Clubhouse分析メモ
ひさびさに衝撃を受けたサービスなので、感じたことをメモとして残しておかねばなるまいと思い、なぐり書きをした。
ほとんど直観的な分析で裏取り不十分な部分もあると思うので、指摘など歓迎したい。
teleful(自社でクローンとして作ってリリースしたが伸びなかったサービス)から得た知見も含む。
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追記:2021/6/8
ピークが過ぎてしばらく経って思ったことの追記。
・想定ほど短期では伸びなかった(ごめんなさい)。初期の加熱感は消え、KOLも相性のいい一部の人しかおらず、ユーザー側としてもコンテンツを求めにくるには中身が薄すぎる。一方、個人的に使い続けているのはこのプロダクト特有のソーシャルグラフを得られたからで、ゆるく(気分次第で)集まれる価値というのは未だに強く感じている。
・獲得と定着は完全に別物で、定着を指数関数的に伸ばすにはより「自然」なバイラルが必要であり、それはやはり獲得よりも時間がかかる。オーガニックのバイラル/ペイドにかかわらず、獲得と定着の独立性を改めて感じた。また、思った以上にピークからのユーザー数減少速度を速く感じた。
・消えたように見えつつも現状でも世界でおおよそDAU200万/MAU1000万+が存在し、例えばイメージ的にはzenlyなどの半分くらい。直近もインドで大流行していた。一方、客観的に見て現状存在する巨大サービスの創業期ほどのアクティブユーザー成長率はなく、あくまで獲得の過熱感にとどまっている。
・まだ答えは得られていないが、アクティブ1億クラスまでは到達するとしてもかなりの長い時間か、あるいは何かしらの非連続的な変化が必要に見える。一方でプロダクトやファウンダーへのリスペクトは全く変わらず、何かやってくれる(その方が当然面白い)と思っているし、他にも面白いプロダクトは日々生まれている。自分もユーザーと向き合うことは忘れずに淡々と手を動かしたいと思っている。
以下は元記事まま。
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オープンとクローズドのバランス
オープン=コンテンツより(youtube的)=結果的に多くの滞在時間はインフルエンサーやキラーコンテンツへと収斂する
クローズド=コミュニケーションより(メッセンジャー/line的)=多くの滞在時間はごくパーソナルな距離の近い繋がりだけで消費される
どちらかに寄り過ぎると既存にあるプロダクトに近く、場としての独自価値が落ちてしまう。ゆえにギリギリを攻めねばならない。
文章中心ながら、twitterはこのバランスに優れていると感じる。基本の発想はオープンで、コンテンツの探索可能性に優れ、新しい関係構築などがしやすい設計でありつつ、クローズドなコミュニケーションにも持ち込める。
ゆえに「音声版twitter」は絶妙な表現。
それを実現するための引き算のデザイン
引き算
・コメントできない(音声のみ)
リスナー→スピーカーへのコンバート率上昇への大きく貢献している。(これはプロダクトのバイラルに非常に効果的)
言いたいことを言えないストレスを上手く利用したもの。
壇上ではないところから攻撃されないという、心理的な安全性にも寄与。
・保存されない(完全ライブ・FOMO)
FOMO的な中毒性を冗長している。
気軽さや軽率さを高める意味でも役に立っている。
・原則2人までしか招待できない
ユーザーは招待の価値を重く考える。
心理学的に労力を割いたものは高く評価する。
・iOSのみ
清々しいアーリーアダプターフォーカス。
足し算
・外部のソーシャルグラフの取り込み(twitter連携などがかなりスムーズ)
・プッシュ通知は盛り盛り
・音声周りの低遅延性、多人数性、安定性の異常に高いクオリティ
webRTC/SFU/自前/SDKなど色々疑問はあるが、とにかく質が高い。
技術的調査・研究はきちんとできていないが、多人数の部屋でもスピーカーとオーディエンスの遷移が低遅延にできるのは(オーディオ関連の技術のみならず、アプリケーション内の状態の取り回しにおいても)かなり卓越している。
・フィードの作り込みとイベント制(upcoming)
フィードの並び、イベントの部分の作り込みがよくできている。
見た範囲では、「入っていた部屋→権威性が高い人&近い距離の人のスコア計算→言語や関心的に近い部屋→プロダクト全体で勢いのある部屋」のような感じ。イベント制もシェアしやすい優れた設計。
・DM制
クローズドへの遷移としてDMが用意されているのは、基本的にうまく「欲求」を刺激する仕組み。個人的にはまだ使えていないが。。。
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人間の注意力や心理をうまくついて、できないこと(相対的希少性)を利用して使い方を規定して、コアの価値をとにかく磨き込むというところを地でいっている。
「すべてができる=なにもできない」
特にtoCよりで自由度が高いプロダクトほど、限られた注意力をどこに向け(させ)るかの取捨選択が肝要。
それらでマジックモーメントを作っている。
バイラルのキーファクター3つ
主に3ポイント思い当たる。
・機能的な部分
ここは、ある程度プロダクトづくりに慣れている会社であればどこでも似たようなことは考えると思う。主にオンボーディングや招待導線などの作り込みのこと。
clubhouseが一歩先を行っている部分はイベント予約のような発想だろうが、とはいえ機能的なレベルで真似するのは困難でないし、ここだけが重要なわけではない
・まずスケールしないサイズで極限まで熱量を高める
いわゆる、「ユーザーの声を聴け」「スケールしないことをやれ」というような、ファウンダーが直接愚直に初期のコミュニティ形成(直接のオンボーディング、ユーザーインタビュー、運営がライブを行う・支援するなど)を、しかもクローズドで行い、FOMOを高めて焦らしてからそれを一気に広げるというアプローチ。
原則リアルタイムなので、いわゆる鶏卵問題的に、「常時(誰にとっても)魅力的な部屋がある状態」まで到達するのも一筋縄ではないが、それをやりきった上でスケールに移っている。
SFスタートアップ文化(YCなどに代表される)的には極めて教科書通りのやり方が功を奏したと感じた。
・文化の最上流
SF(技術的にも起業文化的にも最前線で、セレブリティ文化的にもトップの米国内で距離が近く優位性がある)から「下りてきている」という感覚。「a16zがベータ時点で12億のラウンド」の世界的な話題性は、他の国やVCではなかなか作れない。
特に後者2つの優位性は一朝一夕に真似できるものではない。
過大評価なのか?消え去るのか?
個人的には明確にNOと思う。
少なくともアクティブ1億クラスのサービスに育っていく(これまでの村の流行りとはレベルが違うと思う)
a16zレベルのtoptierがシリーズBでお代わりしているというのも、それなりの説得力がある(日本のポッと出が考えるような論点はすべて議論済みで、その上でどう意思決定するかというレベル感)そう考えると100億程度の評価額は結果的には安い。
「スタートアップ界隈のおじさんしか使ってない」「ハイソすぎる」は、clubhouseのフィードに騙されていて、日本ではまだコミュニティが小さいだけ&すでにフィードはそれなりのパーソナライズが効いている。(英語で検索すると、なんだこの与太話、みたいなのも大量に出てくる)
世界の様々なコミュニティで(流行りはじめて2,3ヶ月程度で)局所的に大きなバイラルが起こっているというのは、確率的には、「再現性が高い」「まだ流行ってないところは"偶然に"まだなだけで時間の問題である」と思う。
これは外部ツールなど客観的なデータを見ても、世界に知られるメガサービスの全世界ダウンロード数が0.5~2M/day(DAU1億人~クラスのサービス)に対し、現時点で0.1M/day程度のライン(平均的には大体DAU1000万~)まで到達していて、その内訳が特定の国に寄っておらず、さらにダウンロード数成長率もまだ陰りがないのは十分すぎるくらい結果をきちんと出していると思う。
過熱感は劇薬なのか?
コミュニティ形成における過熱感は劇薬で、FOMOを煽りすぎて、バイラルから滞在時間ガンガン追求していくのは長期性がないという意見もある。
(ついでにvaluationの過熱感への指摘もある)
これもそもそも怪しい論調だと思う。単に、一時の流行りではなく長期的な流行りを構築するほうが難しい、というだけのバイアスを感じる。当然、確率的には「失敗する」「過熱しすぎ」と言っておけば当たりやすい。
例えば、youtubeを2~4時間/day使う生活が日常化している人たちは過熱しすぎで摩耗していくのだろうか。そうではなく、サービスの相対的な寿命の話でしかない。
加えて、あれだけのプロダクトを作れるファウンダーや投資家がそんな程度を考えてないはずもない。so what感が強い。
参考キーワード
・ブリッツスケーリング
・ポールグレアム(YC系ドキュメント)
・houseparty/TTYL
2,3ヶ月で答え合わせが進むと思っている。
(的外れだったらぜひ笑いものにしてほしい)
悔しいながら、部分的にすら勝てるポイントは見つからなかった。白旗撤退、逆にこの新しい文化の成功を祈り、自社での他事業に邁進するつもりである。
気ままに発信していこうと思っているので、clubhouseで見かけたらぜひフォローください。
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