兄の命日に残しておきたいnote
あの日、私はスウェーデンへ発つ予定だった。出発を楽しみにして寝ついた夜。ただ、今でも覚えているのが夜中に悪夢を見て飛び起きたこと。
早朝4時過ぎ電話が鳴った。
「警察ですが、富田宏さんのお宅ですか?」
「はい。」
「事故に遭われました。早急に警察署まで来てください。」
どういう容体かという問いには答えずただ早急に警察に来てくれと言う。両親を起こして、とりあえず事情がわからないため、父だけ警察に行くことになった。
その後父から電話があり、兄が交通事故で即死したと言う。
母を含めただ唖然。母と一緒に警察署に向かった。
先に行っていた父は、母と私に、事故でおそらく酷い状態になった兄を見ない方が良いと言った。母も私も見る勇気がなかった。その後見ることができたのはお通夜の時だった。
暫くして、私は旅行社へ事情を説明してスウェーデン行きのキャンセルをした。
兄が亡くなる数日前、久しぶりに兄が実家を訪れた。不動産会社に勤めていた兄は、近く独立すると言う。そして、実家を取り壊して3階建ての家を建てて、一階を事務所にして両親と一緒に住むのだと将来を語ってくれたのだった。
母も私も喜んで兄と過ごした最後の夜。
あれからもう数十年経ったけれど、私が覚えている兄は、あの時から変わらない。私は随分兄の歳を越してしまった。