英語あれこれ①~スクールバスでのこと~
私は、何十年も前、高校生の時に1年間オーストラリアにホームステイ留学をしました。当時は人口が6,000人くらいの小さな町だったので、隣町の公立高校にスクールバスで30分くらいかけて通っていました。
留学するといっても日本で英語の成績がよかったわけでもなく、特に学校では、皆が何を話しているのか、何を話せばいいのかわからず、授業もちんぷんかんぷんで、いつもオロオロしていました。それでも、学級委員のようなしっかりした女子がいて、いつも一緒にいてくれ世話をやいてくれたりもしたのですが、3-4人くらい集まったグループトークになるとその速さについていけずポカーンとして黙ってしまうことも多く、「Yuriはシャイ(shy)だから」と言われるようになりました。shy は「内気」とか「はにかみや」とか訳されますが、にぎやかな女子高校生グループの中では「シャイな子はつまらない」ので、初めのうちは日本人がめずらしくて私の持ち物(文房具)などにやたら興味を示していた子たちもだんだんと離れていき、ひとりになってしまうことも多くなりました。
また、スクールバスに乗ると、好奇心旺盛な目で見られたり、何かコソコソ言っていたりして、それもあまり心地よくないものでした。
1か月ほどたち、友達がほしいけど、ことばがなかなかわかるようにならないしどうしたらいいだろう…と思っていた頃、スクールバスでたまたま隣に座った子が、" Hi! I'm Mary "と言ってきました。Mary は高校生ではなく、中学・高校と同じ敷地内にあるテクニカルカレッジ(2年制の技術専門学校のようなところ)に通うちょっと年上--たぶん19歳くらい--の、化粧もバッチリした大人っぽい女性で、ちょっと派手な、近寄りがたい雰囲気もありました。
私も普通に自己紹介を返したのですが、その時にふと思いついてノートを取り出し、彼女の名前を漢字で書いてみました。「真理(まり)」…いやもっと複雑な漢字にしよう…「魔離」…日本人が見たら眉をひそめそうな選択ですが、この二文字を書いていた時、目を見開いていた Mary の表情を今でも思い出します。「building (ビルディング)みたい!」と言っていました。漢字を書く様子を見てビルディングみたい、というのも面白い感想だなあと思いながら Mary にノートを破ってあげたら、大喜びで他の年下の子どもたちにもみせびらかし、私は、そのあとしばらく他の子たちからのリクエストにもこたえることになりました。
その後、スクールバスに乗るたびに、先に乗っていた子たちから " Hi, yuri" と声をかけられるようになりました。
ことばが話せるようにならないと友達もできない、とちょっと焦っていた私でしたが、こんなささやかな交流でも嬉しい、まずはスクールバスが一緒の子たちの名前を覚えて、" Hi! "だけではなく、" Hi! 〇〇”と言えるようになることから始めよう!と思った出来事でした。
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