IPO以外のEXIT戦略(2)
Pohoto @日光東照宮 日本宝樹展2023
前回に続き、ベンチャー企業や中堅企業がIPO上場する以外のEXIT戦略について見ていきたい。ベンチャー界隈の時流に乗り遅れた企業にとってIPOは全然魅力的でないため今回の記事を参考に別な道を模索してほしい。
EXITの選択肢
①IPO(上場)
②事業会社へ売却
③ファンドへの売却
今回は③について詳しく見ていきたい。
前回の記事でも「IPOには準備期間が3年、上場コストが5,000〜1億円もかかってしまう」というお話をした。これは利益率が低い企業にとって大変な出費になり上場により得られるメリットとよりデメリットの方が大きいといえる。従って、全然お勧めしない。
ここではファンドへの売却のメリットを詳しく見ていく。
1、経営のプロがハンズオンで自社の経営に関わってくれる
将来的に事業承継を考えているが後継人(ご子息やNo.2の取締役)に経営権を移譲するにはまだ早い場合、彼らの適正を見定める期間としてファンドの活用をお勧めする。ファンドからは経営のプロが派遣されて企業価値向上のため企業改革を行う。後継人はその作業を一緒に行うことで経営を学ぶことができ、経営者として適正を身につけていく。この期間でオーナーは後継者の適性があるかどうか判断することができる。ファンドとの株式譲渡契約の際に企業価値がアップし、後継者も育つことができれば将来的にMBOという形でファンドから株式を買戻せる条項を入れておくことで元々の経営陣へ経営権が戻ってくる。これはお互いにとってWin-Winの結果であり、こういった事例も今後増えてくると考える。
2、ファンドもいつかはEXITを見据えている
ファンドは対象企業の過半数の株式を購入し、その企業へプロの経営者を派遣する。そして企業価値を高め、上場もしくは事業会社への売却を目指す。つまりEXITありきのM&Aを行う。この点が事業会社によるM&Aとの最大の違いで、ファンドによるM&Aは買収側の色がつかないメリットがある。既存商品・サービスの改良や販売戦略などの変更は行っても、買収側から一方的に親会社の下請け業だけ指示されたり、統一ブランドで自社製品がなくなるといったことは起こらない。
3、ファンドは投資先企業を筋肉質にする
中堅・中小企業はオーナー企業のセンスや個人の能力で成長していることが多く、経営のプロが経営戦略に関わっていることはほとんどない。そのため、オーナーがいなくなった途端に業績がガクッと下がったり、取引企業との契約を切られて利してしまうケースが見られる。ファンドが介入することで誰もが経営できる組織に生まれ変わることができ、持続可能な組織へと進化する。ぜひ事業承継をご検討されているオーナーはこのファンドを使った承継プロセスを選択肢の一つとして考えてほしい。
最後に
IPO相場も以前ほど活況でない今、企業オーナーには今回お話ししたEXIT戦略をうまく活用し、ハッピーリタイヤを目指してもらいたい。