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エクストリーム特別警報 ~台風以外の大雨編~【2022/8/3更新】

【はじめに】
この記事では、(直接、台風によるものでない)「大雨」による特別警報の発表事例を振り返っていきたいと思います。

(0)「特別警報」について

日本において、気象災害、水害、地震、噴火などの重大な災害が起こるおそれが著しく大きい場合に、気象庁が警告のために発表する情報。
警報の一種ではあるが、警報の発表基準をはるかに超える規模で起きるような甚大な被害が発生する恐れがあり、最大級の警戒をする必要がある場合に適用される。

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2013年8月に運用が開始された「特別警報」のうち、「大雨特別警報」の発表基準は次のとおりです。

『気象等に関する特別警報の発表基準』
台風や集中豪雨による数十年に一度の降水量が予想される場合、
または、数十年に一度の強度を持つ台風や、それと同程度の温帯低気圧による大雨が予想される場合。気象庁 > 特別警報の発表基準について

参考1: 気象等の特別警報の指標(発表条件)
参考2:
雨に関する各市町村の50年に一度の値一覧

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ここで把握しておきたいことを一つ。参考1の資料の中から抜粋しますと、

気象庁は、平成3年以降の観測データを用いて、50年に一度程度の頻度で発生すると推定される降水量及び土壌雨量指数の値(50年に一度の値)を求め、これを大雨特別警報に用いています。
過去50年の間に実際に観測された値の最大値というわけではありません。

とあり、“数十年に一度”が数年のうち何度も発表されることがあることを、改めて確認しておくと良いかと思います。

それでは過去の事例を振り返っていきましょう。

2013年9月 台風18号 京都、滋賀、福井
2014年7月 台風8号 沖縄(宮古島、沖縄本島)
           沖縄(沖縄本島)【再】
2014年8月 台風11号 三重

と、運用開始1年近く、台風による「大雨特別警報」が発表されましたが、台風によるものではない「大雨特別警報」は、2014年9月、北海道に発表された事例が最初ではないかと思います。

(1)2014年9月:北海道(石狩・空知・後志地方)

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長い所では半日近く特別警報が継続。道内では初の発表事例となりました。

(2)2015年9月:関東東北豪雨(栃木/茨城/宮城)

【平成27年9月関東・東北豪雨】
死者20、負傷者82、全壊81、半壊7,090、床上浸水2,523、床下浸水13,259

台風18号から変わった温帯低気圧の影響で、日光など関東北部で記録的大雨となり、9月10日に栃木・茨城県で発表。
雨の範囲が北に移り、翌11日には宮城県でも発表。3県とも1日近く継続。

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茨城県常総市内で鬼怒川が越流、破堤し、大きな浸水被害が出ました。

(3)2017年7月:島根&九州北部豪雨(福岡/大分)

40名を超える犠牲者が出た2017年の「九州北部豪雨」。
 ※全壊336、半壊1096、一部破損44、床上浸水180、床下浸水1481

7月5日の午前5時55分、島根県の西部に大雨特別警報が発表され、5時間ほどで解除。
その後、午後に入ると、九州北部に線状降水帯が形成され、朝倉市付近では9時間に限定すれば日本の観測史上最大級の大雨が観測されます。
それを受けて夕方6時前に1回目が発表されると、午後8時前と翌日未明3時過ぎに範囲が拡大、福岡県と大分県のほぼ全域に発表されました。

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(4)2018年7月:西日本豪雨(平成30年7月豪雨)

運用開始以来(当時)最多となる11府県に「大雨特別警報」が発表。日ごとに大雨の地域が移ったことで、ある地域では解除されても新たに別の地域で発表されるといった状態が数日に渡って続きました。

11都道府県:福岡県、佐賀県、長崎県、広島県、岡山県、鳥取県、京都府、兵庫県、岐阜県、高知県、愛媛県

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【 平成30年7月豪雨(西日本豪雨) 】
死者263、行方不明8、負傷者484(重傷141、軽傷343)
全壊6,783、半壊11,346、一部破損4,362、床上浸水6,982、床下浸水21,637

「西日本豪雨」の通称に違わず、平成最大・最悪の被害をもたらしました。

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・広島県では、過去の土砂災害と同様「真砂土」の土壌に大雨が降り、被害が拡大。土砂崩れ、崖崩れに加えて、土石流が「砂防ダム」を破壊・乗り越えて住民を襲い、各地の集落を襲いました。
・岡山県では、倉敷市真備町で『バックウォーター現象』が起きたことで河川堤防決壊による大規模冠水が発生、1階での水死が多数を占めました。(合わせて『ハザードマップ』の重要性を再認識する機会ともなりました)

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・愛媛県では、宇和島などでの土砂崩れに加えて、西予市の野村ダムでは、未明に『特例操作(緊急放流)』を実施せざるを得なくなり、肱川が氾濫しましたが、逃げ遅れによる犠牲者が出ました。

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行政などによる流域住民への周知の難しさが、広く議論されてきましたが、そもそも、『緊急放流』に至るまでの過程や、避難するための時間をダムが確保してくれているとの考え方もあり、受け手も正しく理解する必要があると思われます。

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(5)2019年8月:長崎、佐賀、福岡

死者4、負傷2、全壊87、半壊110、床上浸水1,645、床下浸水 4,513

毎年のように九州北部に発表される中、2019年8月には秋雨前線などの影響で、長崎・佐賀・福岡の3県に発表。
「佐賀」の観測点では、1937年以来82年ぶりの記録更新となる「1時間110.0mm」という猛烈な雨が観測。九州北西側での降水が顕著でした。

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(6)2020年7月:熊本・鹿児島&福岡・佐賀・長崎&岐阜・長野

死者78、不明4、全壊270、半壊576、一部破損855、床上浸水7676

2020年7月は、「令和2年7月豪雨」と命名される大雨による災害が、九州や中部地方を中心に全国各地で相次ぎました。

① 7月4日:熊本県・鹿児島県

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事前の24時間雨量の予想のおよそ倍となる大雨が降った熊本県と鹿児島県。九州北部には特別警報されたことがありましたが、九州南部に発表されるのは運用開始後初めて。朝5時前に発表され、約6時間継続しました。

特に大きな被害が出たのは、日本三大急流にも数えられる「球磨川」の流域で、球磨川水系では10箇所以上で氾濫・決壊が発生し、1965年を始めとする過去の水害を上回る高さでの広範囲に浸水の被害が出ました。
特に、特別養護老人ホームの水没や、インフラの断絶、浸水・土砂災害による被害が各地で発生し大きな被害が出ました。

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② 7月6~7日:福岡県・佐賀県・長崎県

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球磨川などでの氾濫の2日後、梅雨前線が停滞し、九州地方の北西部を中心に昼頃から線状降水帯がかかり続け、午後4時30分、福岡・佐賀・長崎県の一部に大雨特別警報が発表されます。

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九州の北部では、2017年から4年連続で大雨特別警報が発表されてきたが、今回も「大牟田(1976年~)」の観測点で統計開始以降最大雨量を観測するなど記録的な大雨が降り、複数の県で、内水氾濫や土砂崩れなどによる被害が観測されました。

③ 7月8日:岐阜県・長野県

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九州各地で大きな被害が出る中、7日夜からの雨によって本州・中部地方は岐阜県や長野県にも特別警報が発表され、九州と同様に大雨による被害が出ました。
その翌日にあたる2020年7月9日、気象庁は(当時)継続中だった大雨を「令和2年7月豪雨」と命名しています。

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(7)2021年7月:鹿児島・熊本・宮崎

この年も7月上旬、梅雨の後半に大雨が降り、2021年7月3日には、静岡県熱海市で大規模な土石流が発生し、多くの犠牲者が出てしまいました。

翌週にかけて各地で雨が降り続く中、翌週の土曜日に当たる2021年7月10日の早朝、九州南部に相次いで大雨の特別警報が発表されます。

2021年7月10日(土)
・05:30 鹿児島県さつま町、伊佐市、薩摩川内市、出水市
・05:55 宮崎県えびの市
・06:10 熊本県人吉市
・06:15 鹿児島県湧水町

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鹿児島・宮崎・熊本の県境付近に発表。川内川の支流から住宅街に水が流れ込んだり、緊急放流の可能性が報じられるなど、令和2年7月豪雨で大きな被害の出た球磨川のすぐ南の地域で被害が出ました。

(8)2021年8月:広島・長崎・佐賀・福岡

東京オリンピックの直後、梅雨末期の様な大雨が中部地方以西中心に発生。

事前に平成30年の「西日本豪雨」に匹敵、或いは上回る雨量が予想されると繰り返し警戒が呼びかけられたほか、前月の熱海での大規模な土砂災害が大々的に報じられたこともあり、比較的、避難意識の高まった中での大雨。

①8月13日:広島県
九州北部から中国地方西部にかけてを中心に、線状降水帯が形成され、広島県内の一部で、まずは「大雨特別警報」が発表されます。

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②8月14日:長崎県、佐賀県、福岡県、広島県
広島県の大雨特別警報が解除されてからも、各地で大雨は降り続き、平年値の「3か月を超える」地点すら出てきた翌8月14日、前日に続き広島県や、九州北部3県の一部地域に大雨特別警報が(再)発出されました。

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この年から切り替えられた「緊急安全確保」(警戒レベル5)は、これまで数千~数万人単位が対象でしたが、この大雨では、最大100万人超を対象に発表され、命を守る行動を呼びかけることとなりました。

中国地方を中心に河川の氾濫、九州北部では内水氾濫などによる浸水被害が相次ぎ、過去の水害で被害の出た地域が再被害を受ける事態となりました。


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