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「会いに行ける過疎」と関係人口

関係を持つ切っ掛けとは?

地方創生政策の流れの中で、関係人口というキーワードに注目が集まっている。

「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です。
地方圏は、人口減少・高齢化により、地域づくりの担い手不足という課題に直面していますが、地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めており、「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待されています。

穿った見方なのかもしれないが、関係人口とは、過疎って人手が足りなくなった地域に、外から人手を集めよう、おそらく元はそういった発想だったように思える。定住人口は正社員、交流人口は来店客、さしずめ関係人口はパートタイムかバイトみたいな存在だろうか。
趣旨はともかく、住むか観光に行くかの2択しかないという発想から一歩進んで、そのどちらでもない存在を定義づけようとした点は、個人的には素晴らしいと思っている。

5年も前に、研究室の学生6名と、四国のある地域にインターン名目で足を踏み入れたことがあった。とにかく現地の人たちは大歓迎してくれたが、学生達にいつ嫁に来るのか?としか言わなかったのをまだ記憶している。その時にある学生が、どんなにイケメンでも知り合ったばかりでいきなり結婚はしないよね、と呟いていたが、まさにその通り。地域とは、もっといろんな形の付き合い方があるんじゃないのか、ずっとそう思っていた。

第2次安倍改造内閣で設置された「まち・ひと・しごと創生本部」が、関係人口の創出・拡大に関しても力を入れている。2020年6月には、「中間支援組織の提案型モデル事業」として、「特定の地域に継続的に多様な形で関わる関係⼈⼝の創出・拡⼤」事業を公募していた。

先日、その選考結果の発表があった。実は、ある企業との連携で、今推進している事業を提案していたが、残念ながら採択されなかった。
元々、公募や助成金などには、比較的積極的にアテンドするようにしている。知的刺激であったり、新しい問題を考える重要な機会ではあるのだが、何より書面に纏めて見ることで、様々なことが見えてくる効果が大きい。
特に地方創生や地域づくりに関しては、本来高い関心があったわけでも、専門としているわけでもないため、自分の関心や方向性などを棚卸するには、こうした機会は有効だと思っている。

関係人口づくりに関しては、どこでどうやって事業を行うかがもちろん重要なのではあるが、それよりももっと重要なことがある。実はその点が知りたくて、採択結果を楽しみにしていた。

あえて、地方創生系の事業に関わっている人々に問いかけたい。
どうやってその町と繋がるんですか? そもそも関係を持つ切っ掛けは何なんですか?

2020年の7月の時点で、日本の基礎自治体数は1,724ほどある。そしてどの町も、等しく地域資源と地域課題を持っている、要するに、1,724人のイケメンがいてどれも条件は同じ、じゃ誰と付き合う?関係人口の創出とは、要するにそういうことだろう。
恐らく、その町に縁を持った人は、その町が好きになり、関係人口となって行くはずだ。それはどの町でも、ほぼ同じだと思う。つまりその町でなければいけない訳ではなく、関係を持つ機会があったから、関係人口になったとしか言えないのだ
多分反論や異議はたくさんあるだろう。しかし、都市部の学生達を見る限り、そうとしか思えない。どの町も、地方創生のもと、大いに努力しており、魅力的なのは否定しない。だから猶更、どの町でも、誰でも関係人口に成り得るのだ。

我が町は、どこにも負けないほど、人が温かい、魚が新鮮だ、サーフィンができる、星空が綺麗だ、祭りが賑やかだ、等々…。言いたいことは本当に分かるし、地域の人々の努力も、本当によくわかる。でもあえて問いかける、それはそこだけでしかないものなのか、それで人の人生を動かせるのか?。

酒田市の移住推進映像のうちの一つだが、本当によくできていると思う。生前は、殆ど田舎について語らなかった、酒田生まれの母が見たらどう思うだろう。
食べ物がおいしい、人が優しい、都会よりも時間の流れが自然、四季が綺麗、自分の時間を持てるようになる、山も川も海もある。
確かに、母の遺品を持って足を踏み入れた酒田は、本当にそういう場所だった。別にこの映像も酒田も否定するわけではないのだが…。

結局日本の田舎は、どこも素晴らしいのである。例えば、高度成長期に家督を相続できない、農家の次男、三男が故郷を捨て都会に出てきていたとしても、例えば、この後で述べる地方創生を扱った映画「波乗りオフィスへようこそ」の主人公が、新たな産業を地元にもたらそうとしてるにもかかわらず、「とっとと東京へいね!」と言われたり、住民票を移さなければ信用されなかったとしても、日本の田舎はどこもずっと田舎であり続けている。それは昭和20年代からずっと変わらない田舎の姿なのだ。

だからこの移住を決めた人たちが、なぜその土地でなければならなかったのか、そもそもなぜその場所に行くことになったのか、今関係人口に関する議論で抜け落ちてるのはそこじゃないかと思う。
要するに、関係人口の創出は、どうやって関係を持つ機会を作るか、偏にそこに掛かっている。1,724の自治体を全て見て決める人などいないだろう。そこまで人生は長くない。
事業案では、まずそこを見たかった。もちろんこちらの提案も、そこにフォーカスを当てたつもりである。

中央が考える関係人口の創出

この公募では、最終的に応募が71件で、採択団体は7件となっており、かなり狭き門ではあるが、このテーマに71件の応募があったことに、少なからず驚いている。こんなにも多くの団体が、地方創生や関係人口関係で活動しているということは、やはりブームになって来ていると言えるのだろう。2020年の7月の時点で、日本の基礎自治体数は1,724なので、各地域には相当数の人たちが活動していると推定できる。

実は採択結果を見て、正直言えば、今の地方創生政策や国が考える関係人口というものについて、結構見えてくる部分がある。

採択の対象となっている自治体は25、広域自治体は16道県、最も多い地域は新潟県と島根県で4自治体、宮城県、北海道、山口県が各2自治体で、首都圏からの距離で言えば、最近地域が千葉県銚子市で約90キロ弱、山梨県丹波山村が80キロ強で、うち丹波山村は過疎地指定されている。

その他は、日本海側が12地域、北海道2地域、九州2地域、四国2地域、東北3地域となっている。さらに、事業内容だが、地域課題の可視化手・マッチング手法の開発・モデル化、関係人口の入口づくりのモデル化、都市部住民の生き方の探求活動のモデル化、「リカレント教育」の場作り、地域の未利用資源(空き家等)人材の活用、そして「地域マネージャー」の育成などである。

率直に言って、これでは自分らの提案は採択はされないなと痛感している。

まず、地方創生事業には、「わかりやすい田舎」が必要なのだろう。地方創生とは、あくまでも中央から、地方へ向けた政策であって、中央=都市部対地方=田舎という対立関係の中での政策であるという側面は否定できない。
住民か観光客かという2項対立的に、地方に関わる人間を捉えていたのに対して、関係人口と言う中間領域を設けたのではあるが、日本の国土自体を、田舎と都市で分けている。ここでいう都市とは転入超過の広域自治体を意味していると思っていいだろう。
2019年のデータでは、転入超過は東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、福岡県、滋賀県及び沖縄県の8都府県だが、中でも神奈川、埼玉、千葉、そして東京の首都圏が完全に突出しているので、都市=東京圏と言っていいだろう。要するに、東京対田舎という構造で、その田舎性的な側面が見える地域がまず創生政策の対象になる。

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であるがゆえに、どの地域も「田舎」としての特性を十分に備えているから、その地域の資源も課題も、そして施策も、どこか共通化してくる、要するにコモデティ化をしてきてしまうと言えるだろう。

「都市型限界集落」と呼ばれる地域がある。自治体が政策的に独居老人を集めた新宿区戸山団地や、元々の産業の消滅と住民の高齢化が起こった大田区糀谷地区、さらに高度成長期に多くの労働者が集まったいわゆるドヤ街が高齢化した山谷など、都市部、首都圏とは言え、決して均質ではなく、過疎化、限界化している地域も存在する。

そうした都市地域は、地方の限界集落に比べて、自然環境が全く存在しないため、生態系サービスと呼ばれる環境資源を使うことが出来ず、1次産業が成立する余地はない。地方の限界集落は、我々のリサーチでは、林業を中心とした「山仕事」の地域が、産業の衰退によって役割を失った地域が多いが、地域の自然環境を用いた農業によって、生き残った地域が、限界化したケースが多い。要するに、生存能力の高い地域である。それらと比較すると、都市型限界集落は、生存能力のない、文字通り消滅を待つだけの場所としか見えないのである。

地方創生政策の最終的な目的は、東京一極集中の傾向を是正し、地方の人口減少に歯止めをかることにあるとされている。そのために、地方に移住者を集めたり、注目を集めることなどが試行錯誤されていると理解している。
しかし実際に限界集落に足を踏み入れてみればわかるが、その場所で暮らすことの強いモチベーションや意味がないと無理だろう。産業構造が転換してしまった現在では、誰もが暮らせる場所では無くなってきている。ゆえに、その場所が、多くの人間を集めるようには、決してならないだろう。
たまたま現在まで生き残っただけであって、場合によっては、昭和のいつかに廃村になったかもしれないし、実際にそういった集落の方が、限界化した集落よりはるかに多いだろう。
つまり、今地方の課題だと言われている、高齢化や東京への集中による若年人口の減少は、その地方の課題ではなく、中央が戦後行ってきた政策の結果であって、その地域だけの問題ではない。産業構造の話だから。

皆が、過疎や限界化を心配しているが、大胆に言えば、実は田舎は大丈夫なのだ。自然環境に根差した1次産業がある限り、生きては行ける。そして田舎はコモデティ化しているから、どこかで成功すれば、それは他でも成功するのである。

前にも述べたが、地方創生に纏わる「波乗りオフィスへようこそ」という映画がある。たまたま監督が知り合いだったため企画撮影に協力したのだが、その中にこういうセリフがある。

我々には多くの学びや気づきがある。それらを地域活性化の処方箋にして、我々のこの手で確立したい。

いみじくもこのセリフが示しているように、ある地域で有効な手法は、恐らくどこでも有効なのだろう。採択された事業が、今一つ新規性を感じないのは、その点にあるのではないだろうか。

そもそも創生しなければならない場所

本当の地域に纏わる課題は、今は、もっと別の場所にあると思っている。
ある自治体の公式チャンネルにある動画だが、どう見ても地方都市の地域PRである。1次産業の漁業や農業、地場産業の石材、さらにコミュニティづくりや町おこし関係の人々、移住者、地域に根差したお店など、その地域の魅力を伝える映像で、地名を挙げなければ、豊かな自然に囲まれた田舎そのものである。酒田市のものと対比できるような内容であるし、とても美しい映像である。

神奈川県足柄下郡真鶴町、東京から直線距離で80キロメートル強、JRで一時間半ほどの距離にある。ちなみに、「まなづるまち」と発音する。「まなづるちょう」と発音しがちだが、関東圏にある基礎自治体で「ちょう」と発音する町は存在しないそうだ。
神奈川県は、人口の流入超過県であり、地方創生政策から見れば、「是正」をしなければいけない地域である。しかしこの神奈川県の西のはずれにあるこの町は、どう見ても地方の佇まいであり、実は神奈川県唯一の過疎指定地域でもある。にもかかわらず、東京方面への通勤圏でもあり、都市部の一部なのだ。

田舎ではない、でも都会でもない場所、地方から見れば都市に見えるが、都市から見れば地方にしか見えない、こうした場所が、我々にはとても気になる。
国土交通省が公開している、東京からの距離を示す図がある。

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実はこうした直線距離で地域を把握するのは、あまり現実的ではない部分がある。我々生活者の距離感覚は、公共交通機関、特に鉄道によって形成されている。例えば、千葉県方面は、意外なほど東京からの直線距離は近いが、鉄道は東京湾を回って行くため、若干時間が掛かる。
真鶴町は、80キロ圏にあるが、それは都市部への通勤などが辛うじて可能な地域を意味している。これら、80キロ圏内の地域は、現在は近郊農業や観光などの地域であるが、元々は都市生活者のための居住地域としても開発されたという側面を持っている。「ニュータウン」と呼ばれる、昭和30年代後半から40年代以降頃まで開発された、いわゆるベッドタウンなども、多くがその地域にある。つまり、「田舎でもなく都会でもない」という特徴がある地域である。そのため、地方創生政策では、直接対象になることはまずない。

その中には、小規模の自治体が各地に点在しているが、その内のいくつかが過疎指定を受けている。真鶴町もそうだし、他にも茨城県利根町(1.655万)、埼玉県小鹿野町(1.199万)、東秩父村(2903)、千葉県長南町(8774)、東庄町(1.485万)など、過疎指定地がある。
過疎や人口減少などは、決して遠い田舎だけの問題ではない。

さらに平成22年に公表された総務省の「平成の合併概要」などにも示されているが、総務省の自治体合併の構想地域は、「人口1万人未満を目安とする小規模な自治体」となっている。もし令和の大合併が行われるとするならば、吸収されてしまうかもしれない。
端的に言って、東京から距離80キロ程度、100キロ圏内、それは電車、バス等の公共交通機関で1時間半程度、都市部への通勤が辛うじて可能であり、基礎自治体の人口規模として、1万人程度の地域は、危機を孕んでいるにもかかわらず、地方創生政策から抜け落ちているとしか思えないのである。

これらの地域を、我々は「近郊都市」と総称している。近郊都市は、大きく2つの特徴を持っている。

①表立って注目されていない
ここまで述べてきたように、地方創生政策により、地方の過疎地や限界集落等に注目が集まりつつある。しかしこの近郊都市に関しては、「わかりやすい田舎」ではないため、余りフォーカスが当たることがなく、実態が余り知られていない。しかし、それらの近郊都市でも過疎指定を受ける地域も出てきているのは述べた通りである。過疎と言えば、田舎というイメージが強いのは否定できないだろう。
②都市部との関係性が強い
近郊都市は、1次産業の他に固有の産業を持つなど、複合的な経済圏であり、近郊農業を中心に、都市への産物、製品の供給や、都市圏勤務者の居住地域として開発されたなどの特徴を持つなど、都市部にとっても非常に関係性の深い地域である。そのため、近郊都市の抱える課題は、都市圏にとっては、無視することができない社会課題であると言えよう。
例えば徳島県の中山間部、人口24人の集落の動静よりは、80キロにある1万人の町の事柄の方が、遥かに都市部の人間にとってインパクトがあるのは否定できない。もちろんどちらも、住民にとって掛け替えのない場であることは間違いないが。

各地域とも知名度が低いということに加えて、地方創生からは外れており、「田舎」を訴求要素とすることがしにくく、各自治体とも共通する問題意識として、地域プロモーションに苦慮しているという状況にある。

今や、近郊都市をどげんかせんといかん、のである。

どうやって、どういう関係を持つのか?

採択事業でもわかるが、地方創生の中では、何よりまず「わかりやすい田舎」が必要であって、さらにその田舎に対する「わかりやすい」活動が必要なのである。そうした制約の中で、独自性を出すことは難しくはないだろうか。
以降は、ボツになった事業の提案書を公開していく。採択されなかったが、やることは変わらないし、この方向でしか、新しく関係人口は作れないと信じている。都市部の大学生を関係人口化していくための試みである。

【社会連携型学習の有効性】
「関係人口」の創出においては、先行する既存の試みは、その地域の出身者や関係者が中心となった、何らかの地縁に基づくものが多い。そのため、特に都市部で何世代か暮らしている大学生層にとって、新たな地域と関係性を築くことは、実質的には困難である。例えば観光を切っ掛けとして、ある地域に関心を持ったとしても、一過性のものにしか過ぎす、流動人口から関係人口への移行には、多くのバリアがある。関係人口の創出は、そこが一番のポイントだと考えている。

都市圏の大学生層に関して言えば、地方創生以前に、地方の現状そのものに関する理解に乏しい。日本の地方に関しては、戦後の高度成長期に始まった、都市部の復興と成長に併せた人口移動が、最終的には、地方と都市部の人口のアンバランスに繋がって来ている。しかし、大学生層は、日本の地方が抱えている本質的な課題が理解できていない。そのため、地方からの関係人口創出の策は、こと大学生層に関して言えば、各地域の実態を深く理解することが出来ず、実効性が見られないと言えるだろう。

本提案は、当該地域を学習の素材とすることで、学びによる関係性を構築し、大学生層を関係人口化することを骨子とする。都市部に居住する大学生層に対して、特定地域を学びの課題としたプロジェクト学習手法を実施する。学習者による地域理解を目的とするため、課題としては、地域のコンテンツ作りを通した地域PRを内容とする。
課題学習の過程で、地域の概況調査から地史など幅広くリサーチし、現地調査などを行って深く地域を理解するとともに、成果を目指していく。これによって、学習者自身を関係人口化して行くことを狙うと共に、学習者が地域のアンバサダーとして、幅広い学生層と地域を繋いでいくことを目論むものである。

大学における演習科目で、B2B系企業やNPO、地方自治体などを題材にした、プロジェクト形式の授業(PBL)に関する多くの経験を持った。詳細は以下にあるが、そこで得た知見として、社会連携型の学びでは、学習行為自体が、対象の理解を深め、関係性を強化する。最終的には、学習者のエンゲージメントを獲得する結果となることが多い。実際に、こうした社会連携型PBLの結果として、学びの対象となった企業に就職したり、あるいは地域おこし系の事業を起業した学生の例なども、数多くある。

学びは、関係人口づくりの最も有効な手段である。何を、どう学ぶかという問題はあるが、まずはそこを強調する。

【近郊都市の新しい価値】
本事業の対象となる近郊都市は、地方とは異なり、首都圏に対する固有の存在意義を有していると考えている。元々近郊都市は、昭和4,50年代に、都市部在勤者のベッドタウンとして、開発されたという経緯を持つ地域が多い。
昨今では、都市部での人口集中に纏わる様々な病理現象や弊害などが指摘されることが多いが、本提案においては、こうしたかつての都市在勤者のためのベッドタウンが、新たな付加価値を持つ可能性に着目している。

20世紀後半から、職場と家庭以外の新たな居場所として、3rdプレースの意義が議論されるようになってきた。カフェやコワーキングスペースなど、都市住民の新たなライフスタイルの提案とともに、こうした新たな居場所を設けることで、都市生活の閉塞感を補おうとする動きである。特に2020年初頭からの感染症の影響により、都市生活者の生活、行動パターンを見直さざるを得なくなった。
そのため、ある程度都市圏と物理的な距離感を持った、近郊都市に新たな居場所を設定するという、3rdプレースとしての存在意義を、関係人口確保のための訴求要素として展開することを想定している。

特に本事業では、元来通勤が可能な近郊都市を対象とするために、学習者にも大きな負担を掛けることなく、現地への実地調査などは可能である。都市部から、日常の中で過疎の町に行くことになる。それは都市在住の学生にとっての新たな3rdプレースを作ることであり、そのために田舎でも都会でもないこれらの町の特性が新たな価値を持つようになる。
それは「会いに行ける過疎」なのである。

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一般に、地域からの情報発信は、祭りなどの「ハレ」が中心であり、そうした観点からは、流動人口にしかなり得ない。その地域の人々がどのように暮らし、どの様なものを食べ、日々何をしているのか、そうした地域の日常「ケ」を知ることは、最終的にはその地域の文化や経済などを深く理解することに繋がっていく

この学びを通して、地域交流を体験し、今後の地域交流を深める切っ掛けをつくることを目指すものである。さらに住民と学習者が連携することで、外部から見たその地域のコアコンピタンスなどが明らかになり、自治体側が地域PRにも用いると共に、住民のシビックプライドを熟成するという副次的効果もあると考えている。

と、こんな感じの提案をしたのだが、意余って言葉足らず、といったところで、採択されなかったのだろう。でも、誰もがわかるようなことをやっても価値はないと信じている。
近郊にある自治体の方々、一緒に学びを通して大学生の関係人口を創出してみませんか?


トップ画像は、近郊都市の一つ、茨城県利根町の夕刻、利根川河畔の景色である。町の職員、藤波勝氏に撮って頂いた。ほんの数十分だけの、魔法のような空間だった。こんなに繊細な夕日が、東京から1時間ほどの場所にあるということに、今更ながらに驚く。この国は、どの町も本当に魅力的なのだ。


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