プレバト!!歴代俳句ベスト50②【秋/冬】
【はじめに】
2020年6月25日、「プレバト!!」の特別企画として
『歴代俳句ベスト50』が放送・発表されました。
優秀句30、秀逸句15、天3・地1・人1の計50句です。
今回は、前回に続いて、その50句(+α)を、「季節」ごとに分類し、季節感を皆さんと共有していきたいと思います。
春から夏にかけての「その①」はこちらからどうぞ ↓
※なお、ランク分け等はこちらのブログさんをご参照下さい。 ↓
季節は、複数の歳時記等を参考に選別しました。(放送日などとはズレることもあります)
3.秋(10句)
前回の記事でもご紹介しましたが、一般に「夏」のイメージが強い行事も、旧暦7月に当たるものは「秋」として収録されることが多いです。
その代表例の一つが、「七夕」ではないでしょうか。
(※国語のテストでも、“引っ掛け問題”として出題された記憶があります)
当時まだ特待生だった横尾さんの句。実体験に基づいたということもあり、『許されて寺』と展開するオリジナリティとリアリティが高評価でした。
優:許されて寺の笹切る星祭/横尾渉
16/07/07 2級へ昇格
もう一つ、新暦では8月中旬のことも多い「お盆」『盆踊り』も秋の季語。この人間味溢れる句柄が、円楽師匠の持ち味だと思います。
優:町会長犬を預かる盆踊り/三遊亭円楽
16/08/11 4級へ昇格
少し季節が下って9月1日から3日にかけて富山県富山市八尾地区で行われるのが『おわら風の盆』です。
富山県出身の【柴田理恵】さんが歳時記をめくる中で、地元の祭りが季語になっていることを知り、作った秀逸句。「75点」も納得の描写力です。
秀:もてなしの豆腐ぶら下げ風の盆/柴田理恵
17/08/24 75点1位
残暑も収まって『秋らしい』陽気に。「爽やか」は単体で秋の季語ですが、そんな日和のことを『秋日和』と言ったりもします。
秋の夜長に、こんな郵便物が届いていたら。そんな一句です。
優:御出席の葉書投函秋日和/千原ジュニア
18/09/27 「金秋戦」3位
春には菜の花畑や牧開の句がありましたが、秋も自然豊かな季節。特にこの藤本名人の句は、当時「番組最高傑作」であると夏井先生が絶賛しました。助詞の使い方(「は」)一つで、画角が大きく変わって、秋の自然が一気に変わることを体現してくれています。
秀:羊群の最後はすすき持つ少年/藤本敏史
16/10/27 2段へ昇格
「雷」が夏の季語なのに対し、「稲妻(いなずま)」と言う時は、「稲」が含まれていることからも明らかな様に“米の収穫時期”に関連することから、秋の季語に分類されています。
そんな秋の自然と人工物を取り合わせて、金秋戦を制したのが東国原名人。
優:信号の点滅は稲妻への合図/東国原英夫
19/10/10 「金秋戦」1位
その前年の金秋戦を制したのが、福島県出身の梅沢富美男永世名人。
様々な理由で廃村となってしまった地に残る「ポスト」(人工物)と、秋の季語「小鳥来る(て)」(自然の営み)を取り合わせ、名人・特待生からも多くの支持を受け、タイトル戦を連覇しました。
秀:廃村のポストに小鳥来て夜明け/梅沢富美男
18/09/27 「金秋戦」1位
秋の自然を代表する自然現象といえば、「紅葉(こうよう)」などの色づきであり、楓などの「紅葉」の名句もランクインしています。
優:紅葉燃ゆ石見銀山処刑場/東国原英夫
17/10/12 「金秋戦」1位
赤々と燃えるかのような紅葉も秋の日に静かに散ってまいります。あたかも大きな弦楽器を弾くかのごとく。
優:紅葉ふるコントラバスを弾くはやさ/石田明
18/09/27 「金秋戦」予選1位
様々な木々が色づき、また散っていく秋において、色を変えずに緑色のまま居続ける松は、「色変えぬ松」として秋の季語になっています。
人物の「ごとく」俳句などで特待生を駆け抜けた【立川志らく】が名人昇格を決めた一句を、秋の最後にご紹介します。
優:色変えぬ松や渋沢栄一像/立川志らく
19/10/31 初段へ昇格
4.冬・新年(13句)
初心者は見落としやすいのですが、「布団」「毛皮」や「風邪」「咳」も、冬の季語と見做されます。時代の変化によって季感が弱まった季語も多く、例えば「マスク」などもその一例。
平成の時代には花粉症、令和の時代にはコロナ対策として、冬以外の季節に着用する人が一気に増加しました。
そんな「マスク」の俳句といえば、村上健志名人の代表作とも言われるこの作品。直近では最後の例となる「78点」の高得点を叩き出し、現行制度では最短タイとなる2回目の挑戦で特待生を決めた一句です。
秀:テーブルに君の丸みのマスクかな/村上健志
16/11/24 78点1位
続いては少し冬らしさの強い季語「手袋」です。予想外のベスト50選出に、周囲が驚いたKis-My-Ft2【北山宏光】さんの、特待生昇格を決めた一句。
優:手袋を外して撫でる猫の喉/北山宏光
18/11/29 73点1位
同じく冬の実体験をもとに描いた俳句、これはベスト50選外でありますが、番組内で紹介されていたので、ここに追記。「着膨れ」が冬の季語です。
惜:職質をするもされるも着膨れて/的場浩司
20/01/23 72点1位
そして季節は年末年始へ。年末(大晦日)までは冬の季語、元日を迎え半月ほどは別途「新年」の季語と区別されます。
まずは、多くの社会人に訪れる『仕事納め』を詠んだこの一句。
優:抜型を重ねて仕事納めかな/村上健志
19/12/26 「冬麗戦」予選2位
師走(12月)は、どこもかしこも混み合いがち。仕事を終えて乗る電車も、座れず満員。そんな時に急ブレーキが! という疑似体験が出来る一句です。
優:吊り革の師走遠心力に耐へ/ミッツ・マングローブ
18/12/27 「冬麗戦」予選2位
同じ電車でも、通勤ではなく帰省か旅行でしょうか? 「冬麗戦」の予選で名人10段を破り1位になった【皆藤愛子】さんの一句。
なんと歴代1,719句のベスト5「人」に選ばれました。
人:右肩に枯野の冷気7号車/皆藤愛子
19/12/26 「冬麗戦」予選1位
( 新年 )
そして迎えた新しい年。お正月らしさ溢れる俳句が「冬麗戦」で何句も披露されてきました。例えば、中田喜子名人のこの破調も絶賛されました。
秀:連覇のさきぶれ沸き立つ初電車/中田喜子
18/12/27 「冬麗戦」予選1位
同じ電車内、全国大学ラグビー選手権準決勝の会場に向かう面々が居れば、こんな取り合わせの方もいるかも知れません。
上五と下五のギャップのインパクトは、予選3位でもベスト50入り。
優:ヘビメタの担ぐギターと破魔矢かな/千原ジュニア
18/12/27 「冬麗戦」予選3位
しかし、全国様々な形で迎えたお正月。電車に乗れない天候の場所もきっとあることでしょう。横尾名人がタイトル戦初優勝を遂げた一句です。
秀:庖丁始都心は計画運休/横尾渉
20/01/03 「冬麗戦」1位
同じお正月SPで披露され、特待生を番組対抗戦で下した一句も、ベスト50の選外ではありましたが、番組内で紹介されました。
惜:雑煮の香雨の銀座の生中継/竹内涼真&鈴木亮平
20/01/03 「番組対抗戦」73点1位
そして、松の内が明けても、立春までは約半月。蕭条たる真冬に相応しい、荘厳な3句を最後にご紹介していきましょう。
まずは、2019冬麗戦を制した東国原名人の一句から。
秀:凍蠅よ生産性の我にあるや/東国原英夫
19/01/03 「冬麗戦」1位
そしてその前年、後の名人・千賀健永が、初めて「特待生」でタイトル戦を制した代表作です。一単語ごとに意味が次々と変化していくという秀逸句。夏井組長が涙目で絶賛した姿も印象的です。
秀:雪原や星を指す大樹の骸/千賀健永
18/01/04 「冬麗戦」1位
そして最後に紹介するのは、全1,719句のトップ2:「地」に選ばれた一句。梅沢名人が6段に昇格した2017年の作で、『365日季語手帖』にも著名作家に交じって収録されたこともある作品です。
地:銀盤の弧の凍りゆく明けの星/梅沢富美男
17/01/26 6段へ昇格
【おわりに】
以上が、2020年6月25日放送の特別企画で紹介された「50+2句」です。
季節別に並べ替えてみてもバランス良く構成されていることが良く分かり、作者もバラエティに富んで、素晴らしい回だったと思います。
ただ、一人の視聴者としては、やはり「あれが入ってないのはおかしい!」とか思ってしまうところもあるので、それはまた別の機会に、お話しできればなと思っています。
皆さんはどの句がお好きですか? そんな話も教えて下さい。ではまたっ。
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