(相場脳トレーニング💫)トランプ新大統領が仕掛ける日本のレジームチェンジ
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来週、米国新大統領の就任式が迫っております。トランプ新大統領は、自らが目指す秩序を目指して、世界に対して、過激な”挑発”を行っています。トランプ氏は、日本の政治・経済への思い入れがあり、日本における親トランプ政権の樹立に向けて、なんらかの”仕掛け”を行ってくる可能性があると考えています。考察のヒントになったのは、新財務長官ベッセント氏の経歴です。
本年、2025年前半の日本株・日経平均は、米国のインフレ懸念等により上値の重い展開を予想していますが、日米の相互の政治動向によってさらに不安定なものとなる予感がしております。本稿は、日米要人の人的な要素にも触れながら、日経平均株価のリスクをクローズアップして見ました。1971年のニクソンショックまで遡りつつ、昨年の令和版ブラックマンデーも詳しく検証し、相場読みのヒントとなる材料も集めました。米系ヘッジファンドのマネージャーになって、日本の政治状況を考察してみてください。
*市場に精通しておられる方は、4章あたりから読んでいただいてOKだと思います。
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1米国のインフレ懸念 最近のマーケット状況
まず、最近のマーケット状況を簡単に整理します。米国のインフレ懸念と長期金利の動きが日米株価の上値を抑えております。
👇米国長期金利の動き
☝️米国債券市場では、昨年末以降、長期金利の急上昇が顕著なものになってきます。特に1月10日発表の雇用統計で、10年国債利回りは、昨年来の最高水準に達しました。経済と雇用が堅調なことにくわえて、トランプ新大統領の経済政策とその影響が不透明なことであります。つまり、同氏の従来からの主張である国内向け減税や対外関税引き上げおよび移民の流入制限が、米国の今後のインフレ率にどのような影響を与えるかについて、市場の警戒が続いております。
👇米国株式の動き
☝️米国の株式市場も11月の大統領選挙トランプ氏勝利からいわゆるトランプラリーあって、S&P500が一時6100ℙまで上昇しましたが、今は長期金利の上昇で、いくぶん調整地合いとなっております。
👇日本株式の動き
☝️日経平均株価も、トランプラリーの一環で4万円超える場面もありますが現在は38,000円台で推移しています。
2トランプ新大統領の野心 グローバリズムとの闘い
ここでは、トランプ新大統領の目指すところについて見て行きたいと思います。トランプ氏の信条は”MAGA”とよばれ、米国の伝統的価値の復元、米国産業の復活、反移民、国内治安の回復、小さな政府を主軸とするもので、国境を越えて政治、経済、文化がつながっていくべきとするグローバリズムと著しい対立軸にあります。
トランプ氏は、特に大統領選挙勝利のあと、グローバリズムへの敵対心をあらわにしています。それは、世界の新しい秩序への意欲と見えます。近隣のカナダ、メキシコに対する追加関税だけでなく、カナダの合衆国加盟、メキシコ湾からアメリカ湾への呼称変更、パナマ運河の領有、など暴言とも聞きとれる発信を行っています。
ヨーロッパに対しては、違った形で揺さぶりをかけているようです。グリーンランドの購入をほのめかしたほか、イーロン・マスク氏も、ドイツ、イギリスに挑発的な口撃をしかけています。米大統領選挙を大勝した余勢をかって、ヨーロッパの有権者たちに煽情的な訴えをしているのでしょう。彼らの狙いはユーロの解体かもしれません。
日本に対しては、どうでしょう。いまだに、表立っては、なにも仕掛けてきておりません。日本は、取るに足らない存在になったのでしょうか。
その前に、グローバリズムの淵源について、簡単に俯瞰しておきましょう。約30年前1989年に、ベルリンの壁が崩壊し、1991年には、ソビエト連邦が崩壊しました。東西冷戦の終了により、ひと、モノ、カネの動きが自由になってきました。中国も、鄧小平(1997年没)の改革開放路線を受け継ぎ、イデオロギーより経済成長を力を注ぎました。国土を開放し技術を取り入れ生産能力を高めることに邁進しました
こうした中、欧米の企業は利益追求のために安価な労働力として海外からの移民を活用しました。これがグローバリズムの一連の流れにつながっています。グローバリズム遂行の代表的な人物はドイツのメルケル首相(在2005~2021年)です。自国の産業競争力を高めるために中国と経済関係を強めるとともに移民の流入を進めました。ドイツは、ユーロの盟主ともいうべき存在になりました。
時代を経て、中国は大成長を遂げ、ドイツ国内では移民増加の弊害も目立ち始め、今では中国との経済関係も移民流入についても国内で反メルケルの感情が湧きあがっております。
ここで述べておきたいのは、中国の立場は、グローバリズムと親和性がある、ということです。中国の覇権主義は、世界市場をその供給力で席巻することで世界を支配することで、太陽光パネル、風力発電設備、そして今度はEVで狙っています。市場や国境が開放されていれば、その支配力を広めることができます。一方、中国は農村に豊富な労働力を抱えているため、移民をどうしようかという問題に悩まされることはありません。
トランプ氏が、グローバリズムを目のかたきにするのは、中国の市場浸食力を警戒しているという側面もあるかと思われます。
トランプ氏のこころのなかに分け入ってみましょう。いま、彼のこころのなかにあるのは、世界の体制転換=Regime Change です。
3日本政治の地殻変動の可能性
さて、日本においては、現石破政権は、グローバリズムのスタンスをとっております。前岸田政権も基本は同様でした。岸田政権は、微妙なバランスに長けていましたが、現石破政権はより無警戒に中国寄りに傾いております。岩屋外相は昨年末に中国訪問し、観光ビザの大幅緩和を約束してきました。一部から大きな批判を受けております。
まず、日本の現在のグローバリズムの基盤は、まず経済界の一部にあると考えられます。多くの経営者は米中対立の環境下でも中国大陸で利益をあげるということに関心を持ちまだそれが可能であると考えています。また国内のインバウンド業者も中国の観光客がさらに増えることを望んでいるでしょう。中国人65歳以上の高齢者の入国が在職証明なしに許可され、医療ツーリズムで日本を訪れる中国の方が多くなることが予想されます。日本の多くの医療機関も利益を受けることになるでしょう。《わたしの知り合いの医師は、中国の方の医師への要求度は高く勘弁してほしいと言っておりますが》不動産業界も、高額マンションがキャッシュで高く売れるからウハウハかもしれません。
次に移民ついては、多くの企業、例えば建設業の経営者も移民を増やすことに賛成していると思われます。人手不足倒産がこれだけ多発している現状です。ただし最近亀田製菓の社長が移民を増やすべきだと述べて(12月16日)ボイコットが起きたように、日本の経営者やその団体は表だって移民政策支持とは言いません。
こうした利害関係がグローバリズムや中国傾斜の経済的背景で、より矮小化した言葉を使えば、”利権”にほかなりません。
一方、一般的な国民はグローバリズムによって恩恵を受けるとは限りません。中国人の医療ツーリズムによって一般の日本人が医療受けられなくなったり、移民の増大によって治安が悪化したり、自分たちの賃金水準が上昇しなくなったする可能性が高い。また、家賃高騰で、東京の都心に住めなくなっていくかもしれません。ネットを中心に、不満や不安が日々ボリュームを高めているという現状です。
米国のトランプ陣営は、この日本の国内事情はよく把握してると思われます。決して、日本は眼中にないということでありません。
先週末、岩屋外務大臣が、1月20日の大統領就任式の招待状を受け取りました。通常の就任式は、在米大使しか招待されませんが、異例のことです。ネット上では、この招待の意味、岩屋外相の対応で、様々な観測を呼んでおります。
外相が何かの理由をつけて、訪米を辞退する、米国に到着した時点でスパイ容疑で拘束・逮捕される、ルビオ次期国務長官との会談をセットできなくて恥をかいて帰ってくる、などなどです。いずれも、石破内閣にとってはダメージで政局に発展する可能性もあります。
安倍昭恵夫人が、12月15日、トランプ大統領に、マール・ア・ラゴの招待されました。そのときに、トランプ夫妻と親密な会話がなされましたが、麻生最高顧問の腹心である元衆議院議員が同席してとの話が伝わっています。自民党の保守派がトランプ氏と日本の政権交代のすでに密約をしてる可能性もあります。
安倍昭恵さんは、石破首相とトランプ氏の会談をセットしましたが、石破氏から政権が発足してから十分に準備してから臨むということで、2月に先延ばしとなったと伝えられています。このふたりは会談を行なう意思はあるのでしょうか。
一方、麻生氏がキングメーカーだと仮定して、だれを次のキングとして、ノミネートしているのであろうか、高市氏であるという見方もあるし、党を割って、国民民主党の玉木氏との説もありますね。マスメディアでは林芳正官房長官との観測が多いが、トランプ氏を満足させるにはいかがでしょう。
あとひとつ、その新しいキングは、7月の参議院選挙に勝てる人物でなけれなりません。場合によっては、この人物が衆議院を解散して衆参同日選挙で勝って、確固たる親トランプ政権が誕生すれば、トランプ氏にとって最上の結果となるでしょう。
イーロン・マスク氏は、欧州で声を上げていますが、日本についてはほとんど発言しておりません。自らが主宰するXで、日本の世論の分析を行っている可能性もあります。
4トランプ新政権の仕掛け S.ベッセントの戦略
以上のような国内外の情勢で、トランプ氏が、自民党内の政変、つまり石破内閣の退陣を仕掛けてくる蓋然性が高いとみられます。アメリカ合衆国が外部から日本にクーデターを仕掛けてくる可能性です。そして、これが可能であるということです。
その仕掛けは戦略的で、タイムリミットは章7月28日の参議院選挙だとみております。そして、タイミングは、日本の政治状況と、6章で述べますマーケットの”地合い”に依存します。
目先では、岩屋外相が、来週の訪米から手ぶらで帰ったすると、政権にとっては、それだけで大ダメージでしょう。2月に石破首相=トランプ大統領の首脳会談が実現しないことで、特に、日本の経済界に不安が走ります。日経平均は揺らいでいくでしょう。
経済界は、中国に利益を求めていますが、その利益は質量ともは、米国に比べてかなり劣ります。安倍政権下、日本企業は米国企業に多くを投資してきました。日本企業のカネと技術の核心的利益は、中国では米国にあるのであるのです。例えば、企業買収や技術の提携に関する法的な保障という点で、中国企業はあてにできません。アメリカ経済は、製造業、非製造業問わず、三菱UFJ・FG、三井不動産、三菱重工業、リクルート、日立制作所、東京海上、第一三共といった、日本の中核的企業の共通の存立基盤です。中国に関する利益は、狭い業界利権なのです。
また、日経平均株価が暴落して、3万円を割れてさまよえば、投資家の損失だけでなく漠然とした不満になり、大半の国民は無能な政権という烙印を捺すのです。株式価値の毀損は、個々の利権をはるかに上回る国富の損失です。このことを理解している日本の政治家はどれだけいるでしょう。安倍政権が長く続いてきたこと、岸田政権が約3年続いたのは、彼らが国富を増やし続けたからです。
前岸田政権は、この大枠は外さず、各方面の利益配分にうまく配慮しながら、中国権益筋ともうまくやってきました。長く続いた。安倍政権も同様です。
現在の石破-森山政権は、特殊な利益に利益誘導に傾斜している感があり危険です。それ以前にすでにガバナンス能力を失って迷走している感があります。トランプ陣営はこのことをよく理解しているでしょう。
トランプ氏は危険な暴君ではありますが、冷酷な独裁者ではなく情が厚い人物です。ここに米国の民主主義から出てきた必然性があります。彼は、日本の政治に思い入れがあると思われます。親愛なる安倍晋三氏への思い出から、日本に親トランプ政権が誕生して欲しいと思っているのでしょう。
さて、ここで、重要な人物が出てきます。
新しい、財務長官に指名された、スコット・ベッセント氏(1962年~)です。《LGBTでジョンという夫がいます》
ジョージソロスの懐刀で、1992年のポンド危機を仕掛けました。わずか30歳のときです。2012年のアベノミクスでは、円安投機で、巨額の利益を獲得したと伝えられています。日本の政治・経済に造詣が深く、アベノミクスの三本の矢からヒントを得て、米国版「3-3-3」(財政赤字GDP比3%、石油生産300万/D、GDP成長率3%)のキャッチフレーズを財務長官指名時に提示しました。現在はトランプ新政権の関税引き上げ政策を入念に検討していると伝えられています。日本の今の政治状況もよく理解していると思います。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-25/SNHOHRT0AFB400
さて、トランプ新政権が、日本の政治状況に業を煮やし、本格的に劇薬を使うとしたら、対日追加関税の発動でしょう。
日本の対米輸出額は、現地生産が進んだ今も10兆円を超えていて、日本の企業にとっては大きなダメージとなります。トランプ氏は、大統領選挙戦終了時に、"Tariff, It’s the most beautiful word."と述べたことは有名ですね。
ただ、トランプ氏の関税プランは、今米国の長期金利の上昇という副作用を生んでおります。ベッセント新財務長官は、むやみな追加関税発動は、いたずらに長期金利を上昇させて、株価や景気を悪くさせる可能性も十分理解してると思います。
さて、米国の経済学には、古くから、Political Cycle (J.ブキャナン、N.マンキューなどが提唱)という概念がありました。当選の翌年は多少景気が悪くても、大統領選挙の年に合わせて景気が次第に良くなって行くのが望ましいとされてます。初年度は前政権のせいにできるからです。したがって、2025年は、景気に関して過度には神経を使わず、トランプ氏は、関税を使って、世界秩序に再構築、Regime Changeに向かっていくものと思われます。
そのメインのターゲットは、中国ですが、ユーロ圏も優先順位は高く、トランプ氏は、ここではメローニ(イタリア 1977年~)さんというベストパートナーにめぐり会えました。中国以外のアジアでは、日本は、今は韓国やインド、その他のアジア諸国よりも重要だと考えられます。
トランプ氏は、追加関税を使って、日本のレジーム・チェンジを仕掛けてくる、この仮説が成りたつとして、日本に対して、追加関税措置発動という劇薬を使うのは、いつになるでしょうか。
1月13日の日経新聞朝刊に興味深い記事が載りました日本製鉄のUSスティル買収取り下げ期限を2月2日から6月18日までとしました。深読みすれば、この日までに、日本に親トランプ政権が誕生すれば、買収を認めてもいいとする、トランプディールの一端かもしれません。
来週から始まる通常国会は、会期末が6月22日です。会期終了を待って退陣との見方も多いですが、トランプ氏はここまで待たないと思います。
《日本の総理大臣の退陣は確かに年後半、特に9月が多いですね。通常国会会期中の退陣は、2001年4月の森喜朗前首相のえひめ丸事件後だったような記憶があります。》
トランプ=ベッセントの戦略は、追加関税を使って、日経平均株価を暴落させ、早期に、日本のレジーム・チェンジ、つまり、日本に親トランプ政権を樹立することだと考えます。
前述したように、ベッセント氏が、大きな為替投機を仕掛けたのは、1992年のポンド危機と、2012年のアベノミクス開始の年です。1992年のイギリス・サッチャー政権は、これを機にEMS(欧州通貨制度)から離脱しました。2012年の円安も、ここから日本は本格的なデフレ脱却に乗り出すことになります。これは、相場を使ったレジーム・チェンジは、ベッセント氏のいわばお家芸です。
5対日追加関税の日経平均へのインパクト ニクソンショックに遡って
まず、今年の基本的な日経平均の相場感ですが、わたしは、今年前半に日経平均株価が、力強く上振れする要素はない、と思っています。米国の向こう3年くらいのインフレ見通しは不安定で、米国の長期金利は高止まりする可能性が高いでしょう。米株の上昇も抑えられると思われます。新大統領が初年度で景気にあまり配慮しないであろうということもその要因です。専門ではありませんが、AI技術革新も継続するのでしょうが、これまでの2年ほどの爆発力はなくなっているような気がしています。まだ、打ち出されてはいませんが、トランプ新政権の新たなる半導体輸出規制も心配です。
2015年前半の日経平均株価予想は、30,000~40,000円で、基本的には弱含みとみています。
👇(ご参考)2025年の日経平均予想(グリーンのラインは、Tariff Trickが使われた場合)のイメージです。
それでは、トランプ氏が日本に対して、追加関税を仕掛けてきた場合のシナリオを、この基本シナリオに組み込んでいきましょう。
過去の例として、かなり古いですが、1971年のニクソンショックのケースを考えてみました。この年の8月15日(日曜日の夜 日本時間の朝)に、当時の共和党ニクソン大統領は、金とドルの一時的な交換停止を突然発表しました。ニクソン大統領は、「アメリカが友人を助ける時代は終わった」と国民に訴え、交換停止と同時に、輸入課徴金10%と、90日間の賃金・物価凍結を発表しました。
これで、米国の圧倒的な経済力が支えていた、戦後のブレトンウッズ体制が終焉に向かいました。為替は、この年の年末のスミソニアン合意により、ドル(1ドル=360円から308円)に切り下げられ、1973年に3月には、完全に変動相場制に移行していきます。
《同じ1971年に、ニクソン大統領は、電撃的に中国との国交回復を宣言し、翌年に北京を訪問しました。これが第一のニクソンショックと呼ばれています。いまから50年以上前のことですが、歴史の必然とはいえ、両決断ともにいまのアメリカの繁栄を支えていると感じられます。》
下の図👇は、当時の米国の輸入額と、それぞれの課徴金対象輸入額の比率(工業製品が多い国ほど比率は高い、オーストラリアなどは農業品が主体のため低くなっている)およびそれぞれの国の米国向け課徴金対象輸出が輸出金額全体に占めている割合です。日本はメキシコに続いてダメージが大きかったようです。
次に、下のグラフは、ニクソンショックの、日経平均株価への影響を示したものです。ニクソン演説の翌8月16日には、日経平均株価は、約7%の下落を記録しました。これは1日の下落率で、8月中には最大20%の下げを記録しています。それからも、株価は低迷が続きました。ドルの切り下げへの心配がくすぶっていたようです。
👇1971年の日経平均
株価がニクソンショック前の水準に全戻ししたのは、この年の年末でした。12月18日に、ワシントンのスミソニアン博物館にて、先進10か国蔵相会議が開かれ、ドルレートの切り下げ(1ドル=308円)が決まり、併せて10%の輸入課徴金も撤廃されました。この4か月間の動きは、今回のトランプ追加関税におけるシミュレーションの参考にできます。
8月16日の7.7%の下げは、単日ではこれまでの10番目の下げでしたが、8月では最大約20%下げており、現在の38,000円の日経平均でいうと、3万割れギリギリとなるようなマグニチュードです。
👇日経平均1日での下落率ランキング
それでは、今日に戻って、トランプ=ベッセントの追加関税政策のプランを解読していきましょう。米国の貿易統計において、輸入総額は3兆ドルです。これは、日本のGDP=4兆ドルの3/4に匹敵する額で、膨大な金額です。米国内の痛みは伴いますが、トランプ政権はこの3兆ドルを、世界秩序再編の武器に使うつもりです。前回の大統領任期(2016年~2020年)のときに使えることを身に滲みて感じたのでしょう。"Tariff, It’s the most beautiful word." はここから来ています。
中国からの輸入額4,300億ドルは、米国輸入額全体の14%を占め、これは中国のGDPの2.3%です。例えば10%の関税で、どれくらいの影響があるか分かりませんが、一部の製造業は大きなダメージとなるでしょう。中国の経済データはGDP統計など難しいところがありますね。ただし、これで失業率がさらに上がれば、中国共産党にとって痛手となります。現在、中国は、石破政権にさまざまな働きかけを強めており、同政権も呼応しております。
《日本の岩屋外相は相の1月13日から韓国を訪問しましたが、これは中国政府の意向を受けて、日中間のFTA自由貿易協定を締結する地ならしをしているという見方もあります。中国政府はトランプ関税をかなり畏れている可能性があり、日本市場をさらにこじ開けて、その安い工業製品を売ろうという考えです。》
上の表☝️で、日本からの輸入額は、1500億ドル程度で、日本のGDPの3.6%に相当します。
下の資料👇は、2019年の日米貿易協定で合意したもので、日本の産業界の利害関心が高かったものが挙げられています。すでに撤廃や削減が実現したものもあるとみられますが、トランプ新政権が再び復活や引き上げを宣言してくる可能性があります。これをやられると、税率にもよりますが、日経平均株価は、相応のダメージを食らうことになります。ベッセント氏は、いま米国商務省と連携してこのシミュレーションを行っているのでしょう。
日本に対して、トランプ=ベッセントによる追加関税ショックが仕掛けられると仮定して、あらためて、時期はいつか、そのマグニチュードはどれくらいかになるかということです。
前者については、費用対効果で、米国株への副作用が小さくて、日経平均のダメージが最も大きいときです。次章で、昨年8月の日本株ショック=令和のブラックマンデーをひとつの参考として見ていきましょう。
6令和版ブラックマンデーのヒント
次のグラフ群は、ニクソンショックから53年後、2025年の夏に起きた”令和版ブラックマンデー”です。
👇8月5日前後の日経平均株価
☝️令和のブラックマンデーの引き金になったのは、前週7月31日(水)の日銀の決定、つまり政策金利の0.25%への引き上げと、日銀植田総裁のタカ派発言です。日経平均先物は、その夜のNY市場から大きく崩れ始め、木曜、金曜と加速し、翌月曜日にブラックマンデーを迎えました。これは、日経平均の先物価格で見ていますが、最ボトムは、5日の日中の30,300円あたりです。日銀の利上げ発表から21%の大幅下落でした。
👇8月5日前後のドル円レート
☝️ドル円レートの動きですが、7月31日の米国市場、8月1日(木)の早朝に、米国のFOMCが開催され、パウエル議長は9月利下げの道筋をかなり明確に示しました。日米金利差縮小への思惑から、ドル円は、週末に150円を割り、週明けにかけて下落が加速していきました。ブラックマンデー当日には、日中141円台をつけ、このあたりが底になりました。日銀の利上げ決定から、ドル円は8%の大幅下落です。
👇8月5日前後の米国株式
☝️参考に、米国市場も見ておきましょう。ここも無事ではなかったようです。最初はFRBのスタンスを好感していましたが、木曜日の23時ザラ場寄りから大きく崩れ始めました。安値は5月のプレマーケット21時頃に、7%安まで売られました。ただし、米国株の下落は、日銀の利上げというより、米国のリセッション懸念が働いたように思います。失業率が一時的に上昇し、サームルール《失業率が一定の幅で上昇するリセッションが進行するいう経験的学説》がトレンドになった時期です。米国の株価は、その後、ISM指数の改善などで持ち直していきました。
この経験から、ベッセント氏が学んだことは、植田日銀が”市場との対話”に得意ではないということでしょう。10月に石破政権に替わってから、すべてに関して危機管理能力がさらに低下していることも理解しているでしょう。政権を転覆するのに、現在では暴力は必要ありません。グローバルマーケットは、現在最大の暴力装置です。米国政府は、民主党も共和党もこのことを理解しています。クリントン民主党政権の財務長官は、R.ルービン氏(在1995~1999年)で、ゴールドマンサックスの凄腕のトレーダーでした。日本人にもこうした人材が必要ですね。べッセント氏にとっては、現在の政府・日銀は、”赤子の手をひねる”ようなものです。
次に重要なことは、米国の債券市場、つまり長期金利への配慮です。前段で申したように、関税の引き上げは、米国内のインフレ懸念を引き起こし、長期金利を押し上げ、最後には、株価や景気にダメージを与えます。
新トランプ政権の追加関税策は、ニクソンショックのときのような、各国一律10%のような一斉実施にはならないでしょう。わたしは、国、地域に対して、国別で、時間差を置いて、個別に発動してくると思います。今は、米国商務省が、国別・品目別に細かい準備をしているのでしょう。中心課題は、対中国で、徐々に関税で締め上げて、半導体輸出規制などとともに、中国の産業を弱体化させることです。
それに対して、日本への措置は時限的措置かもしれません。日本に親トランプ政権が誕生することで追加関税完全撤回→日経平均全戻しというシナリオが、浮かび上がってきます。
👇下の表は、2025年のFRBのFOMCの日程です。
ベッセント氏が、対日追加関税で、仕掛けてくるとしたら、米金利の下がっている地合いのタイミングです。そのときは、円高が進み、しかも長期金利低下で米国株への副作用も抑制できます。8月の令和ブラックマンデーの際には、7%の円高で、日経平均株価が20%下がりました。追加関税の発動の時期に、米国政府の要人、例えば、トランプ新大統領が自ら「対日貿易赤字は許容できない」などと発言すれば、1日で7%くらい円高に行きそうです。米国金利の転換点、例えば、雇用統計、CPI、上掲のFOMC結果の発表後など、金利が行きそうな地合いの時は、追加関税発動の有力なタイミングですね。特に、FOMC後に注意しましょう。
例えば、日経平均3万円割れが、2週間続いただけで、石破-政権は持たないでしょう。ベッセント氏の緻密な頭脳では、いまこのような計算が張り巡らされており、インナーサークルの複数のヘッジファンドでは、すでに情報共有化されている事項だと思います。
7最後に
1万字を超えてきました。お疲れ様です。😮💨
株式長期投資の方、デイトレーダーの方、ぜひご参考にしてください。本稿は、決して相場見通しを述べるものではありません。”相場脳”のトレーニングに使っていただければ幸いと考えております。通貨と株式先物を仕掛ける米系ヘッジファンドのマネージャーになったつもりで、日本の政治状況を考えてみてください。
最後に、次の3点を付け加えたいと思います。
1.追加関税仕掛け時に、短期トレーディングで、どういう銘柄を売り買いすれば、ということがあるかと存じます。わたしも目下さまざまなシミュレーションを行っているところです。例えば、自動車セクターでは、米国現地生産比率が低い企業、工作機械や光学機器メーカーで米国への輸出比率が高い企業が、高いボラティリティーを発揮すると思います。
2.次に、国内の政局です。石破政権は追い込まれた場合、どういった行動をとるか、すんなり退任することはないかもしれません。すでに、彼の不安心からか、ダブル選挙とか、大連立とか、ほのめかしていますね。国内政局が完全に液状化して、すんなり親トランプ政権が誕生しない可能性があります。その場合、日経平均の低迷が長引くでしょう。今年の日経平均は、昨年以上に、日本の政局依存だと考えています。
3.最後に、米国側のワイルドカード、イーロン・マスク氏の存在です。彼は最先端の分野で様々な事業を行なっていますが、グローバリストの側面も持っています。中国でテスラ社の巨大な拠点を築いており、実際米国のMAGA派と、技術系移民を制限するかどうかで大きな対立を引き起こしているようです。👇FT記事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB088E90Y5A100C2000000/
マスク氏自身が、トランプ氏との関係で、グローバリズム的な志向をどこまで続けていけるのか、不透明ですね。これは、米国の政治経済のみならず、おそらくここ数年での世界最大の不確実性のひとつです。
日本に関しては、マスメディアや自民党員の間で、Xへの批判が相次いでいます。マスメディアはⅩが憎くくてたまりません。マスク氏はなにを思っているのでしょうか。石破首相や岩屋外相が毎日炎上していることは把握しているでしょうか。🤔
👇日本のX登録者数は、2004年で7300万人に達しております。普及率では断トツです。
最後まで、お読みいただきありがとうございました。
本サイトは、昨年から始め、毎日、日米の株式市場を、日経平均とS&P500中心に分析しております。今回のような大きな執筆があったときはお休みします。🙇♂️
将来的には、皆さまからの情報をいただき、共有化していくような、金融情報プラットフォームを目指しております。是非、フォローをお願いします。”マーケットの民”として生き残っていきましょう。
今回のテーマは、続編を出していくつもりです。
以上です
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