熱と白昼夢/るぅと
8月3日、蒸し暑い夏の日に投稿された
るぅとくんの新オリジナル曲「熱と白昼夢」。
これまで るぅとくん からたくさんの想いを音楽という形で受け取って来たけれど、こんなにも歌詞が心に溶け込むように感じたのは初めてでした。
だからこそ感じたことを出来るだけ鮮明に残すため、
この場所で綴っていこうと思います。
この曲の存在が初めて公開されたのは7月7日、
るぅとくんのInstagramのストーリーでした。
作業中のパソコン画面と一部分の音源、
そして添えられていたのは「夏」という言葉。
聴いた瞬間から全身を何かが走るような感覚。
白昼夢というふわっとした言葉と落ち着きの
ある幻想的な曲調、そして私の耳が拾ったのは
"白昼夢だった。まだ子供でもいい" という歌詞、
私はこの曲のわずかな要素から十三年彗星に近いニュアンスの曲なのかなとイメージしていました。
それからあっという間に27日が経過し、
8月3日、「熱と白昼夢」が投稿されました。
メロディは想像を遥かに超えた、アップテンポで疾走感のあるシンセサイザーメインのサウンド。
シンセサイザーで作られた様々な音が組み合わさったメロディは、まるで違う世界に迷い込んでしまったみたいにどこか現実味がない、霞みがかってふわっとした透明感。
白昼夢ってこんな感じなのかな?と思いました。
そして彼の歌声はジリジリと照り付ける真夏の太陽のような芯のある力強さに、雲ひとつない澄んだ青空のような爽やかさを帯びていて。
彼の歌声とメロディだけでも「熱と白昼夢」は
形作られていました。
ここからは少しですが歌詞について📝💭
あくまで個人の意見ですので、"こんな考えもあるんだ~" 程度で軽く読んで頂けると嬉しいです。
まず参考にするのはるぅとくんのコメント。
これを踏まえこの物語を解釈していきます。
この曲は苦しんでいる高校生の時の自分を、
今を生きる彼自身が救いに行くという物語。
非現実ですが、それを叶えられるのが音楽であり
アーティストとしての彼の世界が輝く瞬間。
この楽曲では現在の彼と高校生の彼が、
同じ世界線で存在していることになります。
少し難しく感じますが、楽曲全体を通してるぅとくんは色んな言葉に置き換えて "僕" を柔軟に表現しているため、想像もしやすく受け取りやすい歌詞になっていました。
ここからは歌詞を少しずつ分けて見ていきます。
ここは、過去の自分を助けに行くことを決意し、
現在の彼が走り出すシーン。
包囲セヨ・始まっちゃいない・まだ息はしてるんだろ、全ての言葉の主語に当たるのが "あの熱"。
どこまでも夢中になれたもっと昔の自分が持っていたあの熱を取り戻そうと、諦めるにはまだ早いよと、苦しんでいる高校生の彼に向けて現在の彼が強く訴えかけている。
何も考えなければひらがなで表すことがほとんどの "せよ" という言葉が、硬さを表現するためか強調するためかカタカナになっていること、普段の彼の口からは出ない "だろ" という口調は、現在の彼が必死に過去の自分を救おうとしている様子や、過去の彼が抱いている苦しみの大きさを物語っています。
現在の彼が、自身の生き方を振り返る。
そして高校生の彼と対面する、そんなシーン。
生きていく中で何度も訪れる、
そして避けては通れない分岐点。
あの時こう言えていたらとか、思い切って挑戦していたらとか、もっと自分を大切にしてあげられていたらとか…。
今更になって気づく数え切れない後悔。
その後悔の数だけ、いやそれ以上にたくさんの自分の可能性を殺めてしまったことへの罪悪感が現在の彼から強く滲み出ています。
この部分で高校生の彼は "夢見る少年" という
明るい印象を受ける言葉で書かれていますが、
対照的に彼の目が持っているのは恨み。
そしてその恨みがましい目に映るのは現在の彼。
今更だけど、今だから気づけたことでもある。
だからこそ恨みがましく思ってしまう高校生の彼の気持ちも、そんな彼を見て大きな罪悪感を抱いてしまう現在の彼の気持ちも痛いほど共感できます。
高校生の彼の苦しみが描かれているシーン。
自分を探しに来た現在の彼を見て、
奥底にあった気持ちが溢れ出したような言い方。
汗ばむほどの晴れ。
そんな陽気なのに感じるのは、
" 鬱陶しい "
ただそれだけ。
夏がどれだけ暑くてもそんなこと気にせずに好きなことをして遊んでいた、そんな無邪気な自分はどこへ行ってしまったんだろう。
一体いつから、あんなにキラキラしていて眩しかった太陽を、あの暑さをただただ鬱陶しいと思うようになっていたんだろう。
そんなつまらない人生、いつから…?
実際、私もあまり笑えない人でした。
毎日が辛かった訳でもいじめられていた訳でも友達がいない訳でも無かったけれど、充実感は全く無かった。
だからこそ同じ今をすごく楽しんでいる人を見ると、なんだか無性に虚しくなってしまう。
晴れた空を見て気分が上がることなんてなくて、
逆に自分の感情の冷たさを実感させられる。
きっと高校生の彼には現在の彼が眩しく見えたんじゃないかな…
高校生の彼の苦しみがよりリアルに伝わってきます。
高校生の彼と現在の彼が教室の一角で
互いの気持ちをぶつけ合っているようなシーン。
前半の歌詞は現在の彼の目線、後半は双方に重なりますが、どちらかと言うと高校生の彼目線になっているように感じました。
熱を取り戻し今を生きている現在の彼は、
冒頭でも歌っているように高校生の彼からあの熱がまだ消えていないことや、熱の取り戻し方になんとなく気がついているのではないかなと。
だとしたらこの後半部分のフレーズ、
"まだ息があるって言うんなら ただ信じたい" は
高校生の彼の葛藤を描いている。
おそらく彼は、自分の人生を俯瞰してしまった以上あの熱を取り戻すことなんて不可能だと思っている。
しかしそれと同じくらい、現在の彼が言うように本当にまだ息があるというのならその言葉を、そして自分自身を信じてみたいとも思っている。
しかしこの時はまだ進み方が分からない。
信じたいけど、じゃあどうしたらいいの…?みたいな。
現在の彼が高校生の彼にそっと語りかけているようなシーン。
ラスボスみたいな太陽すらも気に留めないくらいあの頃の君は自分の好きなことに真っ直ぐで、自由気ままで身勝手な未来図を手に理想をいっぱい並べて夢を語っていた。
そんな熱を見失う前の彼の姿を表しているのが "わがままなヒーロー"。
在りたい理想の自分に対して、まだ動けずにいる高校生の彼。
そんな状況の彼にとっては少し酷な言葉かもしれないけれど、それだけの突き動かす力が宿っている言葉たちだとも思います。
過去の自分だからこそかけられる言葉。
"刺すように春を喰らう" と夏の日差しの強さや鋭さを表したあとに "気づかないほどあの日君は夢中で" と続くことで、
『 春 < 真夏の太陽 < わがままなヒーロー 』と
一つ一つの言葉にだんだんと立体感が生まれていくのが本当にすごい。
彼の言葉選び、そして情景描写のセンスにも惹かれた歌詞です。
1番同様、おそらく高校生の彼の言葉。
1番の歌詞と比べると、より具体的に。
汗を拭うことも忘れるくらい、そんな暇もないくらい夢中になれることがあるのって本当に素敵なことだなと、私も今だから思います。
昔の彼は、汗を頑張った証みたいなものだと
思えていたのかな…
現在の彼の心の叫びにスポットが当たるシーン。
自分への戒めのような、罪悪感に塗れた数々の
皮肉な言葉たちが印象的です。
苦しいとわめく過去の僕。
そんな自分に見ないふりをした。
そして今、僕は過去の僕が描いていた
あの未来を踏み躙って息をしているんだ。
自分自身に投げる言葉だからこそ、
直球すぎるこの歌詞は苦しくて堪らなかった。
それでも、優しくて責任感も人一倍強い彼だから書けた歌詞だと思っています。
自分のことは二の次、いつも誰かのことを優先に考えていて、不器用だけど誰よりも優しくて思いやりのある温かい彼だからこそ。
それに何よりこの歌詞、すごく生々しくて。
現実と重なる部分が大きいんです。
例えば、あなたが行動に出て失敗してしまった。
そのあと自分の行動を振り返ることになった時、
"あの時こうしていれば" という後悔にばかり意識が向いて、"じゃあ次はこうしてみよう" と考える所まで辿り着けず自己嫌悪に陥ってしまったことはありませんか。
過去は変えられないから、代償が大きい。
未来へ繋げることが大切なのはもちろんですが、
変えられる未来と変えられない過去と考えてみると、
私は過去を慎重に大切に扱ってしまうだろうな…
今を生きる彼は、過去の彼が手にしていた未来図の重さを痛いほど理解しているからこそ、そして責任感が強いからこそ代償を大きく背負いすぎてしまったんじゃないかなと感じる歌詞でした。
P.s.
ここは高校生の彼の言葉とも受け取れます。
でもあまりにも皮肉だから、現在の彼の罪悪感が膨れ上がっているような描写なのかなと…。
それに私の中では、高校生の彼はそこまで現在の彼を恨んでいないように感じました。
どちらかと言えば恨みより羨み。
このように考えたとき現在の彼の罪の意識があまりにも大きいと感じたので、今回は現在の彼の心の叫びとして受け取りました。
言葉の意味を調べていく度にどんどん物語が
膨らんでいく情報量が多すぎる歌詞。
中でも気になる5つの言葉の意味を、
曲の解釈と交えながら考えてみました。
・亡霊 ⋯ 死者の霊 = "あの時死んだ僕"
・胸を打つ ⋯ 感動させる、熱くする
・冷めた太陽 ⋯ 高校生の彼から見た太陽
・長い ⋯ 現実の時間としての長さ
・永い ⋯ いつまでも記憶として残ること
高校生の彼の心を熱くさせたのは太陽だった。
そして現在の彼は今まで白昼夢を見ていたことに気が付きます。
そもそも白昼夢とは、目が覚めているときに空想や想像が視覚性を帯びて現れ、それにふけって放心状態になること。
そしてその内容のほとんどが、その人自身が持つ願望からできているそうです。
あの熱を見失った高校生の彼を助けたいというその "願い" は白昼夢の中で終着点に辿り着いたため、現在の彼は白昼夢から覚めたのではないかと考えます。
そして " まだ子供でもいい " という言葉は、
罪悪感に苦しみながらも現在の彼が絞り出した
過去の自分へのメッセージ。
ここまで来たら、あとは現在の彼の行動次第…
物語もいよいよクライマックス。
一つ前に "長い永い白昼夢だった" と言う歌詞があることから、現在の彼は白昼夢のことを認識していて、"まだ子供でも良い" これこそが答えだと気づいているのかなと考えました。
これ以降は、白昼夢から目覚めた現在の彼の行動と心情にスポットを当てて語られています。
置き去りにした過去の自分にごめんねと言うことしかできない現在の彼。
そして "今度は連れ出すから" と約束を交わす。
現在の彼が辿り着いた、意外と簡単だった答え。
その答えが出た以上、高校生の彼があの熱を完全に取り戻すまで逃げずに向き合うという覚悟を感じられるのが、強引に突破するという意味を持つ "抉じ開けて" 。
一度見ないふりをしたことで心の奥底にしまい込んでいた、熱を見失う前のあの気持ちを必死に引き上げようとしているように感じました。
気づかないふりをしたあの日から、
彼は変わらず今もそこにいた。
白昼夢から覚めてもなお、
心の中で2人は共存しています。
白昼夢という架空だけど壮大な物語の中で
罪悪感に苦しんだ現在の彼と、
進み方が分からずにいた高校生の彼。
悩みもがきながらも、現在の彼は過去の自分を救いあの熱を取り戻した彼の持つ感情を忘れずに一緒に生きていくことで償い、そんな彼の手に引っ張られて高校生の彼はまた陽の元で笑うことができるのだろうと思います。
熱を見失っていたあの頃の気持ちも、
取り戻してからの気持ちも胸に刻んで。
互いの抱いていた気持ちを大切にしながら
未来へと歩んで行くその姿を描いた言葉が、
"やっとまた会えたね" 。
夢中になれず苦しむ過去の自分を救うため、
現在の彼は白昼夢を現実へと繋げました。
現在の彼も高校生の彼も、
またやってくる真夏の青々と澄んだ空の下で、
太陽を見て笑えているようにと心から願います。
今回この記事を書こうと思った理由は2つ。
-1-
私は今まで考察を楽しめる曲を彼から受け取った時、毎度の事ですが内に込められた意味を汲み取ることにものすごく時間がかかってしまったり、一部分だけ腑に落ちるように解釈することが出来ず一曲として全てを理解しきれないことが多々ありました。
だからこそ浸透していくように解釈できたこの曲は私の中で思い出の一曲になっているので、今回この場所に書き留めてみようと思いました。
- 2 -
受け取った時のこの感覚を、この曲を聴いて私の中に湧いたこの感情を忘れてはいけないと思ったから。
この曲で描かれた高校生の彼の葛藤は、良くも悪くも私自身と重なる部分があまりにも多くて。
だからこそ、この物語の中で現在の彼が高校生の彼を救ったと同時に、私も心底救われていました。
すくい上げてもらったこの感情を大切に、
これからもるぅとくんと過ごしていきたいな。
今回は一つの物語として受け取りましたが、
他にもまだ気づけていないもっともっと奥深くに込められたものがあると思っています。
るぅとくんの創る音楽の世界は広くて深いから。
この先も彼がどんな景色を見せてくれるのか、
どんな感情を共有してくれるのかすごく楽しみ💭
映画一本分以上の満足感でした。
またいつか音楽の話を此処でできたらいいな。
最後までお付き合い頂き有難うございました🌼
2023.10.19 6,200 characters 〰✍🏻☀️