンス、勉強になりました。

Dr.Y: お疲れ様。Z先生、ちゃんと議論についていけてた?

研修医Z: 正直、最初は必死でした。でも、色々な先生の発言を聞きながら少しずつ全体像が見えてきました。

Dr.Y:MDDカンファレンスに実際に出てみてどう思った?

研修医Z: はい。一番感じたのは、臨床医、放射線科医、病理医がそれぞれ全く違う考えを持っていて、ここから一つの診断を導き出すのは大変だなと。

Dr.Y: その通り。ただ、よく考えるとみんな見ている視点が全然異なるからね。臨床医は患者さんの訴えや背景を含めた全体像を把握し、放射線科医は間質性肺炎をCT画像で最も視覚的に捉え、病理医はミクロの視点から病態を推測する。それぞれ見ている世界が違うから意見が一致しなくても不思議ではないよ。

研修医Z: そうですよね。もし全部が常に一致するなら、わざわざこんな議論しなくても一つの視点だけで十分ですしね。むしろお互いに足りない部分を補完しているとも言えますね。

Dr.Y: そうだね。こうやって診断の手がかりを複数の視点から探っていけるというのは良い事だね。

2. MDDカンファレンスの課題とは

研修医Z: でも、このようなカンファレンスを全ての間質性肺炎の患者さんに対して行うわけではないと以前おっしゃっていましたね。それはどうしてですか?

Dr.Y: やはりマンパワーが必要だからね。必要度の高い患者さんから順にやっていかざるを得ないというのが現状だよ。

研修医Z: 必要度の高い患者さんとは、具体的には?

Dr.Y高度に進行した患者さんや進行の早い患者さん。病理検査を行った患者や病理検査を行うべきか迷っている患者さん。主治医が診断に確信を持てない患者さんなど。

Dr.Y: 逆にあまりに初期でそれほど目立った変化が見られない患者さんや、進行の遅い患者さんだったり、主治医が診断に確信を持っている場合などは、実施されないこともあるよ。

研修医Z:できるだけたくさんの患者さんに対してMDDカンファレンスをできると良いですね。

Dr.Y: そうだね。こういったマンパワーの問題は現在のMDDカンファレンスの課題の一つだよ。

研修医Z:なるほど。課題は他にも何かあるんですか?

Dr.Y:それは、MDDをもってしても診断の一貫性が十分に達成されていると言い難い点だね。議論に参加する医師の経験や考え方によって診断が変わることもあるし、議論の進め方そのものも施設によってばらつきがあるからね。だから、より統一した議論の枠組みや基準が必要だよ。

研修医Z:確かに。より正確な診断のための効果的なMDDの枠組みや基準が確立されることが望ましいですね。

Dr.Y:これには医師側の研鑽も必要で、日本呼吸器学会では、MDD講習会が徐々に開催されるようになり、より専門的な議論ができる医師の育成に力を入れているよ。

3. 医師の診断をどう受け止めるか

研修医Z:こうして見てくると、間質性肺炎の診断は特殊な性質を持っていますね。患者さんたちは、この診断の曖昧さをどのように受け止めればよいのでしょうか。確定診断がついた患者さんはある程度納得して治療方針を決めて進められますが、そうでない患者さんは不確かさに戸惑うこともあると思うんです。

Dr.Y:そうだね。様々な検査をしても結果が低確信度や疑いに留まる場合もあるから、そういう時は不安や物足りなさを感じてしまうよね。時には「原因不明」や「分類不能」と告げられることもあるかもしれない。

Dr.Y:病気に関わらず自分の所属が明確でないと不安になるのは人間の自然な心理反応だし、確定診断がない事が治療方針や予後予測の足かせになってしまうのも事実だから、やはり明確な診断がついている方が望ましい。でも、矛盾するようだけれど、そこにこだわりすぎないことも大切だと思うよ。

研修医Z:たとえ確定診断がついていなくても治療は進められるものなのですか?精査した意義があったと考えて良いのですか?

Dr.Y:そうだね。前に話した暫定診断という考え方につながるけれど、たとえ確定診断には至らなくても、可能性のある原因候補が分かればそれに対する治療反応を見る事がさらに診断の根拠につながる事になる。

Dr.Y:他にも「線維化より炎症が主体である」とか「活動性は低い」といった病態についての具体的な情報が得られれば、それだけでも治療薬の選択や治療のタイミングを考える上での材料になるので、やはり精査の意義はあるよ。

研修医Z:なるほど。色々精査した結果から診断が白黒はっきりしなくても、新たに得られた情報を前向きにとらえてとりあえず前進する方が良い場合もあるのかもしれませんね。



(注)この投稿は架空のシナリオに基づいて作成されています。内容は医療現場の一例をイメージしたものであり、実在する人物や事例に関連するものではありません。診断や治療については記載された情報を基に自己判断せず、必ず主治医に相談してください。


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