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つい論破したくなる、1on1の効果が見えない…。組織の「聴く」悩みにアドバイス|【『LISTEN』記念セミナー 質疑応答編】

篠田真貴子さん監訳『LISTEN』発売を記念して、エールではセミナーを実施してきました。ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。

▼セミナー第1弾
D&I推進は、「聴きあう」から始まる

▼セミナー第2弾
「聴く」は、必須のビジネススキル(前編)
雑談・業務相談で終わらない。「1on1スキル」向上のヒントとは(後編)

セミナー内容については上記の記事で紹介しているのですが、他にも“皆さんにお伝えしたい”と感じているパートがあります。

それはセミナー最後の「質疑応答」。セミナーに参加してくださった方々からリアルタイムで質問をいただき、登壇者の櫻井将さん(エール株式会社 代表取締役)、篠田真貴子さん(同社 取締役)、内田修平さん(同社 プロダクト開発責任者)が回答。実際に部長・マネージャーとして活躍されている方が日々感じている「聴く」の悩みを、深く掘り下げます。

今回は、セミナーの「質疑応答」だけをまとめた形でお伝えしていきます。【編集部 奥澤】

組織の「聴く」悩みに、「聴く」のプロがアドバイス

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▲櫻井さん(左上)、篠田さん(右上)、内田さん(中央下)

【お悩み #1】 つい、論破したくなってしまいます

人と話をしているとき、異なる意見があるとつい論破したくなってしまいます。どうすれば効果的に聴けるようになるのでしょうか。そのマインドを教えてください。

【篠田さんからのアドバイス】
初めの質問は「相手の意図を聴く」と決めてみる
この気持ち、本当に分かります。私も同じタイプです(笑)。その上で、私は一つ決めたことがあります。それは、まず何よりも先に「相手の意図を聴く」を実践すること。もちろん、内心ではいろいろ思うことはありますよ…でもそこはグッと我慢(笑)。初めの質問は、「どういう背景でそう思うようになったのか、もう少し聞かせてください」と言うことに決めたんです。『聴く』は自然にできるようにならないと認めて、トレーニングを積んでいます。

【内田さんからのアドバイス】
コンディションによって、聴ける/聴けないは変わってくる
ご質問の中に“マインド”という言葉を使われていましたが、この“マインド”って、自分の考え方を表していて変化がないようなものとして捉えてしまいがちなのですが、実はコンディションによって大きく変わるものだと思っています。当然ながら、気持ちが整っているとき/整っていないによって、聴ける/聴けないも変わってくるんですよね。なので、自分が「聴ける状況」について探ってみるのも解決先の一つになるかもしれません。

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【お悩み #2】 部下の話を聴いても、全てに応えられないことが

部下の話を聴いて要望を引き出したとしても、その全てに応えられないことがあります。もしくは、自身の意見として「応えるべきではない」と思う場面も…。どう対応するのがよいのでしょう。

【櫻井さんからのアドバイス】
■ちゃんと聴いてもらえると、それだけで満足度は高い
これは個人的な感覚ではありますが、たとえ要望を聞けなかったとしても、ちゃんと聴いてもらえるとそれだけで満足度が高いのではないか、と思っています。実際の体験としても、「話せてよかったです」と言葉をもらうことが圧倒的に多いなと感じています。

たとえば、部下から部署移動や海外転勤をしたいという希望に対して、本人のスキルが足りなかったり、そもそも会社の方針として難しかったりで希望が叶わないことはよくある話ですよね。そこに対して、本人の意図や考えを聴いて難しいという話をするのか、聴かずにNGを出すのか…そこには大きな違いがあります。自分のことを分かった上で答えてくれている、という感情が生まれるからです。

また、部署移動や海外転勤をしたいという話から、なぜそのように思うのか、何を満たしたいのかを聴いていけると良いと思います。もしかするとそれは新しい仕事にチャレンジしたいなのかもしれないし、責任ある仕事をしたいなのかもしれません。価値観を掘り下げていく中で、部下の希望を叶えられる方法を探っていく「対話」ができるのではないでしょうか。

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【お悩み #3】古い組織を「聴く組織」にするには?

D&Iや心理的安全性、エンゲージメントを重視している組織では、すでに風土として「聴く」ことが行なわれていて「聴く」組織を目指すことは容易だと思うのですが、旧来の組織を「聴く」組織にするには障壁があると感じています。

【篠田さんからのアドバイス】
■「聴く」に課題があると認識するところから始める
ご指摘はその通りだと思います。非常に難しいことなので、明確な解決策があるわけではないんですよね。その中で、私が解決に向かう第一歩になると考えているのは、「聴くに課題がある」と認識をすることではないかと思っています。コミュニケーションには話す/聴くの行為があって、私たちは「聴く」が苦手だぞ、と認識できると踏み出せる一歩が見つかるように思っています。

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【櫻井さんからのアドバイス】
■ポイントは、インフルエンサーに「良質な聴く体験」を多く積んでもらうこと
聴く組織を創り上げていくには、トップの意志があって制度として全社で広めていく方法と、自分が管理しているチームやグループから広めていく方法があると思っています。

これはヤフー株式会社の事例になるのですが、当初1on1を導入する前には現場では反対意見が多くあったそうなんです。でも、トップが「いやいや、組織には1on1が必要だ」と意志を持って進めていった。その結果、現場で賛成の声が増えていき、反対派も変わっていったというお話があります。

とはいっても、トップを動かすのはなかなか難しい話なのも分かっています。なので、まずはご自身が見ているチームやグループに対して、「聴く」を取り入れていくことをすると良いのではないかと思います。自分の組織はこうするぞ、と意志を持って動かしていくことで、見える範囲から少しずつ変えていくことができるのではないでしょうか。

そして、その際のポイントは、組織内におけるインフルエンサーに「良質な聴く体験」を多く積んでもらうことだと、現段階では考えています。影響力のある方に「聴く」は組織開発に大事、「聴く」はパフォーマンス向上につながる、という体験をしてもらうことが良いのではないでしょうか。

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【お悩み #4】 職場の身近な人と「聴き合う」コツは?

初対面で利害関係がない相手と「聴き合う」ことよりも、同じ職場などある程度人間関係が構築された相手と「聴き合う」ことのほうが難しいと感じています…。その違いと、うまくいくためのコツがあれば教えてください。

【篠田さんからのアドバイス】
■人間関係が構築された相手に対しても“好奇心”を持つこと
ご相談を聞きながら、『LISTEN』でのエピソードを思い出しました。あるご夫婦の話で、長年一緒に過ごす中で二人の関係性が悪化。何とかしたいとカウンセリングを受けに行きました。

そこでのアドバイスは、“相手に対する好奇心を持つこと”。ずっと一緒にいた相手のことだから、自分は全部知っていると勝手に思い込みをしているというのです。しかしながら、人は1年、2年と同じ状況でいることはなくて、興味のあること、考え方など少しずつ変化している。そこに目を向けることで、脳の好奇心スイッチを入れてあげる、という話でした。

とはいえ…理屈で分かってもなかなか難しいの現実です(笑)。なので、利害関係がある相手と「聴きあう」難しさは分かった上で、一つのヒントとして受け止めてもらえたら嬉しいです。

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【お悩み #5】なぜ1on1で成果が出るのですか?

1on1によって得られる効果が見えづらいと感じています。なぜ「聴く」だけで成果がでるのでしょうか。

【内田さんからのアドバイス】
■1on1によって感情が動く。だから、パフォーマンスも上がる
私はこれまで2000人以上の1on1を見てきたのですが、成果がでる一番の理由は、“1on1によって感情が動くから”だと思っています。

上司があれをやりなさい、これをやりなさいと指示をしても、当の本人が納得していなければ高い成果には結びつきません。けれど、1on1を通じて、部下の不安な気持ちが分かったり、逆に上司の考えが分かったり…お互いに気づけることが非常に多くあるんですね。そのことが、“自分で動き出す”きっかけにつながっていると思っています。

一方で、感情が動いていないと、仕事に対してブレーキがかかってしまう。結果として、パフォーマンスが上がらない状況が生まれてしまうのだと考えています。

【篠田さんからのアドバイス】
■思考を言語化できるので、意志を持った行動につながる
1on1を通じて、自分の考えを言葉にする機会が極端に増えるからだと思います。私たちは、自分の頭の中にある考えや思いを全て言語化できているわけではなくて、言葉にして初めて理解を深めることができる。だから、途中でさえぎられない、安心して自分の考えを話せる環境は、”思考の断片”にアクセスすることを意味していると思うんです。1on1によって自身の思いや考えを言語化し、思考を深めることが、自身の意志としての行動につながっていくのだと思います。

最後に

セミナーに参加してくださった方々からは、「聴く力」を向上させる難しさ、「聴く」を組織に取り入れる上での苦悩など、たくさんの質問をいただきました。そこに対して、「聴く」のプロフェッショナルである櫻井さん、篠田さん、内田さんがアドバイス。

個人的には、「 部下の話を聴いても、全てに応えられない…」というお悩みに対する櫻井さんの「たとえ要望を聞けなかったとしても、ちゃんと聴いてもらえるとそれだけで満足度が高いのではないか」というアドバイスが響きました。私自身も、相手の話を聴く=相手の要望を受け入れる、と思い込んでいたところがあったのだと気づけたからです。

話を聴くことと、要望を受け入れることは別の話なんですよね。ここを理解していると、つい論破したくなる、打ち返したくなる、聴いたら負けだ…のような感情は持ちにくくなるのかもしれません。

幅広いご質問を、ありがとうございました。「なるほど、そう考えたらよいのか…」「よし、明日から実践してみよう」など、「聴きあう組織」を推進する上でのヒントが一つでも見つかれば嬉しく思います!


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