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冬優子もふゆも、ぷろでゅーさーも。【[第15回俺達の少女A ふゆのばしょ]黛冬優子 True End】

 冬優子「だから言ったでしょ…『MOTHER2』とかいう26年前のレトロゲームを引っ張ってきて、しかもふゆのアピールタイムに使うとか、それこそ『時代遅れなプロデュース』だって」

 ryuto「わ、悪い、冬優子。でも、こうして『第15回俺達の少女A』に採用してもらえたんだから良いじゃないか。俺としても、初めての採用だったんだし」

 冬優子「それでいいと思ってるの!? 司会の人たち、完全においてけぼりだったじゃない! まったく、前回、綾瀬穂乃香の『クロネコチアー』のアピール目的に『ほのきゃっと』概念を勝手に作って、案の定不採用になった話を聞いといて良かったわよ! ほんとにあんたは、担当アイドルのアピールが下手なのよ、バカ!」

 ryuto「まあまあ。だけど、俺と冬優子が一番言いたかった『ふゆのばしょ』のことが伝わったみたいだし、そこは合格だろ」

 冬優子「だから、まず『ふゆのばしょ』そのものが伝わりにくいのよ! せめて、ポケモンの『ジムリーダー』とかにしときなさいよ。ジムリーダーを倒すことでバッジが得られる。バッジを8個集めることでチャンピオンに挑戦できる。チャンピオンに勝って、エンディング。すべての世代の人が知っているゲームなんだから、それが一番分かりやすいし」

 ryuto「でも、『ジムリーダー』を倒して得られるものって、ある程度のレベルのポケモンが言うことを聞いてくれたり、先に進むのに必要なひでんマシンが使えるようになるバッジだろ。『ふゆのばしょ』を奪い返すことで得られるものは、冬優子がこれまでに見た、聞いた、感じたものなんだ。それを全部そろえれば、ラスボスに挑戦できる。ラスボスに勝って、エンディング。結局『ふゆのばしょ』だって分かりやすいよ」

 冬優子「昔のふゆが、ねぇ…。思い出したくないのもあるんだけど 」

 ryuto「『ふゆのばしょ』に挑戦する順番は、『ジムリーダー』と違って冬優子が自由に選べるから、気が楽だと思うぞ」

 冬優子「だとしても、まさか1番目の『ふゆのばしょ』に、あんたが『おかえり』と言って、ふゆを泣かせた時の事務所を持ってくるとは思わなかったわ。今のふゆだったら、『ただいま』の代わりに、あんたへお説教してやるところよ」

 ryuto「あー…あの時は、本当にすまなかった。でも、冬優子が『もう一度アイドル、やりたい』と言った時、とっさに出たのは、『おかえり』だったんだ。確かにここは冬優子の家じゃないけれど、アイドルにとって、事務所は『いってらっしゃい』とか、『おかえり』とかを言ってもいい場所だと思うんだ」

 冬優子「そういえばあんた、346プロダクションで塩見周子っていうアイドルを担当していた時も、そんなやりとりをした、って言ってたわね。京都の家出娘が事務所から舞台へ行ったときも、舞台から事務所へ帰って来た時も、『いってらっしゃい』と『おかえり』は欠かさなかったって。…ほんと、いつからあんたは『パパ』になったのよ。これで調子に乗って、父親面されたらたまんないんだから。あと、お金もセーブも一応大事じゃない」

 ryuto「さすがに、冬優子の父親代わりにはなれないさ。だけど、『おかえり』と言うことが出来たから担当プロデューサーになれたんだ。咲耶や樹里など、283プロダクションに来てから気になるアイドルはいたが、担当アイドルは、これまでも、そしてこれからもずっと、黛冬優子、お前だけだ」

 冬優子「…その言葉、忘れるんじゃないわよ。ノクチルのメンバー、特に浅倉透や樋口円香が来た時、本当に焦ったんだから。ま、結局ふゆには足元にもおよばなかったけど」

 ryuto「ははは…そうだな。でも…担当プロデューサーになれた最大の理由は、一番最初に冬優子のプロフィールを見て『そんなわけはない、絶対に裏がある』って考えたからだと、今になって思ってる」

 冬優子「そんなふゆは、『猫を被ったふゆがばれたら、絶対にあんたに嫌われる』と思ったから、あのとき逃げたんだけどね」

 ryuto「だけど、俺は心の底から後悔した。冬優子を、信じることが出来なかったって。それでも冬優子は事務所に帰ってきてくれて、本当のことを話してくれた。だから、『おかえり』って、言うことが出来たんだ」

 冬優子「なーんか、周りくどいわね…せめてあんたが良く言っている『無かったことには してはいけない』じゃない? ま、この歌詞が使われた曲『Hacking to the gate』も、もう9年前なんだけど」

 ryuto「結局、冬優子もレトロなアニメが好きじゃないか」

 冬優子「アニメは何年たっても良いものは良いし、みんな覚えているものなのよ。覚えておきなさい、ばーか」

(場面変わって、事務所の玄関)

 ryuto「じゃあ、行ってくるよ。346プロダクションも、これから忙しくなりそうだ」

 冬優子「ああ、さっき話した、穂乃香の、総選挙に向けての打ち合わせね。…ふゆもそうだけど、穂乃香も、大事にしてあげなさい。アイドルになっても『くるみ割り人形』のままじゃ、可哀想だから」

 ryuto「わかってる。俺は、バレエダンサーの穂乃香をスカウトしたわけじゃない。綾瀬穂乃香という少女を、スカウトしたんだ」

 冬優子「いい加減、結果で示しなさいよ。勝てなきゃ、分からないこともあるんだから。それと…」

 ryuto「…?」

 冬優子(ふゆ)「283プロダクションに帰って来た時には、必ず『ただいま』って言ってくださいね♡ ふゆが『おかえり』って、言ってあげますから♪」

 ryuto「ああ…分かった。それじゃ、行ってきます」

 冬優子(ふゆ)「行ってらっしゃい♪」

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 ここまで読んでいただいたみなさん、ありがとうございました。みなさんが楽しめるものを、気軽に楽しめますように。

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