「聴く」は、必須のビジネススキル|【篠田真貴子さん監訳『LISTEN』発売記念セミナー2】(前編)
9月9日、篠田真貴子さん監訳『LISTEN』発売記念セミナー第2弾「聴く力の高め方」が開催されました。登壇者は、エール取締役の篠田真貴子さんと、プロダクト開発責任者の内田修平さん。
このセミナーでは、「聴く」とビジネスにおけるさまざまなテーマを掛け合わせた内容をお伝えしています。第1回では、「聴くとD&I」について、話をしていきました。
・前回のセミナーはこちら
D&I推進は、「聴きあう」から始まる|【篠田真貴子さん監訳『LISTEN』発売記念セミナー1】
さて、シリーズ2回目の今回は「1on1スキル」について。前半では「聴く」はビジネススキルという内容で、篠田さんが『LISTEN』から読み解いたことを解説。後半では、管理職の1on1スキルを高めるための方法について、内田さんが話をしていきます。当日の様子を(前編・後編)でたっぷりレポートしていきますので、ぜひご覧ください。【編集部 奥澤】
【ご案内:10月21日13時開催!「1on1推進のリアル」お申し込み受付中】篠田さんが1on1成功のポイントや、管理職の方々の変化について、実際に1on1導入中の企業の方々にお話を伺います。ぜひ、お越しください。録画視聴のお申し込みもお待ちしています(詳細はこちら)。
【篠田真貴子さん監訳『LISTEN』発売記念セミナー2】
日時:9月9日(木)13:00~14:30
前半:「聴く」は必須のビジネススキル ←イマココ
エール株式会社 取締役 篠田真貴子さん
後半:管理職の1on1力を高める具体的な方法とは?
エール株式会社 プロダクト開発責任者 内田修平さん
「聴く」は、学んで身に付けるべきビジネススキル
――「『聴く』はビジネススキルとして必須です。だから、みなさん、学びましょう」。お話はそう始まりました。なぜ、必要なビジネススキルと言えるのか。「聴く」にどのような力があるのか。篠田さんは、「LISTEN」のエピソードを参考に解説していきます。
篠田さん:私がそう考える理由は、以下の3つです。
理由1 「聴く」は人間関係の土台である
理由2 「聴く」はパフォーマンス向上に欠かせない
理由3 「聴く」は自然体で身に付けることは難しい
ひとつずつお話していきましょう。
理由1 「聴く」は人間関係の土台である
上司・部下・同僚…ビジネスの場においては、共に働く人たちと良好な関係を築くことが求められます。その上で、重要な役割を担っているのが「聴く」スキルだからです。『LISTEN』では、「聴く」というのは、「相手に好奇心を持つこと」であり、「受け止めること」であり、「相手から学ぶこと」だと話がされています。
一つの例として…もしあなたの目の前に、自分に興味をもってくれて、自分の話には学びがあるのだという前提で話を聞いてくれる人がいたらどうでしょう? めちゃくちゃ仲良くしたいと思いませんか?(笑)。私自身もこういう態度で人と接することができたら、と日々努力をしているところです。このような観点から考えても、「聴く」は、人間関係を建設的に築く力と言えるのではないでしょうか。
――では、「好奇心を持つ」「受け止めること」「相手から学ぶこと」は、具体的にどのような態度・行動を意味しているのでしょうか?
篠田さん:『LISTEN』では、他の人の世界観を理解したいという切なる想い、人の話には驚きがあり、その経験は学びがあるという期待、自分が間違っているかもしれないという可能性に心を開く…という言葉で説明されています。
「受け止めること」について、分かりやすい例があったのでご紹介します。
ある友人との会話で、「うちの犬が先週いなくなっちゃったんだ。見つけるのに3日かかったよ」という話を聞いたとき、“受け止める対応”と“ずらす対応”の2つがあるといいます。“ずらす対応”とは、「うちの犬はいつもフェンスの下を掘っているよ。だからリードをつけないと外に出せないの」 相手の犬の話ではなく、自分の犬の話をしてしまっていますよね。一方、“受け止める対応”とは、「えー、そうなの。で、結局どこで見つかったの?」です。(『LISTEN』12章より)
このシチュエーション……耳が痛いですね。私にも身に覚えがあります(笑)。“相手の犬”の話を聞いているうちに、頭の中は“自分の犬”の話になってしまい、結果として受け止めず、自分の話へと“ずらす対応”をしてしまっているのです。みなさんはいかがでしょうか。
理由2 「聴く」はパフォーマンス向上に欠かせない
「聴く」は学んで身に付けるべきビジネススキルという2つ目の理由は、「仕事上のパフォーマンス向上に欠かせないスキル」だからです。
まず、量という観点から、現在のビジネスにおいて「必要なコミュニケーション量が増えたこと」が挙げられます。
『ハーバード・ビジネス・レビュー』に発表された研究によると、過去20年間に管理職と社員が一緒に働く時間は50%以上増加したことが分かりました。また、社員は1日のうち多い場合では、80%もの時間を他の社員とのコミュニケーションに費やしていると言われています。(『LISTEN』9章 より)
コミュニケーションは、聞く・話すによって意志の疎通を図ることですから、「聴く」の量が圧倒的に増えたと言えます。
質という観点ではどうでしょうか。
1つ目に「聴かれると、個人の問題解決力が上がる」という研究結果があります。
⼦どもも大人も関係なく、ただ耳を傾けてくれる、しっかりと聞いてくれる状況がある場合、問題解決力が著しく向上する、代替案やしっかりとした根拠を伴う詳細な解法を説明するということが分かったそうなんですね。(『LISTEN』12章より)
2つ目は「パフォーマンスの高いチームは聴きあっている」ということが証明されています。
グーグルは、2012年何がすばらしいチームをつくるのかを探るため調査に着⼿。分かったのは、もっとも⽣産性のあるチームは、メンバーの発⾔量がだいたい同じくらいという事実。加えて、お互いの感情を直感的に読みとる能⼒に⻑けていたことでした。(『LISTEN』9章より)
ここからも「聴く力」が高いチームこそ、生産性のある素晴らしいチームだと証明された結果が見えてきます。
3つ目は「異なる意見を理解するため」です。ビジネス上においては、自分の考えだけでなく、価値観の異なるさまざまな意見を受け入れていくことが求められます。近年、企業価値向上に向けて「D&I」の重要性が叫ばれていることからも、分かることだと思います。
私たちは「聴く」という行為を通じて、相⼿がなぜそう思うのか理解を深めることができるし、そのための質問をする。また、反論がある場合においても、相手の視点を理解し、その人がなぜその視点を持つようになったのかを完全に理解したときのみ、「効果的な反論」が可能となります(『LISTEN』7章より)
理由3 「聴く」は自然体で身に付けることは難しい
最後、「聴く」は学んで身に付けるべきビジネススキルという理由の3つめは、自然に身に付けることは難しいからです。
そもそもの話ですが、私たちは「聴く」ことを教わっていないという指摘があります。『LISTEN』では、「私たちは、会話についていくよりも、話題を提供して場を仕切るようにしつけられてきた」と書かれています。(『LISTEN』はじめにより)
実際の職場での場面を思い返してみるとどうでしょうか? 自分が上司や先輩という立場であれば、よりその意識が強く働くように思います。相手の話を聴く、ついていくというよりも会議を引っ張っていく役割が求められていると、無意識に思い込んでいるところがあるのではないでしょうか。
私たちは「聴く」ことを教わっていない、そこから同時に「聴かれる」ことにも慣れていない様子が見えてきますよね。実際、多くの人は「家族や友人に話を聞いてほしいとお願いするのは相手に負担をかけると思う」と口にするのだそうです。
他にも、脳の構造としての話で「人の思考は話すよりずっと速い」ことも要因の一つになっています。特に頭の良い人は、他にいろいろな考えが思いついてしまい、結果として上の空になってしまう、相手の話の内容を決めつけやすい状況があるのです。(『LISTEN』6章より)
これらの話から、私は「聴く」は自然に身につけたり、力を発揮したりすることは難しいスキルなのだと理解するようになりました。だからこそ、意識的に学ぶ必要があるのだと考えています。
――篠田さんの話を聞いて、私は「聴く」を勘違いしていたことに気づきました。特にビジネスの場面で、「聴く」は相手の意図に従うこと、「聴く」よりも「発言」のほうが知的価値が高い…そんな勝手な認識を持っていたように思います。
改めて篠田さんのお話をまとめると……
「聴く」は、ビジネスで成果を出す上で必ず求められるスキル。なぜなら、人間関係の土台であり、パフォーマンス向上につながっているから。けれども、残念ながら「聴く」スキルは自然体で身に付けることは難しい。そこを理解して、“身に付けるべきビジネススキル”として意識的に学んでいくことが大事。
後編では、聴くスキルが求められる「1on1力」向上について。「管理職の1on1力を高める具体的な方法」をお伝えします。
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