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【無肥料栽培の秘密兵器】切り上げ剪定は植物ホルモンの働きを助け、生命力を引き出す!

昨年2月末、自然栽培果樹のパイオニアである道法正徳氏に特別な剪定方法について講習をしていただきました。この技術は、無農薬(無肥料)栽培において革新的なものであり、技術的な体系化が難しいと言われています。私たちはこの技術を広めることで、「安全で美味しい作物をみんなが食べられる世の中」を実現する手助けになればと考え、ここに記録いたします。

切り上げ剪定講習を行ってくれる道法氏

農薬も肥料も不要な栽培方法とは


剪定研修の場となった梅畑

道法氏は、「植物の成長には本来、農薬も肥料も必要ない」とおっしゃいます。しかし、一般的には植物の生長には窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)の三大栄養素が不可欠であり、これらを補うために肥料を施すのが普通とされています。それでは、無肥料栽培ではどのようにして植物は栄養素を補給するのでしょうか。

植物を育てるのは水・光・植物ホルモン

野菜の場合、主に土中微生物の力を借りて無肥料栽培を行いますが、みかんや梅などの果樹の場合、微生物の他に重要な役割を果たすのは水・光・植物ホルモンです(著者の名前は「川田建次」となっていますが、これは道法氏のペンネームです)。



植物ホルモンには多くの種類がありますが、主に以下のような働きをします

・ジベレリンとサイトカイニン:根で作られ、導管を通って発芽を促進し、新芽が伸びる。
• オーキシン:伸びた新芽で作られ、根まで運ばれます。根に到達すると、濃度が薄いと発根し、濃度が濃くなると発根が止まります。

高糖度・連産のミカンつくり: 切り上げせん定とナギナタガヤ草生栽培(農文協)・川田建次 著

根で作られた植物ホルモンの「ジベレリン」と「サイトカイトニン」が導管を通って、発芽を促進することで新芽が伸びる。

無肥料栽培では、植物ホルモンの活動を活性化させることが重要です。そこで登場するのが、道法氏が考案し広めた「切り上げ剪定」です。

切り上げ剪定

樹の枝は幹から横に広がりますが、横に伸びた枝の背に、毎年「徒長枝(とちょうし)」という枝が上に向かって伸び出します。通常の栽培方法では、この「徒長枝」は剪定で徹底的に切り落とされます。なぜなら、徒長枝には良い実が成らず、木の背丈が高くなりすぎて収穫時の効率が悪くなるからです。

しかし、道法氏の教えでは、この徒長枝こそを選んで残し、横向きや下向きの枝を切り落とします。この斬新な剪定方法を「切り上げ剪定」と呼びます。

上に向かってまっすぐ伸びる徒長枝(とちょうし)
徒長枝以外の、 横向き・下向きの枝を選んで切り落とします

切り上げ剪定のメリット

徒長枝は上に向かって勢いよく伸びる元気な枝です。この元気な枝を残すことで、木はより元気になります。農園の柑橘畑では2016年より切り上げ剪定を実施しましたが、美味しいみかんが大量に成り、収量も少し上がったように感じます。樹勢が弱っていた木も、少しずつ復活してきているようです。

従来の剪定方法では徒長枝を剪定してしまうため、樹勢が弱くなり病気にかかりやすくなるというのが道法氏の主張です。病気の改善・予防のために肥料が必要となり、肥料分に虫や病原菌が集まり、虫から樹を守るために農薬が必要になります。これを防ぐために切り上げ剪定が大いに役立ちます。農薬も肥料も病気も不要という、まさに目からウロコのような話ですが、切り上げ剪定で実現できるのです。

注意点

切りすぎ注意:剪定とは枝を切り落とす作業で、枝を切ることで植物は根を傷めます。小さな苗のときから無剪定でも果樹は育つとされています(福岡正信氏・「わら一本の革命」より)。
• 通常は剪定を行わないと枝が混乱し、樹勢が弱まり、最悪の場合は枯れてしまいます。植物の生長や植物ホルモンについて理解を深めた上で実践することで、切り上げ剪定は最大の効果を発揮する技術です。一気に切りすぎると(葉っぱを落としすぎると)かえって樹勢が弱くなることがあります。

注意点まとめ


• 切るときは必ず枝の付け根部分からキレイに切断する(中途半端な位置から切らない)。
• 一回の剪定で切ってもよい枝の量は、その木全体の葉っぱの量を見て20%以下にする(葉を落としすぎない)。


おわりに

現在、農園でも切り上げ剪定を取り入れて実践していますが、今回の記事は忘備録半分のため、初めて実践される方は道法氏に直接講習を受けてから実践されることを強くお勧めいたします。

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