以下の四段階技術革新(Four-stage Innovation)史観のうち「大数学者や大物理学者の時代」について掘り下げるシリーズです。
数秘術師や魔術師の時代(イタリア・ルネサンス期~近世)
大数学者や大物理学者の時代(大航海時代~1848年革命の頃)
統計学者と母集団推定の時代(産業革命時代~現代)
機械学習と意味分布論の時代(第二次世界大戦期~現在)
最速降下問題からの出発
変分法(Variational Calculus:変分解析学)概念の起源は、このシリーズでいうところの「大数学者や大物理学者の時代」における最速降下曲線の研究にまで遡ります。
以下の投稿で名前を挙げた「大数学者=大物理学者」の面々の人となりについての貴重な記録といえましょう。
計算過程は参照サイトに譲るとして、この問題の答えは以下となります。
形の学校・サイクロイドの変分学
$$
x=A(θ-\sin(θ))
$$
$$
y=A(1-\cos(θ))
$$
ホイヘンス(Christiaan Huygens ,1629年~1695年)の名前は上掲投稿にもちょっと顔を出しますね。彼がサイクロイドの数理を用いた振子時計を完成させたのは最速降下問題が解かれるはるか以前…
1-cos(θ)の形は、私もよく$${i^{1-cos(θ)(0≦θ≦π)}}$$の形で使うが、要するに0からπにかけてのcos(θ)の振り幅を+1~-1から0~2に写像する。
θ-sin(θ)も要するに初期値と向きを弄ってるに過ぎない。ちなみに上の図は0+sin(θ)で動かしている。
これが同じ変数Aでアスペクト比を変える事なく拡大縮小されるのが「等時曲線」である証。
最初の設問に沿って考えるとこういうアニメーションとなります。
最速降下曲線(サイクロイド)の坂よりも速い坂
ハミルトン・ヤコピ方程式への到達
この時代から「数学と物理学の絶地天通成立(数学者が数学一本で食べていける様になる時代の到来)」に至るまでニュートンの運動方程式(Newton's equation of motion)の「数学的洗練」が続きます。
$$
ma=m\frac{d^2r}{dt^2}=F
$$
$$
L(q(t),\dot{q}(t),t)=T-V
$$
$$
S[q]=\int_{t_1}^{t_F}L(q(t),\dot{q}(t),t)dt
$$
$$
\frac{σS[q]}{σq_i(t)}=\frac{∂L}{∂q_i}-\frac{d}{dt}\frac{∂L}{∂\dot{q}_i}=0
$$
$$
H(p,q,t)=\sum_ip_i\dot{q}_i(p,q,i)-L(q(t),\dot{q}(p,q,t),t)
$$
$$
S[p,q]=\int_i^f\left[ \sum_i p_i(t)\dot{q}_i(t)-H(p,q;t) \right]dt
$$
作用の停留条件から導かれる運動方程式(ハミルトン方程式)
$$
\frac{∂ S[p,q]}{σp_i(t)}=\dot{q}_i(t)-\frac{∂H}{∂p_i}=0
$$
$$
\frac{∂ S[p,q]}{σq_i(t)}=-\dot{p}_i(t)-\frac{∂H}{∂q_i}=0
$$
ハミルトン–ヤコビ方程式(ハミルトンの主関数$${S(q_1,…,q_N;t)}$$に対する一階非線形偏微分方程式)。この時Sは古典的ハルトミニアン$${H(q_1,…,q_N;p_1,…,p_N;t)}$$の正準変換の母関数。
$$
H(q_1,…,q_n;\frac{∂S}{∂q_1},…,\frac{∂S}{∂q_N};t)+\frac{∂S}{∂t}=0
$$
数学からのアプローチでは、また別の見え方をする様です?
中根美知代「解析力学の形成における数学」
「解析力学(1788年)」におけるラグランジェの姿勢
この辺りの議論から変分法の導入が不可避となる模様…
「動力学における数学的方法(1834年,1835年)」におけるハミルトンの姿勢
なんと「最小一乗法」にはラプラス(1799年)以前に先駆者が?
「カ学講義(1842年~1843年)」におけるヤコピの姿勢
これで数学と物理学が絶地天通していく「大数学者や大物理学者の時代」末期の風景にだいぶ目鼻がついてきた気がします。そんな感じで以下続報…