"専門家"の落とし穴
ある山林の管理担当者は、山林経営の収支を改善するために専門家にコンサルティングを依頼しようと考えました。
候補となったのはA社とB社。どちらも親身になって相談に乗ってくれます。A社は森づくりを一から問い直したほうが良いのではと言い、B社は我が社の得意なデジタル技術をぜひ採用してくださいと提案してきました。
管理担当者は自分たちの経営には根本的な対策が必要だと感じていたので、A社に依頼をしたかったのですが、上司にB社に依頼するように指示され、その山林は業務のデジタル化を推し進めることになりました。
このおはなしは、最近身近にあった事実にもとづくフィクションですが…
さて、この山林の担当者、あるいは会社はこの先うまく行くのでしょうか?というお題。ここまで書くとA社を選んだほうが正しいと言いたいのかと思われるかもしれませんが、実はそうではありません。
最先端技術を駆使すれば成果が出やすいように感じるので、それに飛びつくのは理解できます。しかし、その技術(またはインフラ)が高価で高度であればあるほどそれを使用することに拘りがちになります。すなわち、手段の目的化が起きやすい。
では、長期目線で物事を見ていれば良いかというと、現実はそう甘くはありません。森づくりは長い月日がかかるのだから…で足元の経営をしっかりやらなければ資金調達は潰えます。森づくりも目的ではなくて手段ですし、やはり小さな成功の積み重ねは必要。
私の森の先生は、「会社から木をたくさん生産しなさいと言われたら、まずは土を良くすることから考えなさい」と言いましたが、この本意は「森の仕事は俯瞰とミクロの繰り返しだよ」ということ。
森林経営というのは、ナイフリッジの上を恐る恐る渡っていくようなもの。足元だけ見ていてはバランスを崩すし、前だけ見ていても足を踏み外してしまう。
私なりの先のお題の結論は、A社かB社かではなくて、A社もB社も上手く使いこなすことが正解ということ。
そのためには全体の戦略を自分たちで立てて、どこにどのパーツを当てはめるかを自分たちで決めなければならないのですが、戦略には「目的」と「目標」の区別が必要です。
これが上手くできない場合(あるいは何のことだかよくわからない場合)は、この手段に縛られるという「専門家の落とし穴」にハマる可能性があるので、下記の思考訓練を試してみることもおすすめします。
<参考>
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