カエルの王様が変える
ここはカエルの王国。
王国に王様と王女様と家来達が平和に暮らしている。
カエルの王様は少し大きな丸い体をしている。
王様は最近あまり虫を召し上がらないから皆は心配して、いろんな虫をせっせと運ぶ毎日。
そんなある日_
「王様、最近ご飯の時間になると暫く居なくなりますね。大きなお腹になって帰って来られますが
外で何をしているのですか?」
誰よりも虫取りの上手な家来が尋ねてみた。
「バレておったか。
実はの、最近昆虫が口の中に刺さるのじゃよ。
痛くてのう。その上に喉の筋肉が衰えてのう。
飲み込み辛くていかん。しかも、必死で喰うと
また太るし悩んでおったのじゃよ。
そこで、美味いものは無いかと探しに行きとうとう見つけたのじゃ_
赤くて艶々した実で少し酸っぱい。コロコロして取りにくいのも面白い。
コロコロして口の中が疲れてダイエットになる。
赤色、黄色、緑色もある事を知ったぞ。」
「両頬に詰めて帰って来た時はリスになったかと
思ったものよ。本当に、何をするやら...」
女王様の苦笑いに王様は喉を膨らませて惚ける。
そんな平和な王国は最近はすっかりお悩み相談が
絶えないのだった_
「王様、どうか私の悩みを聞いて下さい。
私は王国で1番上手に喉を鳴らす事が自慢で、鳴らし方を工夫しながら歌える様になりました。
その歌を皆が楽しみにしてくれます。
ところが、最近は上手に囀る鳥が側に来て歌うからすっかりと人気を取られてしまいました。
私の歌を取られました。
どうしたら良いのかと夜も眠れません。」
王様は口からポンっとトマトを出してお腹の下に置き言いました。
「歌を取られたとな。それはさぞ悔しかろう。
しかし、お前の歌はお前の物だ。真似は出来ても盗まれた様で盗まれては居ないのだ。人気を攫った鳥の歌を一緒に楽しみながら聴くのじゃ。
そしての、仲良くなるのじゃ。いろんな歌が聴けて皆はもっと喜ぶぞ。」
「取られたとばかり思い込んでおりました。
真似をされるとビックリしますが、私の歌は私の中で変わらずあると思えば安心出来ます。
王様、ありがとうございました。」
歌の上手な家来は鼻歌を歌いながら去って行きました。
次に現れた迷える相談者は_
「王様、どうか私の悩みを聞いて下さい。
私は誰よりも高くジャンプする事が自慢ですが、通りがかりの猫が塀から塀にと渡り飛ぶ姿に拍手が集まり誰も私のジャンプを褒めてくれなくなりました。」
カエルの王様はトマトを右の頬から左の頬へ動かしゆっくりと言いました。
「自分より高く飛べる猫に出会ったとな。それはさぞ悔しかろう。じゃがの、猫は猫を生きておるのじゃ。
誰かに褒めて欲しくて渡り飛んでいる訳では無い。
そんな時はの、『こんにちは』っと声をかけてみるのじゃ。『こんにちは』は魔法の言葉、気位の
高い猫もきっと止まって振り向くはずじゃ。
ジャンプは負けても、魔法の言葉で振り向かせる事は出来る。
カエルは高く飛べる猫を褒め、猫は自分から挨拶出来るカエルを褒めるって訳じゃ。
「挨拶は簡単過ぎます。高く飛べる方が難しい。
褒め合うなんて...出来る事の大きさが違うと思いますが。」
「挨拶は簡単か...。そうかな。」
王様はニコニコと笑いながらトマトを一つ悩める家来に渡した。
「貴重な一つを戴いて宜しいのですか_
ありがとうございます。」
家来は少し戸惑いながらも王様へ感謝の気持ちが溢れトマトを大切に抱えながら何度もお辞儀をした。
「それじゃよ。それ。
お前はもう一つの魔法の言葉『ありがとう』が心から言えるではないか。皆のお手本じゃ。」
家来の抱えたトマトに落ちた涙が弾けた。
王様はニコニコと笑いながら今日もトマトを探した出かけた。
自信を失った子供達や自信を忘れた大人のおやつ時間に読む本をイメージして書いてみました。