スルピリドで母乳が出るのは、軽い副作用じゃない。【私とおくすり】
まず最初に、この【私とおくすり】のシリーズは、この薬を飲むことになった人に向けて、体験記的にお送りするコンテンツである。
自分が薬の副作用などを調べる時に、精神科医が発信する客観的な情報しか見つからず困った。私は、当事者目線で、どのように効いて、どんな副作用があり、どんな気持ちか、の体験談が欲しいと思っていた。
もし客観的な薬の情報が必要であれば、医師の発信する媒体を確認していただきたい。また、ここに書いた副作用が出ない人もいるし、ここに書いていない副作用が出る人もいる。過度に恐れないでいただければと思う。
スルピリド(ドグマチール、アビリット)はおおまかうに言うと、胃の調子を良くする薬だ。
でも、若干の抗うつ効果があるので、メンタル不調による胃痛や、吐き気止め代わりに処方されることが結構ある。実際、スルピリドが持つ若干の抗うつ作用は私にも効いた。寝てばかりいたのが、ボーっと起き上がれるぐらいの変化である。
しかし、スルピリドの副作用に、高プロラクチン血症がある。
高プロラクチン血症は、一言で言うと出産直後のような状態になってしまう副作用だ。具体的には女性なら生理が止まって母乳が出る。
この副作用が発現した際、正直、ものすごいショックを受けた。
これはプロラクチンというホルモンの過剰分泌によって発現するもので、向精神薬ではスルピリド以外にも発現することがある。私の場合はテトラミドという薬を服用したところ、速やかに同様の状態になった。
おそらく、スルピリドなどが、報酬系のホルモンであるドーパミン受容体に作用する際、プロラクチンの受容体も掠めてるような気がする。
触らないで。ドントタッチミー。ネバー。
まあ、生理が止まるのはいい。望ましくはないが最悪、許せる。
でも母乳。
母乳だけは許せない。
私は、子供を持っていないし、持つ気も無い。子供を育てられるほどの人格的変化は今後も見込めないような気がする。
子供を持つ他の女性のことは尊敬しているが、自分の母に対してトラウマがあることもあり、自分が母親になるというのは想像したくない出来事だ。
それなのに、私の意思に関わらず、体が勝手に母乳を分泌する。母乳は、子供に与えるために出てくるもので、そうでなければあまり用途が無い液体である。
つまり、子供を持ちたくない、持とうともしていないのに、無理やり子供用の体にさせられているように感じる。
それは生理とは違う。生理は「妊娠という選択肢を与えるもの」であって、私から何かを奪っていくわけではない。
しかも実際的なデメリットとして、胸が張ることの不快感が大きく、眠るのに支障が出るほどだ。
その上、母乳が分泌される際に形容しがたい気持ち悪さを感じる。子供を産んだことがないので分からないが、話に聞くD-MER(ディーマー・不快性射乳反射)の感じに近いような気がする。
男性の場合は性機能に影響が出る場合があるし、胸がふくらんでくることがあるらしい。
それはそれでどうなんだ?
男性なのに胸がふくらむというのは、女性で母乳が出る以上にショックな出来事かもしれない。
こうした副作用があるにも関わらず、スルピリドは結構処方される。その背景に、高プロラクチン血症が軽視されがちだという印象を受ける。精神科の先生が出しているyoutube動画内で、「我慢しろ。生理が止まったり母乳が出ることぐらい、大したことじゃないだろう」というのを聞いた。
我慢しろ?
……吐き気や胃痛を我慢した方がマシなぐらい、母乳が出るというのは私にとってショッキングな出来事だ。そして母乳が分泌されるとき、胸から乳房を取り外したいほど不愉快に感じる。
もちろん、その副作用が自分に発現した時、大したことじゃないと感じる人もいると思う。
でも私は違う。私は我慢なんてできない。この薬によって自分の中の、踏みにじられたくない何かを毀損されていると感じる。この薬を飲まなければ命を失うというのでない限り、私は二度とスルピリドを飲まない。
スルピリドは沢井製薬さんが出している小さな緑色の包装シートに包まれた、可愛らしい錠剤だ。
多くの人を救ってきた、素晴らしい薬だ。でもこの小さな錠剤がもたらす副作用が、私にはどうしても受け入れがたい。
もし、これを読んでいる人が、同じように高プロラクチン血症で何とも言えない不快感を我慢しているのであれば、ぜひ主治医に相談してほしい。そして、止めるか他の薬に変えてもらう。
ワガママだなんて思わなくていい。あなたが飲みたくない薬を飲まないのは、あなたの人権に含まれる基本的な権利だ。
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