「小笠原群島」での震度をまとめてみた
【はじめに】
この記事では、2021年1月4日に発生した最大震度5強の地震に関連して、「東京都小笠原村」の震度について纏めていきます。
1.小笠原村にある3地点
まず、東京都小笠原村について、日本語版ウィキペディアから引用します。
日本国の「端」を2つ含むものの、一般住民が居住しているのは父島と母島の2島のみというのが「小笠原村」です。ちなみに、人口は父島が2,000人強で、母島が450人程度だそうです。
こんな小笠原村には、以下の3地点の震度観測点が設置されています。
図にするとこんな感じでして、気象庁の赤丸(●)が北の父島に2つ、南の母島に1つあるのが確認できますでしょうか。
要するに、以下の3地点が小笠原村の陸上の「震度観測点」となります。
1974年~ 小笠原村「父島西町」:父島気象観測所
1994年~ 小笠原村「父島三日月山」
2007年~ 小笠原村「母島」
※なお気象庁の「震度観測点一覧」のぺージでは、父島西町の観測開始時期を「1974年~」としていますが、占領前(昭和20年以前)の観測データも、震度データベースで調べることが可能です。
ここからは、具体的な震度観測事例を紹介していくことにしましょう。なお以下、「西」・「三」・「母」と表記しているのは上の3地点のことです。
2.最大震度4以上の図(今回で11例目)
まず、2021年までに「小笠原村で震度4以上」を観測した例を図示します。
色が深さを示しているのですが、プレート境界付近の「赤い(浅い)地震」と、島のすぐ近くの「黄色(深さ30~50km)」い地震、そして西側に分布している「青色(深発)地震」に大きく3つに分類できそうです。
なお、この図にはありませんが、2021年1月4日に起きた地震は、位置的には黄色の領域に当たり、色は「黄緑色」という感じのスケールとなります。
ではここから領域別にざっくり分類していきましょう。
(1)プレート境界の浅め地震
まずは父島・母島の真東の「プレート境界」付近の地震から見ていきます。
M6以上かつ小笠原村で震度3以上を観測した地震は、ここ半世紀で4例。
発 生 日 深 Mj 西 三 母 本土最大
1977/04/21 6.1 3
2008/03/15 66 6.6 2 3 1
2010/12/22 08 7.8 4 4 4 2
2010/12/23 59 6.6 3 3 3 1
顕著だったのが、2010年12月22日に起きた「Mj7.8(Mw7.3~7.4)」の地震でしょう。津波は注意報レベルに留まりましたが、地震の規模および深さ(8km)から考えると、大津波になっていてもおかしくないレベルでした。
ただし、これだけ大規模な地震でも、明らかに近い小笠原村では最大震度4だったのも、結構、特徴的なことかも知れません。
(2)父島・母島付近の地震
適当に四角く囲って、M4.5以上&最大震度3以上の地震をプロットしたら、2021年度までに10例ほど認められました。
発 生 日 深 Mj 西 三 母 本土最大
1982/01/02 50 6.3 3 1
1990/03/20 34 5.6 3
1992/03/29 31 5.3 3
1999/07/20 84 5.1 3 3
2007/04/16 47 5.1 2 3
2007/05/05 48 4.8 2 3
2008/02/27 38 6.6 3 3 2
2009/10/21 30 4.7 1 1 3
2015/03/14 112 4.7 1 2 3
2020/09/03 40 4.8 2 2 4
2022/01/04 77 6.1 4 4 5強
2008年の事例は父島の東海域を震源とする地震だったため、母島よりも父島で揺れが大きかったですが、島の近くで起きた地震に関しては、母島の方が揺れが大きくなっています。2022年1月4日の事例では、震央は母島よりも父島に近いところだったにも関わらず、母島が最大震度の5強でした。
これは母島に震度計が観測される以前にも窺えるものです。
例えば、1978年9月13日に起きた中規模地震(気象庁の震度データベースではMjが不明で掲載されている)では、母島で落石や建物被害が出たものの、父島では震度2だったなど、母島で被害が目立つ例は過去にもありました。
◎ 2022年1月4日(M6.1・5強)
2022年1月4日の午前6時過ぎに起きた「父島近海」の地震では、最大震度5強を母島で、震度4を父島の2地点で観測しました。
なお、規模がM6前後だったため、他の島では有感となりませんでした。
(3)小笠原諸島西方沖の深発地震
反対に小笠原諸島西方沖の領域の「深発地震」も見ていきましょう。M6以上かつ最大震度3以上の地震も。ここ半世紀で約10例ほどありました。
発 生 日 深さ Mj 西 三 母 本土最大
1978/03/16 280 6.6 4 2
1985/09/10 511 6.2 3 1
1985/10/04 486 6.0 3
1985/12/03 436 6.0 3
1991/05/03 460 6.6 3 2
1998/08/20 467 7.1 3 3 3
2000/08/06 445 7.2 3 4 3
2015/05/30 682 8.1 4 4 5+ 5+
2015/06/23 484 6.5 2 3 4 2
2017/09/08 475 6.1 2 2 3 1
2020/04/18 477 6.8 2 3 4 2
父島西町で震度4を観測したのは、ここ半世紀で2回(1978・2015)。深発地震でも、父島三日月山や母島の方が揺れが強くなる傾向が窺えます。
◎ 2015年5月30日(M8.1・5強)
その最たる例が、2015年5月30日に発生した深発巨大地震でしょう。Mj8.1で、最大震度5強を神奈川県二宮町で観測したほか、47都道府県全てで有感となった唯一の事例です。
詳細はウィキペディアに譲りますが、震源に最も近い小笠原村で最大震度の5強を観測したのは、やはり「母島」でした。