製薬コマーシャルの人間が国際学会に参加する意義
ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)が盛り上がっている。国際学会にはいつも参加したかったし、実際参加する機会もいくつかあった。会社にもよると思うが、自分は常に「国際学会への出張は旅費も高いし拘束時間も長いので明確な目的と成果が必要だ」と言われてきた。
ただ、コマーシャルの人間にとってこれはそう簡単ではない。開発やメディカルアフェアーズは疾患や製品の最新エビデンスを迅速に知ることは業務の肝なので正当性が高い。ただコマーシャルが同じ理屈は通りにくい。後から開発やメディカルからまとめをフィードバックしてもらえばいいからだ。
なので、自分は参加する際に常に別の目的を入れて参加していた。というかそうしなければ出張承認がおりなかった。その目的は2つで、internal のengagement とexternal のengagement だ。まずinternalの方は、普段は会えないグローバルや他地域の社員と会ってディスカッションすることだ。
コロナ禍前から既に海外との会議はWebがベースになっていて、社内会議のための出張は難しかった。ただ主要学会には欧米やグローバル部門の人達も出張するので、空き時間や空き日にひたすらアポイントを詰め込む。当然大義名分は必要で、自分の場合は日本のビジネスに対してアドバイスしてくれとお願いするのが多かった。大体の人は教えるのは好きだし断られることはほとんどなかった。そしてそこの会議では実際に学びは多く、それを日本に帰ってチームに共有することでチームに貢献できるし学会に参加した意義をきっちり説明できる。
そして2つ目のexternal engagement。これはイメージつきやすいが、要は忙しいKOLも学会では休憩してたりのんびりする時間があったりするし、アポも取りやすいという話だ。実際国際学会に行くといつもとは違うリラックスした先生方を見れることが多い。私の先輩はよく主要な講演会場の中を見渡しどの先生と話すタイミングを作るかを計算していた。もちろん学会前にアポイントを約束しておくことも有効だ。ただこの時も、なぜ日本ではなく国際学会で会うことが大切だったかをきちんと正当化できることが肝要だ。自社や競合品の最新データを発表直後にディスカッションすること、などなど。
以上、製薬企業のコマーシャル担当者が国際学会参加する場合の意義と正当性について経験からの持論を述べさせていただいた。