
お母さんの手 ①
ガタン ゴトン ガタン ゴトン
同じ単調の音と人混みに押され目に映るのは
人の重なる服と足元。
電車の人混みに踏ん張る少女の名前はミコ。
ミコは時々満員の地下鉄に乗り、お母さんの通院に一緒に通っていた。幼いミコにとって最大級の難関の中で救いは変形している母の手だった。
変形しているから握り方がわからない。
けれど、絶対に温かくて嬉しい感覚。
難関を突破すると次の巨大なピラミッドの様な階段を下りまた上がるミッションが待っている。
足の悪いお母さんと歩幅の狭いミコは、1番壁側で息の合った緩やかな速度で進む。
見事にミッションを終えて地上に出ると光が眩しくてまた下を向く。規則正しい正方形のデザインが無数にある巨大な高層ビルが立ち並ぶ。
次のミッションは風で踏ん張る事。
一歩進み3歩下がってしまう強風が纏わりつく。
ミコはここで、向かい風と追い風を学ぶ。
次なる風は目をいじめて来た。
目が開けられない。
ミコはここで、向かい合うビルの真ん中は風が強く舞う事を学ぶ。
ミコは風と闘いながら面白いと思う。
お母さんの病院まであと何分歩くのだろう。
ミコは時計がまだ読めないから考える事を
辞めて無心で歩いた。
つづく