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可視化されることが良いことばかりでもない?
noteやTwitter、blueskyといったプラットフォームを通じて、自分の考えや活動を共有し、他の人の取り組みを知ることが簡単になったし、発信する人もとても増えたなと思う。僕が学生だった頃は、今のようなオンライン交流の場はほとんどなく、遠くにいる同じ分野の大学院生がどのように研究しているかを知る機会は限られていた。学会に足を運ぶか、2ちゃんねるや個人サイトを回って情報を探すのがせいぜいだったんじゃないかな。そういうとこに院生はほとんどいないから参考にはならないのだけど。あ、「研究する人生」なんて掲示板もあったね。それに比べると、今は非常に恵まれた環境だといえる。他の人がどんな努力をしているのかが可視化され、それを知ることで励まされることも多いんじゃないかと思う。
ただしこの環境には注意が必要だとも思う。例えば、助成金、生々しく言えば学振、を獲得するコツ、論文執筆の心構え、大学就活のノウハウといった情報が多く共有されるのは便利だ。僕は周りに学振に出した人すら見つけるのが大変だったし。
でもそれが逆に「頑張らなければ」というプレッシャーを生み出すこともある。具体的なことを強く発信する人って基本的にできる・できた人が多くて、しかも油断すると自分の苦労って大げさに書きがちなんで、どうしても「こんだけやらないと!」とかなってしまう。心安らぐ感じはしない。んー、まあ心安らげるために見ないかもしれないけど。
マイペースを徹底しようとしてもやっぱり他人の成果や努力が見えすぎることで、「自分ももっと意識しなければ」といった焦りが生じる場面がある。
孤独を感じる機会が減った点はたしかに大きな利点だ。だけどその反面、他人の動きが常に視界に入る状況では、自分のペースを保つのが難しくなっているのではないかと思う。その意味ではあえて距離を取ることも時には必要なはずだ。いわゆる「デジタル断食」とまではいかなくても、意識して遠ざけた方がいいってこともあると思う。