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経営戦略とは、人材戦略のことである|聴き合う組織をつくる『YeLL』のnote

組織の中で働き、仕事をしているのは紛れもない”人”です。

人事部任せの時代は終わった。経営環境の潮流として、人材戦略を”経営マター”として扱ってください」と要請されている状況に、私たちは直面しているとも言えます。しかし、300名以上の企業を対象にした「人材マネジメントの課題」に関するアンケート結果では、「人事戦略が経営戦略に紐づいていない」との回答が33.7%を占めています

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(令和2年7月 経済産業省 産業人材政策室 別添1「参考資料 P7より参照)

この現実に対し、具体的にどう向き合えば良いのでしょうか。前回に引き続き【UPDATA SEMINARS 全ての経営者に知ってほしい、「人的資本経営」の新潮流】より、イベントレポートをお伝えします。 【編集部 林】

50年近く変わらない「人材戦略」からの脱却

新卒一括採用、終身雇用、ローテーションによる人事異動・・・昭和の時代から変わらない人材戦略を踏襲している企業は、決して珍しくないでしょう。「これで変わった」という経験がないゆえに、「経営戦略によって人材戦略が変わるとは、どういうことなのか」がピンときていない経営者がいても不思議ではありません。そこで、エール株式会社の篠田さんから「もう10数年前の話ですし、中間管理職の一末端社員だった私の、個人的な視点による経験談ですが」と前置きをはさみつつ、事例が共有されました。

「2007年、私が勤務していたノバルティスは医療栄養食品部門をネスレに売却しました。当時、私は事業部に所属する財務責任者。事業移行、いわゆるPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)の現場責任者を担当し、ノバルティスからネスレへ、事業を丸ごと移す作業に取りかかることになったんです。

初めてネスレを訪問した時の第一印象は、『外国人が多い・・・』。同じ外資系でスイスの会社なのにですよ」(篠田さん)

2つの外資系企業が抱える、大きな違い

まずは経営戦略の違いについて、図を比較をしながら見てみましょう。

ノバルティスとネスレの違い

「当時、ノバルティスの日本法人は、CFOだけが本社駐在員の外国人でした。一方でネスレは経営陣だけでなく、マーケティング部門、生産部門など現場に近い各部署にも海外駐在員がいました。なぜでしょうか?それは、経営戦略の違いです。経営戦略の違いが、人材戦略にも色濃く反映された結果だと思っています。

ノバルティスの主要事業領域は、医療用医薬品。自前の研究に加えて、バイオベンチャーから有望な化合物を導入したいとの思惑があるため、株式交換で買収が重要になります。株価を高く維持することは、1つの戦略です。同時に商品の性質上、顧客ターゲットは”すべての人間”になります。日本だろうが、アメリカだろうが、どの国でも同じように薬は効きます。そのため、日本をはじめとする各国拠点においては当局の承認取得と営業に特化し、顧客対応に集中していました」(篠田さん)

日本に詳しい人材が、商品である医薬品を販売できれば良いため、海外駐在員の異動は必要がなくなります。さらに能力主義の会社でもあるため、専門性を極めてもらいたいとの思惑もありました。

「ファイナンス部門は、例外的に完全に”本社ライン”でしたので、グローバル人材の交流が盛んでした。営業はローカルに任せ、そのエリアに詳しい人材に取り組んでもらえれば良いもの。一方で、お金の流れは本社が抑えるもの、と明確に分かれていました。株価を高く維持することが事業戦略の中で重視されていたことも、ファイナンス部門が本社直轄になっていた理由です。」(篠田さん)

経営戦略が違えば、キャリアも大きく変わる

では、ネスレはどうだったのでしょうか。

「ネスレは食品飲料会社です。各国の多様な食文化の中においても、ネスカフェやブイトーニなどに共通する”ブランドイメージ”を想起してもらいたい狙いがあります。地域の食文化とブランド・・・一見すると二律背反な両者を、いかに統合するかが戦略の要になる企業でした。そのころの従業員数は全世界で20数万名。そのメンバーのうち、わずか1000名が世界各国を異動し、”ネスレ人”として育成されていきます。言わば、ネスレブランドの精神を体現する人になるんです。親子3世代でネスレに勤めていた同僚も、たくさんいました。彼らは中国やメキシコ、その他にもさまざまな国へ行っては、その国の食文化とネスレのブランドを照らし合わせながら『こんな味にするといいだろう』と調整していくわけです」(篠田さん)

ノバルティスと比べれば、ネスレのファイナンス部門は最重要視されているわけではありません。そのため、篠田さんが担当していた医療栄養食品部門の財務に関しても、日本のオフィス内で完結できることになりました。部署も職種も変わらず、働く会社が変わっただけ。そのまま同じ仕事が続けていけるような印象を持ってしまいそうですが、仕事に対して求められるミッションはまったく異なるものになってしまいました。

経営戦略が変われば、人材戦略も大きく変わる。それを身を持って体験し、その後のキャリアにも大きな影響を与えたと言います。同じような経験をされた方も、もちろんいるでしょう。

次回は、こうした組織内の経営戦略と人材戦略を一致させる際に、はまってしまう「落とし穴」について、お伝えしたいと思います。

※当日のイベント動画も公開されておりますので、合わせてご確認くださいませ。(https://www.wingarc.com/updata/seminar/index.html|過去セミナー紹介→Innovationよりご覧ください。)

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