【参加録】村上健志の俳句実況(月百句Vol.10)《自作句あり》
【はじめに】
この記事では、2021年9月9日に「フルーツポンチ村上の俳句の部屋」で、行われた俳句実況「月百句」の第10回放送に参加した記録を、私の添削句や自作句を交えてご紹介していきます。
0.オープニング
(1)村上さんの「note」を紹介したい!
そして、私、普段は「俳句実況」で検索するので気づかなかったのですが、村上健志さんが「note」を始められたそうで、公式に『月百句』に選ばれた句を公開し始めているようです!(そのページがこちら ↓)
(ご本人にも了承いただきましたし、)私も全力で応援していきます!! 皆さんもぜひ村上さんの「note」を「YouTube」同様推していきましょう。
(2)俳句の動画の予行演習
「プレバト!!」では、一時期、村上名人が「俳句を『デッサン』」に喩えていましたが、今、村上さんが考えているのが、
「俳句は『スケッチ』」
というのをテーマにした「俳句の動画」だそうです。これまで、基本的には『俳句実況』ばかりやってる「村上健志の俳句の部屋」ですが、それ以外のパターンの動画を練習しているそう。村上さんの句柄が発揮しそうで楽しみです。私からは2点。
①ホワイトボードとかに、簡単で良いから、
ポイントとなる部分を書いておくと話が頭に入りやすそう
(抽象的で、初心者は特に何の話か分かりづらくなるから)
②正岡子規の『客観写生』という概念を参考にされる
のをオススメします。予行練習の反応を気にする村上さんについては、
あっちゃん(中田敦彦さん)が、YouTubeでは史上初となる『有観客』での収録を始めた頃から重ねて仰っていたことを思い出しました。すなわち、『独りで収録していると、反応が無いから辛い。収録してて観客(反応)が欲しい』と。特に宣言下に自宅で独りで収録していた時に仰ってましたね。
ちなみに、私の書いた「似た(?)記事『俳句の情報量は写真』」も、興味のある方はぜひご覧ください。(↓)
(3)「季語」は昔の人の「ハッシュタグ」かも?
俳句を作るのを「インスタグラムに写真をアップする」ことにたとえていたコメントを見て、私はこんなコメントを寄せました。
12:48 Rx Yequal
ある種、季語は昔の人の「ハッシュタグ」かもね。
村上さんやコメントでたろりずむさんにも共感して頂けて嬉しかったです。
案外、『♯銀杏』とか『♯天高し』みたいなノリだったのかも知れませんww
1.席題「教科書」
オープニングトークが盛り上がり、約15分経ってのスタート。最初の兼題は『教科書』と決まりました。これは皆さんアイディア出しやすそうww
教科書と取り合わせるから「昼の月」じゃないと無理か? って呟いていらっしゃいましたが、夜に教科書を開くことにこそドラマがあると思います!
「教科書」というテーマを出発点に、徐々に連想が進み、「語呂合わせ」に拘って計15分の初手熟考となります。そんな中で思い出したのが、
・元素記号ふたつ忘れて春の風(2018/2/22・2→3段昇格)
最速で名人の階段を駆け上がっていた頃の名句。『元素記号』も語呂合わせで覚えた記憶がありますね。これも良い句でした。そして村上さんが考えて作った今日最初の句がこちらでした。
【 1句目 】
『語呂合わせとシャワーの音よ月の夜』 村上健志
《 Rx自作句① 》
ちなみに「教科書」といえば、村上さん! 貴方、(添削付きとはいえ、)教科書に句が載っていらっしゃるじゃないですか! ということで、
①-1『廃バスへ月光 僕の句が教科書に』 Rx
村上さんの代わりに詠みました(?) 三省堂さんありがとうございます。
そして、学習指導要領によらない学校(?)にも、「教科書」があります。村上さんが口にされていた自動車学校の教科書=「教本」です。
①-2『教本じゃ運転できず帰路の月』 Rx
そして、「名前を書く欄」などと村上さんが口にされていましたが、現役の学生ならともかく社会人が瞬時にそれを思い出せる……。やっぱり芸人さんの引き出しはすごいな、と思いました。確かにありますよね、名前書く欄。
①-3『二学期のドリルに吾子の名を月夜』 Rx
私は、9月だからこそかも知れませんが、「なんか学期ごとに分かれてる」教材があったなって思い出しました。
最後。4句も出来てしまいました、「教科書」に関するニュースから1句。
①-4『夕月や教科書に「若者のすべて」』 Rx
バンド・フジファブリックをあまり聞いたことのない私でも知っている楽曲『若者のすべて』が、米津玄師さんの『Lemon』と共に音楽の教科書に記載されるというニュースが、2021年8月末にネットを賑わせました。
ですので「若者のすべて」というのは、作者の意図としては楽曲名。ですが当然、知らない方が字面どおり読めば、「若者のすべて」が教科書に載っているの? と訝しく思うのではないでしょうか。
そこに「曲名であることを知らない大人」と「子供」のディスコミュニケーション(=ミスリード)を含んだつもりです。ご参考までに。
2.席題「古書」
続いての席題も、本が続きまして、「古書(こしょ)」です。『学問の秋』らしくて良いじゃないですかー。
これも「古本」と言うより「古書」と言った方が風情がある気がしますね。
古本ならば、令和の本でも古本になり得ますが、流石に「古書」と呼ばれることは無いでしょう。そこらへんが微妙な言葉のニュアンスの違いであり、『古書』という言葉のいわば本意だと思います。
村上さんは、コメント欄の力も借りながら、こんな優しい句を作りました。
【 2句目 】
『古本に手書きのルビや月渡る』 村上健志
(筆者後記)そういえば、「ルビ」は活字印刷されたもので、手書きのものはルビと呼ばないと聞いた気がしますが、今回そこは不問とします。流石に無粋でしょうww
「渡る」という下五の抑えが、『古本』も手書きのルビを振った人から、誰かの手を経て、私の所に『渡って』来たのだと考えると、人々の営みが急に愛おしく感じられませんか?
《 Rx自作句② 》
「古書」というテーマをホワイトボードに書いていないことを指摘されて、半身の体勢で書いたこともあってか、かなり不思議な形になってた「古書」という漢字を見て、作ったのがこんな句です。
②-1『独特な古書の書き順 居待ち月』 Rx
当然、こんなエピソードが無ければ意味は伝わらないのですが、むしろこの句は、書き順を意識する「古書」って何だろう? という所から発想を勝手に広げてもらって深読みしてもらいたい感じですねww
②-2『古本に振り仮名多し月白し』 Rx
結構、昔の教科書や新書に「振り仮名」の多い時代があった様に感じます。
そして、最後に『古本屋』で村上さんが作ろうとしていたのに触発されて、こんな句はどうでしょう。
②-3『五万個の思い出や月夜のBOOK-OFF』 Rx
『BOOK-OFF』だと俗っぽくなるのと、書籍以外にも販売している点で映像を確保できるかなって思いました。「五万個の思い出」を具体化するという強みが活きていれば良いのですが。
3.席題「宝石」
そして、3つ目の席題の募集時に、「今度『月の船』という季語+テーマ」というスパチャが来ていました。『月の船』というロマンチックな季語については、その機会がありましたら、ご紹介します。
そして、3つ目の席題は『宝石』と決まりました。宝石が『月』という季語を殺してしまわないかがポイントになりそうです。
村上さん、(厳密には鉱物ではないものの)すぐ「真珠」にポイントを絞って、アイディア出しを進めます。そういった中で、「『真珠のネックレス』は重いのか?」という疑問が浮かんだり、日本に「宝石の採掘場はあるのか?」といった疑問が次々と湧いてきます。
採掘場から茨城県出身の村上さんは『真珠の養殖場』に発想を飛ばします。霞ヶ浦が、淡水真珠の生産量日本一だそうです。知りませんでしたねー
季節感が合っているのかは分からないと、注釈付きな感じで披露しました。
【 3句目 】
『朝の月真珠養殖場にメス』 村上健志
これは「真珠養殖場」という9音を見つけた段階で「勝った」様なものですよねww 本当に素晴らしい発想だったと思います。
ただ個人的に「ネック」かなと思ったのは、動物に関する話題なので、最後の「メス」をカタカナ表記にすることで「メス(♀)」と思う方が、3割位は居るんじゃないかと。
記事を書く時点ではまだ「ルビ」の機能がnoteで本格実装されてませんが、メスも調べると漢字表記があるみたいなので、誤読を防ぐためにも、こんな風な添削案をご紹介します。
【 Rx添削例 】
『朝の月真珠養殖場に尖刃(メス)』
※【 Rx改作案 】
『朝月に尖刃(メス)あり 真珠養殖場』
さらに、「宝石」というキラキラしたイメージのテーマに真っ向勝負を挑む句を作ります、村上さん「宝石」での2句目です。
【 4句目 】
『月落つや宝石箱を置く少女』 村上健志
これも「宝石箱」という小物をうまく巧く使った作品だと思います。以前も「少女」等を使った句がありましたが、人物&小物のチョイスが見事です。
※【 Rx私案 】
『月夜の少女 宝石箱を開けたまま』
《 Rx自作句③ 》
宝石で最初に思い浮かべたのが、『そうね誕生石ならルビーなの♪』です。今から40年前の大ヒット曲『ルビーの指環』にも「宝石名」がありますね。
そんな風にオシャレな存在のイメージが強い「宝石」からこんな句を。
③-1『ジュエリーのCMソングや居待月』 Rx
最近はやや減っている印象ですが、宝石のCMソングは化粧品などと並んでとにかくオシャレな曲を起用していましたよね。
ただ、こんなやり方もありかなと思って。「宝石」の魔性を俳句に盛ろう。
③-2『朝月の街や宝石強盗だってさ』 Rx
4.席題「とり皮」
最後の席題は、「鶏皮」(村上さんは「とり皮」と表記)と決まりました。今回もやっぱり出ました「食べ物」の席題です。
俳句に取り合わせるものとして「ポン酢」にこだわる姿勢はまさに、「食」へのこだわりに似た何かがある様に感じました。
こういう「好き嫌い」や「こだわり」の強い人は、うまく作用すれば、俳句づくりに向いているのかも知れませんね。村上さんなりの、食への美意識が詰まったこんな句が出来ました。
【 5句目 】
『秋の月とり皮の焦げに柚子胡椒』 村上健志
俳句の下五に添えられた「柚子胡椒」が、文字通りのスパイスになっていますよね。そして「焦げ」にフォーカスするあたりも、鶏皮が美味しそうで。
《 Rx自作句④ 》
村上さんが、ホワイトボードに「鶏」でなく、「とり皮」と書いていたことに興味が惹かれてこんな句を作ってみました。
④『「とり皮」と癖字のメニュー月見酒』 Rx
これも前にもあった「本当の『月見酒』じゃない」論争が巻き起こりそうですが、まあお許し下さいな。
あんまり「鶏皮」という料理自体に馴染みが無いRxでございましたー。
5.席題「段ボール」
最後の席題は「ダンボール」となりました。非常に身近な存在ですよね。
村上さんが得意そうな「小物」ネタということで、すんなりと良い句が完成します。それがこちら。
【 6句目 】
『段ボール調達の子ら昼の月』 村上健志
必ずしも明るいイメージばかりではない「段ボール」ですが、この句は非常に明るい日常を描けています。「調達係」とするか村上さんは悩んでいましたが、個人的には「調達の子ら」の方が好きです。
秋の季節の季語「月」と結びつく事で、きっと『文化祭なんだろうな』とか想像が膨らみ、周囲の大人も含めて懐かしく楽しい気持ちになりますね。
《 Rx自作句⑤ 》
では、私は暗いイメージを纏う「段ボール」の句にしましょうか。
⑤『譲られた段ボール敷き地震(なゐ)月下』 Rx
あの首都圏でも帰宅困難者が大量発生した際のエピソードで、「段ボール」や新聞紙を譲られ、それで暖を取ったという経験を語る方が多くいました。
避難所や災害対策の分野でこそ、過去の経験を教訓として活かすことが希求される訳ですが、果たして。
【おわりに】
今回は、気づけば私(Rx)も11個の句が出来ていました。村上さんと一緒でかなり筆がノッた感じだったのかも知れません。
①-1『廃バスへ月光 僕の句が教科書に』
①-2『教本じゃ運転できず帰路の月』
①-3『二学期のドリルに吾子の名を月夜』
①-4『夕月や教科書に「若者のすべて」』
②-1『独特な古書の書き順 居待ち月』
②-2『古本に振り仮名多し月白し』
②-3『五万個の思い出や月夜のBOOK-OFF』
③-1『ジュエリーのCMソングや居待月』
③-2『朝月の街や宝石強盗だってさ』
④『「とり皮」と癖字のメニュー月見酒』
⑤『譲られた段ボール敷き地震(なゐ)月下』
村上さんがオフィシャルに「note」を解説されていますので、そちらの記事をぜひご覧頂ければと思います。
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