「ミサイル」という言葉がどう「育った」のか?
何かと空がやかましい1日でした。NHKニュースのトレンドランキングを見てもこの2つが上位を占ました。
朝8時というちょうど通勤の時間に今度はミサイル落下の可能性ということでJアラートが鳴り,交通機関が止まったため大学の授業は30分遅れて開始しました。
ちょっとこれに関しても私はだいぶ影響を受けたのですが,複雑になるので割愛して本題に入ります(涙)。
「ミサイル」の登場
ふとミサイルというカタカナ語がいつ出てきたのかが気になりました。そこで初出と言えばおなじみ『日本国語大辞典』を見ると1958年と出ています。
しかし,本当にそうだろうかと思い,さらに朝日新聞のデータベースでも調べてみます。すると,カタカナの「ミサイル」が朝日新聞に出たのは1956年でした。
どこにあるかというと最後の2段,ICBMという言葉の解説で,Mが「ミサイル」の略だと書かれています。ちなみに説明に2段使っていることからICBMもなじみないことが分かります。
解説でICBMは「大陸間ロケット弾」と呼ばれ,「「ガイデッド・ミサイル」(誘導兵器,略してGM)」や「「バリスティック・ミサイル」(弾道兵器,略してBM)」と書かれていることから,「ミサイル」というカタカナ語がまったく浸透してないことが読み取れます。
ちなみに私は『日本国語大辞典』より古い初出を見つけたのは初めてなのでちょっと驚きました。編集の詳細は分かりませんが,新聞は調査対象に入ってなかったんでしょうか。もしくは著作権の関係で入れられなかったとかですかね。
ちなみに1か月後の記事にもICBMは出てきますが訳語は「大陸間誘導兵器」になっています。
「ミサイル」が見えなくなった1年
その後,2月の記事にはICBMという語はなく「長距離誘導弾」と書かれ,「ミサイル」は消えました。
「ミサイル」の復権?
ところが1957年に入り「ミサイル」が見出しに登場します。
大きく見出しにも出てくるぐらいなので,雑誌やテレビなどで浸透したのかもしれません。そしてこの後は「誘導弾」や「誘導兵器」ではなく「誘導ミサイル」になることから,大きな変わり目だったのでしょう。
雑誌等での使用状況
もっと時間があれば1つずつ見るのですが,簡単に調べる範囲で朝日新聞ではこれぐらいが限界なので,別のデータベースを見ます。
国立国会図書館サーチを使って調べると1956年に「ミサイル」は2回登場しています。
そして1957年からの使用が多いことからやはりこの1年の間に「ミサイル」が浸透したのだと推定できます。
本当の初出は1955年?
さきほど初出は1956年と書いたのですが,実は研究関係の文献に限って調べてみると,1955年の次の抄録という外国文献の紹介に「ミサイル」という言葉が出てきました。
しかし,本文では「ミサイル」という表現が出てこないことから,「日本語として使われていた」のかというとちょっと違うのかなと思います。
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