フライブルグの齋藤さんのツイッターでは、海外文献のダイジェストが定期的に紹介されていて大変助かっています。情報にあふれる現代だからこそ、キュレーター的存在は本当にありがたいです。
先日紹介されていたこの論文に注目しました。
アイルランドの研究ですが、プロと初心者の選木(伐る木と残す木を選ぶ作業)の比較から言えることは、特定の方法に精通した熟練者(expert)ほどその経験から離れられない傾向があって、このことはモノカルチャーな林業から複雑な構造の森づくりに移行する上で重要な課題である、というものです。
そして、最終的にこう結論づけています。
これは、恒続林のような混交林や多段林が林業でできるのかどうかという狭い議論で終始すべきではないとも考えます。
つまり、時代が変わって価値観が変わり、ニーズが変わってマーケットが変われば新しいシステムが必要になる。新しいシステムには(初心者・熟練者問わず)新しい教育が必要…という、人材育成の根本に関わる課題のようです。
ただ、これに類することは日本でもだいぶ前から言われていることで、例えば60年前の業界紙ではこのような記述があります。
やりがちなのは、経験者はダメで初心者に最初から教えたほうが早いという二元論で、私自身も以前にこの罠に嵌ってしまったことがありました。そうではなく、両方の強みを生かすという考えにどのようにシフトできるか。
私も林業の学校で森づくりの授業を担当させていただいているので、より身を引き締めなければと考えさせられた研究でした。
現場を軽んずるのは問題外ですが、理論(を言う人)を軽視するというのも実際に起こりがちです。最後にこの言葉を自分自身への戒めとして。