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ベンチャー企業に若手が行く理由

今いるコンサル会社から、ベンチャーキャピタルに転職することになり退職に向けて着々と手続きを進めているのだが、

会社のトップの秘書から先日連絡があり、トップが話したいと言っていると言われた。
そしてトップと昨日喋ってきた

なにを言われるのやら。。。引き止められると面倒だなぁと思いながら、恐る恐る打ち合わせルームに入ると、トップから
「まぁ座ってください。やめちゃうらしいですね。どこいくんですか?」
(コンサルティング会社なので、役職の上下に関わらず敬語)

僕「ベンチャーキャピタルで大企業とスタートアップのマッチングのお手伝いをしてイノベーション創出支援をやろうと思っているんですよね。」
トップ「そうなんですか。最近結構ベンチャーとかスタートアップとか行く若手が増えていて、なにがそんなにいいんですかねぇ?」
と聞かれた。

なるほど、我々20代の若手がベンチャーやスタートアップに人材流出している課題に対してその原因を直接探りたいと思っているのか。
自分自身はベンチャー企業にいくというよりはベンチャーキャピタルに行くので、全く同じというわけではないが、界隈の人間ということでコンサルティングの経験も5年あり短くないのでなにかしら有意義な回答が得られると思われたのかもしれない。
そしてトップ自身はすでに60代であり、我々の世代の人間の気持ちを想像することは難しく会話によって確認する方法を選択されたというところだろう。

確かに聞かれてみると、ベンチャー企業やスタートアップは我々世代にとって人気な就職先になっていると思う。特にIT系、最近であればSaaS界隈に移る人の話はよく聞く。しかしながら、なにがそんなに惹きつけているのだろうか。

トップ「ベンチャーやスタートアップの仕事は、会社の基盤もしっかりしていないし、安定感もなく、ビジネスも小さいと思うけど、大きな企業で安定して、インパクトのあるビジネスをやるのよりなにがいいんですかね?安定感とかどうでもいいんですか?」
僕「確かに僕ら世代ではベンチャーやスタートアップの選択肢というのはかなり人気が一部にはある気がします。まず個人的な人生の安定感という意味だと、確かに大手企業の方が大きいというのは間違い無くあると思います。しかしながら、自分はコンサルティングのスキルを身につけてそれに自信を持っているので、いつ会社が潰れても全く自分の人生にとっては影響しないと思っているので、関係がないと思っています。」
トップ「そういうことですか、つまり自らのスキルに自信があるからこそ、ベンチャーに挑戦できるということですか?」
僕「そうですね、僕がもし経営コンサルタントとして全く結果が出せていないような人間でしたら、怖くてチャレンジできないかもしれないですね。いつでも経営コンサルタントに戻ってやっていける自信があるということは大きいと思います。」

そう答えた。
自分は経営コンサルタントとしてすでにやっていける自信があるからこそ、ベンチャーや新しいフィールドに挑戦できる。
だからこそだが、新卒でスタートアップに入る人や、特に何のスキルもないのにスタートアップに入る人はなんでなんだろう。勇気があるということなのか。それとも、なにかしら違う戦略や考え方を持っているのだろうか。
最悪なんとか食っていくことはアルバイトでもやっていけばいいのだから、会社が潰れる心配だったり、スタートアップのニッチな領域の知識が全く生かされないとしてもなんとかなるだろうと思っていると言ったところか。。。
僕にとってはあまりにリスキーだと思える。しかも、一流大学と呼ばれるような大学を出てそういった企業に入ることはかなりもったいない気がする。
なぜ一旦大手でビッグビジネスや成功してきた会社のマネジメントを知った上で、また大手の看板で人脈を広げてから、移ろうとは思わないのか。もしくはITやコンサルティング、マーケティング、人事、なんでもいいが専門性を集中して教育も受けながら身につけてからではなく、なにも環境が整っていないベンチャーやスタートアップに行きたいと思うのだろう。。。
これは謎である。
僕はスタートアップやベンチャーで挑戦することは大事だと思うし、ずっと日本の大企業に日本のエリートたちが閉じこもっていることはかなり問題だと思っているが、果たしてだからといっていきなりスタートアップやベンチャーがいいかと言われると疑問である。もちろん、ITなどの専門性を学生のうちにすでに持っている人にとってはこれは当てはまらない。
自分という人間は結局、コンサルのスキルが身につくまで5年もかかってしまうような能力しか持ち合わせていなかったからこその意見なのかもしれない。

僕「それとベンチャーの業務の内容にもよります。僕は今、日本経済に足りないのはイノベーションだと信じており、それを変えることによってこの国に貢献したいと本気で思っています。それは今までこの国でなかなかできなかったが価値あることだと思っています。そういう意味で、本当に意味のあることに挑戦できるベンチャーであるかどうかはかなり大事な要素だと思います。大企業は既存の価値の拡大ですが、ベンチャーやスタートアップの中でも、断続的な価値の創出を行うようなところであればこそ、行きたいと思います。」
トップ「そういうことですね、ベンチャーがいいというわけでは無く、世の中に与えたい影響を考えた時にできる環境がベンチャーやスタートアップの一部ということですね。わかりました。」

これを話した時も本当にそう思った。
イノベーションにはジレンマがある。これはクレイトン・クリステンセンという経営学者が語った、現代の経営学の中でも最も重要な発見の一つだが、大企業はイノベーターに駆逐される。
IBMよりGoogleの方が巨大企業になるなんて20世記ほんの20年前くらいまでは誰も思わなかっただろう。
現代の経済成長はレガシーのITではなく、新興IT企業が主導している。これは周知な事実であるし、AmazonがWalmartの脅威になるとは誰も思わなかったのもそうだ。
そして、GoogleやAmazonですら近い将来レガシーとなり、新たな新しいイケイケな今は誰も注目していないようなベンチャー企業やスタートアップがそれに社会を前進させる存在としてとって変わるだろう。

なぜなら人間は進化しつづける生き物であり、人間は快楽を求め続ける生き物だからだ。だから世の中にもっと効用を生み出す企業であるイノベーション企業(ベンチャー企業やスタートアップの一部)に入ることは、この世の中を変えることを意味し、資本主義に生まれた人間としてはその存在として世の中に貢献したいと思うのも自然な考え方の一つだろう。

おそらく、経済学も経営学も学んでいないとしても、スティーブ・ジョブズや孫正義に憧れてそういった欲求を論理的ではなく感情的に持っている人が20代には多いのではないだろうか。
それは社会のムーブメント(ファッションともいえる)として興っており、その流れがVUCAと呼ばれる予測不可能な変化の激しい時代に適合し、より大きくなっているのではないだろうか。
そして20代というファッションに敏感な世代はそれを肌で感じ取り、自ら実践しているのではないかと思う。

トップ「なんとなく、20代のコンサルタントたちが辞めていく理由がわかりました。また、もしコンサルティングをやりたくなったら是非一緒にまた仕事をやりましょう」
僕「ありがとうございます、是非お願いします!」

なんていい企業を辞めることになったんだろう

以上、昨日の会話で思った令和0年代を20代として生きる我々のベンチャー志向の理由に対する簡単な考察であった。


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