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金木犀の香りとどんぐり

毎年、楽しみにしている金木犀。
小さな小さな花が寄り添い咲く姿
優しいオレンジ色は元気色

下を見て歩く人には香りを届け
空を仰ぎ肩を落とす人にも香りを風に乗せ
優しく届ける

咲く季節を秋に選んだのは何故だろう
寒い冬が来る前に沢山遊べと誘い
はらり はらりと落ちる葉に心が落ちぬ様に
と寄り添い
街中を精一杯の香りで包む様に感じる
日々を懸命に生きる者達は奇跡の香りに
包まれて生きている
その香りを不愉快に感じる人に冴え何かを
伝える様に香りは揺れている

金木犀の香りを楽しみに散歩に出た
嬉しくて駆け寄った
      何も香らない_
そんなはずは無いとあちらこちらを歩き嗅ぐ
      何も香らない_

小さな喜びを失い喪失感と闘っていた数日間で
少し故障した様だ
はてさて、どうしたものか。
自分の為に時は止まらない事は骨の髄まで記憶済み。
慌てるな、惑うな。
鼻が駄目ならば目がある。
幼い頃から同じ黒い目。その目で見つめて来た金木犀の姿と香りは刻まれている。
あの日、あの時の金木犀が包んでくれるから大丈夫と思える幸せ。
今年の金木犀が咲いてくれている間に薫る事が出来たら嬉しいけれど、それもまた力まず居たい。

木からポトンっと落ちる音に振り向くと
どんぐりが落ちていた。
丸い丸いどんぐりがコロコロ ニコニコと
木の下に並んでるいる。
子供達が遊びに来る前に準備をしている様に_

お前もどうだ?
ほれ、そんな顔をしないで遊べ。
鳥がどんぐりの木に止まり話しかけてくれた。どんぐりを鼻先につけてみたけれど、何も香らない。金木犀の香りが嗅げる様になってからのお楽しみにするとした。

金木犀の花は枝を離して香りを独り占めすれば香らず。自分の足で木の下に行けば薫る_
          受け取れた香りがある。

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