星が見えた日
その夜も沢山の星が見えたらしい。海の上の月が眩しくて、そんな風に語った人のことを思い出していた。
僕はその日のことを知らないけれど、ずっとその前から続く生活と町の記憶に囲まれて、いまここにいる。
ごみ捨てに出た深夜の川沿いで、信号が点滅していた。いつもは暗く感じるこの町の夜を、今日は明るいと思った。僕が知らないあの日の夜を思い浮かべていた。
きっと言葉じゃ到底足りないけれど、僕の知らない記憶を語る人の声や呼吸に耳を傾ける。この先も僕がわかる日は来ないから、せめてこの町のいろんな景色をひとつひとつ覚えながら、一緒に同じ今日をどうか過ごしていきたい。
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