無職日記#5 2800円のアイドル
2024年8月28日。早朝。
彼女の住む街を離れて、鳥羽水族館を目指していた。
(前回の話はこちらから)
突然だが、私は水に浮かぶ生き物が好きだ。
鴨、ラッコ、アザラシ。
好きな理由は説明し難い部分もあるが、とにかく眺めているだけで満足する。癒される、に近いかも。
その中でもラッコが大好きだが、近年どんどん姿を消し、
ついに三重県鳥羽市の「鳥羽水族館」と、福岡市の「マリンワールド海の中道」の2つの合計3頭になってしまった。
過去に一度だけメイちゃんに会いに行ったことがあったが、その後は鳥羽水族館の立地も相まって、なかなか足を運べずにいたのだ。
しかし現在は無職なので、時間だけはある。
そういう訳で鳥羽水族館を目指した。
始発に無事に乗り込み出発。
昨晩は22時くらいには既に寝る支度は整っていて、余裕だ、と思っていたが全く眠れなかった。カプセルホテルで熟睡は難しい。
寝不足でかなり気持ちが悪かった。
しかし餌やりの時間に間に合わせるためには乗り続けなくてはいけない。
ありがたい事に電車は空いていて、鳥羽駅に着いた頃には車窓を楽しむほどにまで回復していた。
餌やりの時間にも無事間に合い、一直線にラッコの水槽を目指す。
いた。メイちゃんとキラちゃんだ。
夏休みということもあり、かなり賑わっていた。
前回と異なる点は子どもエリアができていたことくらい。
結局次の餌やりも見たくて、4時間立ち続けた。
そこまでしてずっと見続けた理由は、マイナスな部分もある。
きっともう水族館でラッコには会えない、という事実。
メイちゃんは20歳、キラちゃんは16歳。
人間にすればメイちゃんは80~90歳で、完全におばあちゃんだ。
海外では保護という名目でラッコを水族館で飼育しているところもある。
また、野生のラッコは北海道の沿岸で増えていると聞いた。
日本での仕組みづくりはまだまだ先は長いが、いずれはまた水族館で会える日が来るかもしれない。
ラッコに会える術はまだまだあるんだから、と言い聞かせながら鳥羽水族館を後にした。
〈追記〉
ちなみに鳥羽水族館はYouTubeで生配信もしてくれているので、興味がある方はぜひ。