神奈川ニュース(#8 ニュース映画で現代社会を勉強しましょう)
神奈川ニュース
神奈川県では、社団法人神奈川ニュース映画協会という団体によって、昭和26(1951)年頃から、横浜、川崎、厚木などの県内諸地域の復興が記録されて行きました。同団体は、昭和25(1950)年に設立され、神奈川県や、横浜市、川崎市など、県内の公共団体の施策と事業をPRするニュース映画や記録映画、教育映画などを数多く製作しています。
しかし平成19(2007)年に役割を終え解散しました。正式な記録はありませんが、日本で最後に映画館で流されたニュース映画は、この神奈川ニュース映画協会のものだとされています。
神奈川ニュース映画協会は、昭和28(1953)年に、その時点までの神奈川ニュースの内容をまとめた小冊子「神奈川ニュース製作内容」を公表します。これ自体が既に貴重な史料となっていますが、そこから神奈川ニュースの実態がよくわかります。
それによれば、神奈川ニュースの企画は県の広報文書課で、県下の映画館100館で上映され、さらに公民館や県の巡回映画班(という組織があったようです)で各地で上映されたこと、毎月第一、第三水曜日の正午と午後7時から、NHKで放送されたことなどがわかります。またナレーションは、NHKのアナウンサーに依頼していていたとのことです。
政策ニュース映画は、行政映画ですので、オープニングのシーンは、自治体の記章や庁舎の映像から始まるものが多くあります。神奈川ニュース映画も、神奈川県本庁舎の映像がオープニングのバックに映ります。この庁舎は、関東大震災で焼失した旧県庁舎を再建したもので、昭和3(1928)年に完成しています。塔屋は、「横浜三塔」のうちの「キングの塔」として親しまれており、歴史的建造物として、平成8(1996)年に登録有形文化財(建造物)に登録されました。
「神奈川ニュース映画製作」の中に、上映館のリストがあります。そこには、昭和28年の時点での、神奈川県下の映画館100館が挙げられています。フィルムは17本プリントされ、それらが5週間に渡ってフルにこれら映画館で上映されたということがわかります。
例えば9号は、第1週上映館が、野毛劇場から横浜ニュースに移っています。横浜の野毛地区には、多くの映画館がありましたが、そこにも横浜ニュースと言うニュース映画専門館がありました。殆どが今は存在しない映画館で、施設の名前が公募されたというマックアーサー劇場や、郊外にあった真鶴劇場、山北劇場など、県下の様々な地域に映画館があったということがわかります。
この時代、映画は重要なマスメディアだったことが伺えます。
神奈川ニュースは、図の目録に示すように、4,5本がまとまって、1回に上映されました。他の地域のも、ほぼ同じような構成です。神奈川ニュースの第1号は昭和25(1950)年2月7日に公開された以下の4編です。ちなみに、この4本は、今は少なくともネット上では観ることはできません。
1.供米完遂へ(戸塚)
2.失業対策の道路工事(菊名)
3.古墳発掘(保土ヶ谷)
4.第一回県営競馬開始(川崎)
このように、神奈川ニュースは、主に県内の行政記録を映画化したもので、解散時には多くの製作した映画を、各地域に移管しました。
川崎市の委託による分は、「川崎市民ミュージアム」がデジタル化等を行い、権利処理等も終えて、現在は川崎市市民文化局が管理を行っています。横浜市委託分は「横浜都市発展記念館」が保存管理を行っています。但し、同館には閲覧設備がないため、実質的には限られたものしか観ることができません。他にも、鎌倉、真鶴、戸塚、厚木など県下全域に渡りますが、それらの所在は、現状ではよくわかりません。県下の図書館にもフィルムがありますが、一般に見ることはできません。
ここまで長期にわたって多くが作成された政策ニュース映画が、全く継承されずに消えていくのは、いかにももったいない話です。オンラインの教育コンテンツとして、現代に繋がる社会がまさに生まれる瞬間の映像として、活用して行ければと考えています。