自閉症スペクトラム(ASD)の方々の認知スタイルのユニークさ vol.1
よこはま発達相談室の佐々木です。いつも記事をお読みいただき、また「スキ」「フォロー」「シェア」してくださっている皆様、ありがとうございます。前回は”ASDの方の生活支援で大切にしていたこと”という記事を書かせて頂きました。もしご関心のある方は下記にリンクを載せておきますのでご一読頂ければ幸いです。
認知って?
さて、今回はまたテーマを変えます。今回は"ASDの方々の認知スタイルのユニークさ"というテーマを何回かに分けて共有したいと思います。認知スタイルは、学習スタイルとも呼ばれたりしますが、いずれも”ものごとの捉え方、感じ方、考え方”のことを指します。私たちの中には、AというものをみてAと捉える人もいれば、Bと捉える人もいるかもしれません。例えば、同じ音楽を聞いても、心地良いと思う人もいれば、気分が高揚する人もいますし、うるさいと感じる人もいるでしょう。なぜこのようなことが起こるのかといえば、それは私たちの脳の働きが関係しています(詳しい話はここでは割愛します)。そして、ASDの人たちは、この脳の働き、つまり脳のタイプが、非ASDの人たとは違うと言われています。ですので、ASDの人たちを理解する上では、この認知スタイルを理解しておくことが役に立ちそうです。なぜかというと、ASDに関わる方の中には、ASDの人たちの行動のみに注目し、何か不都合があれば、その行動のみを変えようとすることがあります(あるいは、良かれと思って善意から行動面を修正させようとする)。
お互いを尊重し合うために
ですが、その行動が脳の働きによるもの、つまり、そもそものものごとの捉え方の違いからくるものすればどうでしょうか。自分では納得していないことや理解し難いことであったとしても、とにかく行動だけを変えることを目指した場合には、自分の考えと行動に大きな違和感が生まれることになります。「何でやらないといけないんだろう?」という疑念が増える一方で、その行動を続けなければならないというのは、非常にストレスフルではないでしょうか。例えば、世間で大人気の小説があったとします。でも、自分には小説を読むことよりも、音楽を聴くことに関心があり、その時間が何よりの楽しみだとします。でも、ある日から、「音楽は悪いもの、小説は良いものだから、今日からは毎日小説を読みなさい」ということを強いられたらどうでしょうか。そして、そこには拒否する権利はなく、そうせざるを得ないとしたらどうでしょうか。極端な例かもしれませんが、相手がどのようにものごとを捉え、感じているかを理解しない提案というのは、例え善意であったとしても、時にはストレスになりうるということを、自戒の念を込めて共有したいと思います。そこには、どこかで、私たちは私たちの考え方を”普通”と思い込んでいたり(そもそも、普通とは何でしょうか?)、”自分たちの目線から考えると、相手のこの行動は否”という意識が少なからずあるのではないでしょうか。確かに、人としての尊厳は同じですし、人としての敬意を払い、尊重することは言うまでもありません。ですが、本当の意味での尊重とは、お互いの考え方・感じ方を理解しておくこと、その上でお互いの文化や流儀を認め、建設的なやり取りをすることではないでしょうか。非ASD側の理屈から、ASDの人たちに行動を変えてもらうことを求めることは、当たり前ですがうまくいかないということは、ここまでの話でご理解いただけるのではないでしょうか。ですが、それは、何も伝えない、放任することとはまた別の問題です。ASDの人たちにとって、自分の考えや行動を判断しやすいような、また損をしない、便利な方法を活用して頂けるような情報や手立てを提示することは必要なことであり、それがASDの人たちに関わる人には求められることではないでしょうか。
ASDの人たちに見られやすい認知の特徴
具体的にはどのような認知の特徴があるのかについては、下記の図にまとめてみました。すでにご存知の方も多いかもしれませんが、次回から、それぞれについて詳しく解説をしていきたいと思います。
実際にはどのような刺激・情報の中で生活しているのか?
今回は、少しイメージを掴んで頂けるように、英国自閉症協会で紹介している動画を2本共有したいと思います。いずれも、全員に当てはまるわけではありませんが、当事者の方にご覧いただくと、結構当てはまることが多いと教えてくれることも少なくありませんので、イメージを掴んでいただくには良い映像だと思いますし、僕自身も講演会等で紹介させていただくことが多い動画です。
こちらの動画は、実際には動画のような強い刺激が発せられているわけではないけれども、あのように感じる方がいるという映像です。実際に、私がお会いしている方でも、LEDライトの光が痛いと感じるので辛い教えてくれた方もおりました。
こちらの動画は、聴覚的な情報に対して、情報処理が追いつかず、考えている間に次々と情報ばかり増えてしまい、混乱してきてしまう(それを示すために、字幕がどんどんモザイクがかっています)という動画です。
いかがでしたでしょうか?より具体的、実践的なことは次回以降、何回かに分けながら認知特性を解説していく中で共有をしていきたいと思いますが、上記の動画からは、すぐにできる支援、関わり方として、僕は次のことを教えてもらい、実践するようにしています。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。もし、この記事がなんらかのお役に立つようであれば嬉しく思いますし、多くの方に知っていただければと思います。今後も、定期的に情報発信していきたいと考えておりますので、フォローやシェアもよろしくお願い致します。
よこはま発達相談室 佐々木康栄
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自閉症スペクトラムの方々の知っておきたい6つの認知特性
ASDの方々は認知(ものごとの捉え方や考え方)特性に、違いがあると言われています。その結果、期待されるものと異なる言動が生じたり、ご本人も…
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