【数理的溢れ話21パス目】「単位元1」の定め方を巡る冒険(幾何学的アプローチと統計学的アプローチ)。
以下の投稿で述べた泡沫事象θ(Foamy Event,0<θ<2)の定義ですが、ネイピア数を用いてこんなふうにイメージする事も出来ます。
$$
Foamy(x) =
\begin{cases}
e^x & (x >0) \\
1 & (x = 0) \\
2-e^x & (x < 0)
\end{cases}
$$
これ(式1)を積分すると$${\int_0^2Formy(x)dx=2}$$。二で割って確率分布としてイメージする事も出来ます(式2)。
$$
Foamy(x) =
\begin{cases}
\frac{e^x}{2} & (x >0) \\
\frac{1}{2} & (x = 0) \\
\frac{2-e^x}{2}=1-\frac{e^x}{2} & (x < 0)
\end{cases}
$$
加法単位元0,や乗法単位元1を定める重要な局面ですね。それではどの様な応用が可能か順に見ていきましょう。
幾何学的アプローチ
式1から出発します、
正∞面体=球面座標系への拡張
虚数概念を導入してx=θi(-π<θ<+π)と置くと円環座標系を構築します(式3)。
$$
Foamy(x) =
\begin{cases}
e^{θi} & (θ >0) \\
1 +0i& (θ = 0) \\
2-e^{θi} & (θ < 0)
\end{cases}
$$
オイラーの公式$${e^{θi}=\cos(θ)+\sin(θ)i}$$を用いて
$$
Foamy(θ) =1-\cos(θ)+\sin(θ)i(-π<θ<+π)
$$
この実数軸1-cos(θ)、虚数軸sin(θ)iで構成される水平座標系にさらに垂直軸cos(φ)(-π<Φ<+π)を加えると球面座標系に拡張されますね(式4)。二次元表示だと垂直軸の+象限と-象限がピッタリ重なってその区別がつきません。
$$
Foamy(θ,φ) =1-\cos(θ)+\sin(θ)i+\cos(φ)i(-π<θ<+π,-π<Φ<+π)
$$
ああ、これはまさしく
コイン=正二面体(Regular Dihedron)
正四面体(Regular tetrahedron)
立方体(Cube)
正八面体(Regular Octahedron)
正十二面体(Regular Dodecahedron)
正二十面体(Regular Icosahedron)
に続く「第七のサイコロ」正無限面体(Regular infinitumhedron)=球面(Sphere)の定義に他なりません。ここでオイラーの多面体定理V(Vertex=頂点)-E(Edge=辺)+ F(Face=面)=対蹠(Antipodal)2を導入すると…
正二面体(コイン)のV-E+F=n-n+2(3<n<$${\tilde{∞}}$$)=2
正四面体のV-E+F=4-6+4=2
正六面体(立方体)のV-E+F=8−12+6=2
正八面体のV-E+F=6-12+8=2
正十二面体のV-E+F=20-30+12=2
正二十面体のV-E+F=12-30+20=2
正無限面体(球面)のV-E+F=$${\tilde{∞}}$$-$${\tilde{∞}}$$+2=2
正二面体(コイン)と正無限面体(についてはオイラーの多面体定理における多角形の場合(対蹠=0)すなわちV-E+F=0を用いてそれぞれ面を一個も備えない円弧および球面としても規定可能です。
トーラス体への拡張
実は上掲の「多角形としての正二面体(コイン)=円弧と正無限面体(球面)」は大半径Rと小半径rによって定められるトーラス体(単数形Torus, 複数形Tori)における両端でもあります。
大半径R=0の時…二重球面→正無限面体に対応
大半径R:小半径r=1:1の時…単位トーラス(Unit Torus)
小半径r=0の時…円弧→正二面体に対応
「大半径R=0の時は二重球面」…コインの表裏の様に球面の「表」「裏」をカウントしてる状態。普通はそうやって表裏を意識する必要がないので、例えば地球表面上位置を表す緯度(±90度)は軽度(±180度)の半分。
「単位トーラス(Unit Torus)」…多くの人にとって初見概念だと思いますが、実はコンピューターRPGによく出てくる「右端が左端に、上端が下端に連続するワールドマップ」に対応する位相空間。
群論では、ここでいう小半径r=0の場合を「1次元トーラス」、それ以外の場合を「二次元トーラス」と表現。さらにもう一次元加えた「三次元トーラス」は四元数(Quaternion)で表される空間となる。
「少なくとも部分的にはユークリッド座標系に従う次元が切れる」多様体(manifold)で考えるという事は、自明の場合として「屋根掛け法」の様な過去の遺物も含めこういう考え方も選択肢に入ってくるという事なんですね。
統計学的アプローチ
今度は式2から出発します。
ラプラス分布とコーシー分布
式2の水平軸のルベール内測度0~2を-∞~+∞の範囲に拡大したのがラプラス分布(Laplace Distribution)で、二重指数分布(Double Exponential Distribution)とも両側指数分布(Two-tailed Exponential Distribution)とも呼ばれます。
$$
Laplace(x∣μ,b)=\frac{1}{2b}e^{-\frac{|x−μ|}{b}}
$$
平均:𝜇(頂点の位置を定める)
尺度パラメータ:𝑏(裾の広がりを定める)
特に𝜇=0,b=1の時(中央値$${\frac{1}{2}}$$)を標準ラプラス分布という。
$$
Laplace(x∣0,1)=\frac{e^{-|x|}}{2}
$$
対応する「観察可能な自然分布」が実在するか咄嗟に思い浮かびません。機械学習アルゴリズムなどにおいて「外れ値をどう扱うか定める」主観分布として以下のコーシー分布(Cauchy Distribution)とセットで用いられます。
$$
Cauchy(x∣x_0,γ)=\frac{1}{πγ[1+(\frac{x−x_0}{γ})^2]}
$$
位置パラメータ:$${x_0}$$(中央値)
尺度パラメータ:𝛾(広がりを決める)
特に$${x_0}$$=0、𝛾=1の時を標準コーシー分布という。
$$
Cauchy(x∣0,1)=\frac{1}{π(1+x^2]}
$$
要するに絶対抑えておかないといけないポイントは…
ベイズ推定では①関心範囲を絞り込む場合、②関心範囲を拡大する場合、③それまでの外れ値(泡沫事象)が中央値になるなどして、関心空間が総入れ替えになる場合にベイズ更新が発生するが、「物語「シンデレラ」における「ガラスの靴の美女の登場」や「iPhone登場」の様な突発事象に該当する③そのものについて統計学的アプローチは無策に等しい。
その様な事象がどれだけ起こりやすいか(あるいは起こり難いか)によって、最適とされる確率分布予測も変わってくる。ラプラス分布はその様な事象が正規分布より有意に発生し難いと考えられる場合、コーシー分布はその様な事象が正規分布より有意に発生しやすいと考えられる場合に選ばれる確率分布である。
ああ、正規分布が「分布の女王」の座を降りて主観分布(分布の分布)の一部に組み込まれてますね。そう「単位元1を定める」という事は、統計学的アプローチにおいては「(観測における)中央値と外れ値の関係を定める」という事なのでこういう展開となる訳です。
ラプラス変換への拡張
ラプラス分布を回路方程式などを解く為に拡張したのがラプラス変換(Laplace Transform)とラプラス逆変換(Laplace Inverse Transform)。実際にはt>0の場合しか扱わないので指数分布の拡張とも見て取れるわけですが、それはそれ。
ラプラス変換そのものの定義
$$
F(s)=\int_{0}^{\infty} f(t) e^{-st} dt
$$
ラプラス変換の記号
$$
F(s)=\mathcal{L}[f(t)]
$$
ラプラス逆変換の記号
$$
f(t)=\mathcal{L}^{-1}[F(s)]
$$
ラプラス変換はこの図だと主に「過渡現象(回路のスイッチが入ってから(t=0)定常状態に入るまでの電気的変化)」の解析に使われる解析。
そう「単位元1」のあり方の一つとして、この様に複雑な諸要素の相互関係が相応の時間をかけて安定状態に入るケースも想定されるという話。こんな具合に随分と話が込み入ってきたところで以下続報…