起業して受けた洗礼
起業して活動する中で、自分がいかに弱い立場で、かつビジネスというものを甘く見ていて、大企業に過去守られていたかを実感する出来事があった。
自分の会社は医療ツーリズム推進の本業に加えて、過去の製薬企業での経験を活かしてヘルスケア関連のコンサルティングもしている。先日、コンサルティングとして貢献できそうな会社Aと面談する機会があった。事前に課題感をヒアリングし、それに対してのソリューションの方向性を提案し、自分がその課題解決に伴走するということでコンサルとしての費用感も出した。また、課題の方向性が正しいかを検証するためにそのソリューションに関われる製薬企業のキーパーソンBさんも紹介した。
感謝され、感触は悪くなかったと思う。コンサル委託については検討してすぐ連絡しますと言われていた。
その後、連絡は来なかった。
提案した内容は悪くなかったと思うのだけど何故かな、と思っていた時に別の製薬会社のCさんと会う機会があり、こんなことを言われた。
“なんかA社さんが今日会いに来てたんですけど、Bさんと○○(自分が提案したソリューション)をやるからCさんも是非参加してくださいって言われましたよ。面白そうですよね”
愕然とした。自分が知らないところで、自分が紹介した人と、自分が提案したソリューションが進んでいた。
最初のこの話を知った時、裏切られたと思ってひどく落ち込んだ。自分が良かれと思って提案して一緒にやろうとしたことを、アイディアとコネクションだけ取るなんて。と思った。
でも違う。冷静に考えると、これは単に自分が甘かっただけだ。向こうの立場になって考えてみれば当然で、アイディアとしてのソリューションがあって、それを一緒にやってくれるパートナーがいるなら、僕なんて必要ないのだ。わざわざコンサル料を払って一緒にいてもらう必要がないということだ。価値があったのはアイディアとコネクションであって、僕の人材としての能力ではなかったのだ。
この件は自分にとって洗礼であり、貴重な学びを与えてくれた。これまで大企業にいてコンサルを依頼する側の立場だから知りもしなかった。独立して自分の会社を持っている以上は、それが提供できる価値を明確にし、契約して対価をもらえることを確実にしなければ相手に手の内を明かしてはダメなのだ。
ショックではあったが、これからの糧になる経験であった。と同時に、世で個人ないしはチームでコンサルをやっている方々はやはりすごいなと思う。圧倒的な付加価値があるからこそ彼らは対価を得ることができる。