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発達障害の方々の老年期の支援に向けて

(4,725文字/個人差はありますが、約7分~11分程でお読み頂けます)
*なお、この記事は2年前にメンバーシップに書いたものを一部改変しています*


よこはま発達グループ(よこはま発達クリニック・よこはま発達相談室)では、年齢の制限なくご利用頂いている関係もあり、お会いする方々の年齢層にもかなりバリエーションがあります。    

また、多くの方々は継続的にお会いしていくために、当たり前ですが、子どもから青年に、青年から大人、そして高齢者へと変わっていきます。特に、これからは老年期に差し掛かってくる方々も増えていくため(日本全体が超高齢化社会になるので)、発達障害の領域でも重要なテーマの一つになってきます。    

そこで、今回は「老年期」をテーマに、今の段階で自分の知識として貯めていることを皆さんと共有していきたいと思っています。  

 実は、まだわかっていることが少ない

高齢化社会については、随分前から指摘されていたことですが、発達障害分野において取り上げられることが増えてきたのはこの数年の間のように感じます。     
障害福祉分野において、日本で一番最初に法律の整備がされたのが「児童福祉法」という法律なのですが、それが1947年のことです。その後、1952年に初めて自閉症の症例報告がされたそうなのですが、今から71年前に「自閉症」という概念の認知がスタートしたとも言えるかもしれません。     

単純に考えると、児童福祉法が試行された年に生まれた方(つまり、公的なサポートを受けられるようになった方)が、現在は76歳ということになり、日本で知的障害・発達障害の方々への支援がスタートしてからの歴史はまだまだ浅く(当然、それより前から知的障害・発達障害の方々はいたと思うのですが、そうした概念を持って対応はされていないだろうと思います)、老年期の支援についてはまだまだ実践も少ないというのが現状かもしれません。     

そして、高齢者になってくると認知症の問題も絡んだり、またお互いの症状が重なり合う部分も少なくないため、精神科領域では発達障害と認知症の鑑別もテーマの一つになっています。その中でも、知的障害のある方々の認知症の初期症状が見逃されやすいとも言われています。    

今わかっていること


これは様々な文献があるのですが、例えば、診断はつかないが自閉症特性のある人の老人は、自閉症特性のない同年代よりも、日常生活の困難や抑うつ・不安を抱えている(Wallace, Budgett et al. 2016)ことや、老年期の自閉症スペクトラムの方々はソーシャルサポート、医療支援の必要性が高い (Hategan, Bourgeois et al. 2016)ことなどが報告されているようです。   

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