「メンバーの内発的動機を生む秘訣は? 」実践企業がアドバイス|質疑応答編
2021年12月14日、エール主催セミナー「個の力を引き出す組織作りと1on1」が開催されました。ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。
当日は、組織改革を推し進める実践企業によるお話に加え、参加者から質問をいただき、登壇者の篠田真貴子さん(エール株式会社 取締役)、村松浩義さん(ヤマハモーターエンジニアリング株式会社)、古川将寛さん(日本たばこ産業株式会社)がリアルタイムでアドバイスしていくパートもありました。今回はその「質疑応答」だけをまとめる形でお伝えします。 【編集部・奥澤】
(前編)JT、ヤマハモーターエンジニアリングの実践!「個の力」を引き出すコミュニケーション改革
(後編)「自律人材を育成する1on1」に必要な2つのアプローチ
改革推進者が理解するべき、ある事実
【お悩み】
メンバーに内発的な動機から行動を変えてもらいたいと思うのですが、“こうしたらうまくいった”というアクションや秘訣があれば教えてください。
古川さん:ある意味これが秘訣というか、ガッカリさせてしまうかもしれませんが……マジックソリューションはない、というのが僕なりの答えです。「劇的な変化」を生み出す方程式のようなものを探してしまうのですが、それはないんです。
あらゆる取り組みをしてきて思うのは、その事実を推進者である私たちが理解することが一番の秘訣じゃないかなと思っています。自分もチームメンバーの後輩たちに支えてもらいながら、また上司のサポートを得ながらなんとかやってきたのが実際のところです。さまざまな環境、いろんな施策のパーツを組み合わせたりしながら、地道にやってきました。
泥臭く地道にコツコツと。自分が率先して動き、トライし続ける…その先に少しずつ変化が見えてくるのだと思っています。
村松さん:私も同感です。浸透していくには、とても時間がかかりましたね。歯車が噛み合って動き出せば、どこかで一気に変わる場面はあるかもしれませんが、我慢強さというか、耐える部分も必要かなと。
あらゆる方面からネガティブな意見だったり、影の声だったりも聞こえてくるのですが、“絶対に良くなる”と諦めず、信じて進む。そんな感覚です。
篠田さん:お二人が悲壮感をもっているとつらくなるんですけど、その言葉とともに前向きなエネルギーを出してくださってるところに、組織を相手にしている感じが伝わってきます。
村松さん:意外と私の場合は弱みを隠さず、正直な気持ちを伝えるようにしていましたね。「これをやろうとして、悩んでいる」と見せたり、「自分もこういうことがあってね」と話す。周囲の気持ちと同じ目線に立つと、反発ではなく、共感を得やすくなるように思います。
篠田さん:なるほど、自分のワケありの部分も。確かに「組織変革を」って、いい方向に変えたいから「まず自分がいいお手本を見せなきゃ」と思ってしまう。それも大事ですけど、「そちらだけではないんですよ」というところが違いですね。ありがとうございます。
相手を変えようとせず、相手を信じて向き合う
【お悩み】
もう続けられない、と思った経験はありますか?また、その壁をどう乗り越えましたか?
古川さん:反発する人もいますから、衝突もたくさんあります。もういいや、この人たちは放っておこう…という気持ちになる。でも、立ち戻って考えてみると、私たちがやりたいのは「一人ひとりの意志を尊重し、個々がやりがいを感じられる組織づくり」なんです。
だから、賛同してくれる人たちだけを大切にするのではダメで、意見が違う人たちの「それぞれの想いや意志」も尊重していかないといけない。なので、私はこの前提があるから、あまり気にしていません(笑)。どれだけ怒られても、一人一人の個を尊重するための「対話」だから、と。そんな風に捉えています。
篠田さん:思った行動につながらないときほど、「聴く」を大事にされてるわけですね。
村松さん:ドライな話ですけど、人によって力の入れ方を変えているところもあります。完全に理解してくれる人、心から納得して動いてくれる人、ちょっとひっぱらないといけない人、全く反応がない人…それぞれの感情がありますから。
ただ意外と、ちゃんと話を聴くことをやっておくと、ある日突然、何かをお願いした時や何かの会話の時に「あれ? ちょっと違う一面があるな」みたいなところが見えたりする。またそれをフィードバックしてあげると、本当に少しずつなんですが、その人たちは上がっていけるんです。「聴く」ということは、その時間を作ってあげること。意見を聴くことは必要だと思いますね。
古川さん:そうそう。「聴く」の貯金を作っておくみたいなことって本当に必要だと思います。
村松さん:そう、そんな感じ。ただ「相手を変えよう」としない、は大事な視点だと思います。変えようとすると、相手も“支配される”と身構えてしまう。心を閉ざしてしまいますから。
篠田さん:確かに、「行動を変えさせる」「話を引き出す」といった何気ない表現には、相手を意のままに動かそうとする暗黙の前提を感じます。ちょっと違うかなと思っていたんですよ。そこをお二人は本当に繊細に嗅ぎ分けていて、「人は変わるけど、いつどう変わるかは、本人の都合、本人のタイミングである」と。私たちはそのための環境整備と、希望を捨てずに向き合い続けることは行う。でも結果については相手のこと、という自他の線引きを自覚的にされている話なのだ、と理解しました。
こうしてヤマハモーターエンジニアリングさんやJTさんを通じて、私たちも現場に携わる機会をいただいていることに、今日はあらためて感謝の気持ちを強く持ちました。今日は本当にどうもありがとうございました。
――エールでは2月15日、「個人の内発的動機を高めること」について、さらに考えを深めるためのセミナーを開催します。ぜひご参加ください!