Yasunori Matsuki

名乗るほどでもないインターネットと路上の観察者。

Yasunori Matsuki

名乗るほどでもないインターネットと路上の観察者。

マガジン

  • 2024年度「#未来のためにできること」に応募してみました。

    文藝春秋とnote編集部の2024年度共同企画「#未来のためにできること」への応募にかこつけて、これまで考えてきた事をまとめてみました。概ね1000字以内の本文と「その内容に至ったプロダクション・ノート的まとめ」のセットで構成されています。

  • 数理的溢れ話

    本文では脱線の過ぎる数理関連の話題の収納場所

  • 分布意味論時代の歩き方

    大英帝国が大西洋横断電信ケーブルを開通させたのが1966年。それ以前もそれ以降も世界中で鉄道への電信線併設や海底ケーブル設置が相次ぎ、米国を代表する詩人ホイットマンはそうした情景を「まるで世界じゅうが蜘蛛の糸で絡め取られていく様だ」と表現しています。そうやって世界の情報網を一つに束ねた結果、最後に現れたのが大規模言語システム(LLM)でした。そういう観点からの投稿を扱うシリーズ。

  • 21世紀的フランス革命の省察

    山崎耕一「シィエスのフランス革命」に刺激されて始めたシリーズ。既存のフランス革命に関する知識を再収録しつつ見直していきたいと思います。

  • 試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」

    山本義隆「磁力と重力の発見(2003年)」「少数と対数の発見(2018年)」やノーバート・ウィーナー「サイバネティクス(初版1948年、増補1961年)」の重厚な科学史観と現在の「機械学習と意味分布論の時代」を結びつける試み。私にとってはある種のライフワークで、以前の投稿から試みてきた内容の集大成となる予定。

最近の記事

「#未来のためにできること」に応募してみました(11)日本独自のSustainability観の伝統について振り返る。

ああ、遂に番号キャラクターが尽きてしまった…以下の投稿についてのプロダクション・ノート的まとめ。 忘れ去られた「新儒教哲学勃興期」本編で触れた「和俗童子訓(1710年)」は貝原益軒81歳の時に発表された日本初の体系的な教育書で、児童の発展に応じた随年教法に基づく点に特徴があり、寺子屋での教育や明治以降の小学校教育に強い影響を与えたとされています。そういう書物が刊行された歴史的背景は? もし日本でも中華王朝や朝鮮王朝の様に科挙が履行されていたとしたら、こうした思想の分散幅は

    • 「#未来のためにできること」に応募してみました⑩一定量以上の蜂蜜(Honey)が蜂達の物語の主役になり得る様に、一定量以上の資本(Money)は社員達の物語の主役になり得るのか?

      以下の投稿についてのプロダクション・ノート的まとめ。 はてさて自然言語の進化は写真の登場が肖像画家を、トーキー映画がサイレント映画弁士を駆逐した様な悲劇を再び繰り返すのでしょうか? その話に踏み込む前に「そもそも機械学習技術とは何か?」という話から始めたいと思います。 LLM(Large Language Model)登場前夜の機械学習界隈の風景機械学習技術の大源流、すなわち「訓練用データとテスト用データを分けて考える機械学習」概念の嚆矢はニューラル・コンピューティン

      • 「#デジタルで変わったこと」に応募してみました1/1。未来を明るいと感じるか暗いと感じるかなんて全て気の持ちよう?

        以下の投稿についてのプロダクション・ノート的まとめ。 あまりに微妙なデジタルとアナログの境界線これぞ「餅は餅屋」。ChatGPTに「デジタルとアナログの違いは何ですか?」と質問したら、完璧に近い模範解答が帰ってきました。 先人達の努力によって「10進数デジタル」の可能性は完全に枝刈りされてしまった模様。 どういう分野に残ったかというと… 「それは最初からさ定まっていた未来ではなかった」という話ですね。 そういえば大昔の私は「FM放送=デジタル、AM放送=アナログ」み

        • 「死中に活を求める」タイプのSustainabilityについての話。

          タロットカード「太陽」は「完成」だけでなく「(努力終焉に伴う停滞がもたらす)完璧な死」を示唆する事も。ある意味「死神」の暗喩する「破壊と再生のサイクル」より恐ろしい結末ですね。そもそも爆撃機撃墜技術として始まった情報理論では「情報量が0になって終わる解析完了」とは元来「後は機関砲なり対空砲なりをぶっ放すだけ」なる物騒なイメージでした。でも、もしそこに至る計算全てが罠だったら? 第二次世界大戦当時の航空戦といったら、本人もP-38ライトニングに搭乗して死線を潜ったマーティン・

        「#未来のためにできること」に応募してみました(11)日本独自のSustainability観の伝統について振り返る。

        • 「#未来のためにできること」に応募してみました⑩一定量以上の蜂蜜(Honey)が蜂達の物語の主役になり得る様に、一定量以上の資本(Money)は社員達の物語の主役になり得るのか?

        • 「#デジタルで変わったこと」に応募してみました1/1。未来を明るいと感じるか暗いと感じるかなんて全て気の持ちよう?

        • 「死中に活を求める」タイプのSustainabilityについての話。

        マガジン

        • 2024年度「#未来のためにできること」に応募してみました。
          27本
        • 数理的溢れ話
          15本
        • 分布意味論時代の歩き方
          20本
        • 21世紀的フランス革命の省察
          16本
        • 試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」
          14本
        • とある本格派フェミニストの憂鬱
          13本

        記事

          シンギュラシティより恐ろしい「Big Data活用術の人間への依存率が低下していく時代」における個人のSustainability戦略についての話。

          地球上の生物が初めて視覚と視覚情報を授かったカンブリア爆発期に「史上初の百獣の王」の称号を射止めたアノマロカリス。ただしこの生物には硬い殻や棘で覆われていたり、体内に毒を蓄えたり、常に泥中に潜伏する難敵を捕食する手段が一切なく、それ以外全てを乱獲で滅ぼした末に餓死した可能性が指摘されています。 一方最近、深層学習界隈が「学習データの自給」を標榜する様になりました。それまでこの界隈の伸びが著しかったのはインターネット上の巨大トラフィックが「餌」に使えたから。適当なスクレイピン

          シンギュラシティより恐ろしい「Big Data活用術の人間への依存率が低下していく時代」における個人のSustainability戦略についての話。

          【デジタルで変わった事】より速く、大量に、最小限の誤差で。

          太古の昔から大天文学者とか大物理学者とか大数学者と呼ばれ敬われてきた人達は、振り子の振る舞いから多大なインスピレーションを得ていた様です。そして1656年にはオランダの数学者クリスチャン・ホイヘンス(Christiaan Huygens ,1629年~1695年)が、イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei,1564年~1642年)の発見した振り子の等時性を定速機構に組み込んだ振り子時計を発明。ジョン・ネイピア(John Napier,1550年~

          【デジタルで変わった事】より速く、大量に、最小限の誤差で。

          【数学的溢れ話15パス目】円錐座標系とミクロ経済学

          私は、それなりにはカール・マルクスの思想を継承してる立場ですが、労働価値説についてだけは効用価値説に差し替えました。 さらにあえてミクロ経済の諸概念を円錐曲線に関連付けて考える立場です。 【例題】あなたは午前中の仕事をこなしながら、どの店でランチを食べるかについて考えている(選好基準はお金の話に限らない)。 差し当たっての候補は中華料理屋A、洋食屋B、和食屋C=実元3個で虚元=その他は空集合。とりあえずどの店にも特定の思い入れはない=ベイズ推定において「理由不十分の定理

          【数学的溢れ話15パス目】円錐座標系とミクロ経済学

          「いつからかSustainabilityが全てに優先される様になった」という話

          「枕草子」「方丈記」「徒然草」などの随筆が日本人の間で広く読まれる様になったのは江戸時代以降。製紙業界の価格競争が生んだ出版文化開花のせいですが、権力の拠り所が土地単位の「職の体系」からサービス単位の「道の体系」に推移した結果、武家や公家だけでなく庶民まで家のSustasinabilityにこだわる様になったせいでもあったのは石門心学流行を見ても明らか。 当時の前近代的伝統については貝原益軒「和俗童子訓(1710年)」「女大学(1716年~1736年)」辺りが悪名高いですが

          「いつからかSustainabilityが全てに優先される様になった」という話

          未来が勝手に向こうから襲来してくる場合のSustainabilityについての話。

          イタリア・ルネサンス以降、解剖学や建築学の成果が粛々と絵画化された背後には「カメラ・オブスキュラ(「カメラ」の語源)」の存在がありました。やがてセルロイドフィルムに画像が残せる様になり、肖像画専門画家の大量失職を引き起こしてしまいます。 また横溝正史「悪魔の手毬唄」には「真犯人はゲイリー・クーパー」なる台詞がありました。ゲイリー・クーパー主演映画「モロッコ(1930年)」などのトーキー化がサイレント映画弁士を失職させたのが、本当の意味での連続殺人事件の発端だったというのです

          未来が勝手に向こうから襲来してくる場合のSustainabilityについての話。

          「#未来のためにできること」に応募してみました⑨日本こそ「対ディズニー戦争」の継承者?

          以下の投稿までで一つの学習プロセスが完了しました。 Sustainabilityとは「準安定段階の持続に向けてのフィードバック体系」 タフでなければ生き延びられない。タフなだけでは生き延びる資格がない 文明が発展するためには個性と多様性、そして天才が保障されなければならず、これを妨げる権力が正当化される場合は他人に実害を与える場合だけに限定される。 自らを「過去→現在→未来の時間軸に沿って運動する主体」として連続的にイメージするのが困難な時代に必要なのは、何よりもまず

          「#未来のためにできること」に応募してみました⑨日本こそ「対ディズニー戦争」の継承者?

          破壊的イノベーションとしての「ガラスの靴の美女」は今日なお華麗に逃亡を続けているという話。

          去年から今年にかけて海外アニメ・ファンの間で「舞踏会論争」なるものが展開しました。日本のTVアニメ「葬送のフリーレン」などに素晴らしい舞踏場面があり、それにディズニー・ファンが「まだ美女と野獣のレベルにも到達してない」と水を差したところ、逆に「ディズニー映画は舞踏会シーンどころかラブロマンスの世界から引退した」「それを求める女性層から卒業した」とやり込められてしまったのです。典型的な形での持続的イノベーションの自発的放棄例。皮肉にも1930年代、世界恐慌下の暗い世相に迎合した

          破壊的イノベーションとしての「ガラスの靴の美女」は今日なお華麗に逃亡を続けているという話。

          「#未来のためにできること」に応募してみました⑧とりあえず中締め。

          すでにお気付きの人もいるかもしれませんが、このシリーズでは「身近なSDGsエッセー」なる与えられた課題と自分の従来に関心の接点を探るべく、ある種のランダムフォレストを仕掛けてみました。 一旦は人工知能に敗れたプロの囲碁棋士が「定石=人間的知性の人間的知性に対する過剰適応」から脱却し「青い手(最適手)も緑の手(第二候補)も打てない蕁麻疹状態(各マスの確率表示のみが可能な状態)」に追い込むAI攻略法に到達した先例に倣いたかったのです。既存文学でいうとシュテファン・ツヴァイク(S

          「#未来のためにできること」に応募してみました⑧とりあえず中締め。

          「#未来のためにできること」に応募してみました⑦「サイバー空間の時代」が遂に?

          以下の投稿についてのプロダクション・ノート的まとめ。 なんと知る人ぞ知るカルト映画「JM(1995年)」に触れてしまいました。 当時のVR物というと「ディスクロージャー(1994年)」も忘れられません。 そういう内容を思いついた発端は以下の記事。 「Appleが「Vision Pro」の活用事例を公開。シミュレーションやトレーニング、デザインに生産性向上まで幅広く(2024.04.11)」 他にもAppleが「Vision Proと人工知能援用でSAPを盛り立てる」宣

          「#未来のためにできること」に応募してみました⑦「サイバー空間の時代」が遂に?

          人工知能技術は、シンギュラリティなど起こさずとも「人間の人間への過学習」を指摘して世界そのものを刻々と変えていくという話。

          IT企業の生存率曲線はワイブル分布そのもの。 安定期に入るまで容赦なく淘汰が続く一方、その後の安定が長引くとじわじわと大企業病などに蝕まれていきます。 SAP、IBM、OracleといったSustainability Solution Supplierの皆さんが一緒になって対策を考えてくれるのは後者のみ。実際、Microsoft社がBorland社やNovell社と競合した時、IBMがOracleやAppleと競合した時、いかなる第三者なら仲裁可能だったでしょうか? そも

          人工知能技術は、シンギュラリティなど起こさずとも「人間の人間への過学習」を指摘して世界そのものを刻々と変えていくという話。

          「#未来のためにできること」に応募してみました⑥本物のSustainability先行者は、そもそも同じ周回上にいない?

          以下の投稿についてのプロダクション・ノート的まとめ。 なお、冒頭に登場する会社は特定されても困るので複数の案件をそれぞれ微妙に改変しつつ混ぜ合わせてあります。もし万が一、ピッタリ条件の合う企業が存在したとしても、それこそ私の関知するところではないので悪しからず。そもそも、あの種の扉のセキュリティ・ログは1日分だけでもとんでもない分量になるので、それこそ人工知能技術かCognitive Computingの援用でもなければ迂闊に近付けないというのが正直な所な様です。それでも緊

          「#未来のためにできること」に応募してみました⑥本物のSustainability先行者は、そもそも同じ周回上にいない?

          「パラノイア(偏執症)のみが生き残る。自分がなれないならパラノイアに任せよ」と最前線指揮官は語った、という話。

          ある大手企業本社の総務部はデータ計測に熱心で、事あるごとに百均に売ってる様なカウンターを駆使して通勤時間帯やランチタイムなどにおけるビル内要所の交通量を計測してExelに打ち込んでおりました。でも気になる点が一つ。「この社屋、あらゆる扉がカード認証だよね。そちらのデータを回してもらえばいいのでは?」そう尋ねたら、こんな自虐的な答えが返ってきたのです。「我が社はグローバルスタンダードたるERP環境に対応すべく、社内管理システムの全てを海外業者に一括して委託している。だからそうし

          「パラノイア(偏執症)のみが生き残る。自分がなれないならパラノイアに任せよ」と最前線指揮官は語った、という話。