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病院分析:BDMS (Bangkok Dusit Medical Services, タイ)

日本では医療機関は医療法人として分類され、医療法人は非利益法人として得られた利益は医療への再投資に回す必要がある。また、その理由から医療法人そのものは上場できない。(ただし、上場させるスキームはいくつかある。参考:xxx)。
 
一方、海外においては病院がいわゆる株式会社として上場できる国も多い。タイもその1つであり、上場していれば日本と同様に決算資料が公開されている。
今回はタイを代表する病院グループの1つであるBDMS (Bangkok Dusit Medical Service)の決算資料について紹介し、私見を述べたいと思う。この病院は医療ツーリズムにも注力しているため、そのあたりのデータも決算資料からある程度読み解くことができる。
 
最新の決算資料は2024年度の第2Q時点のものなので、それを元に紹介していく。
https://bdms.listedcompany.com/misc/PRESN/20240814-bdms-analyst-presentation-2q2024.pdf
 
まず、このBDMSが抱えている病院数を確認してみる。

BMDSの所有する医療機関リスト

病院数としては58施設有しており、それ以外にラボなどの施設を8件、ウェルネス系の施設を3件有している。58施設の中にはJCI認定を受けている施設が11施設ある。JCI は医療機関の国際水準を測る代表的な指標の1つであり、日本においては取得しているのは30施設強だ。そのため、タイの1病院グループで11個認証病院があるのは、やはり医療の国際展開を強力に推し進めていることが窺える。病床数は数十から数百となっており、日本の中小病院クラスの規模が多いことがわかる。
 
さて、これらの施設を有するBMDSがどのような財務状況なのかを見ていきたいと思う。

BMDSの決算サマリー

これが半期分(6ヶ月)の財務状況だが、半年間で病院の売上は50,219 mm THB, 日本円にすると約2000億円だ。単純に倍にして、年間で約4000億円の売上があることになり非常に規模が大きいことがわかる。驚くべきは純利益率で、7408 mm THB (≒300億程度)の純利益で14.0%の利益率だ。民間病院なので直接の比較はできないが、日本は大学病院の半数が赤字(xx)なのを踏まえると収益性の高さが際立って感じられる。
 
それ以外の指標を見てみると、国内 : 海外 = 71 : 29となっており、約30%が医療ツーリズムによる収益であることがわかる。
 
続いてその医療ツーリズムの患者内訳が下記となっている。

医療ツーリズム顧客の内訳

国別に見るとトップからカンボジア、中国、アメリカ、日本、イギリスがトップ5となっており、日米欧いずれからも集客に成功していることがわかる。しかも人口の多いアメリカや中国は25%以上の成長率を示している。右側の地域別の成長率を見るとヨーロッパや中東で極めて大きな成長率を示していることもわかる。タイはアジア圏以外からも極めて高い人気を誇っていることがわかる。
 
ちなみにこの決算資料の中では、タイのチェンマイにある“Bangkok Hospital Chiang Mai”が特にフィーチャーされて紹介されている。興味深いのはその病院の医療ツーリズム集客に関するページだ。

チェンマイ病院への医療ツーリズム

これを見ると最も来ているのはUSからで、年間の伸び率も27%と非常に大きい。右側にそのインサイトが書かれているが、チェンマイにおけるUS人のコミュニティがハイクオリティのヘルスケアを求めていること、遠隔診療や英語対応ができることなどが書かれている。
2番目は中国。こちらはチェンマイにいる中国の駐在員や旅行客に人気となっており、英語同様に中国語が話せる環境が整っていることが人気の理由として書かれている。
 
このようにざっと見るだけでも海外病院の決算資料は示唆に富んでおり、非常に勉強になる。他の様々な病院についても今後見てきたいと思う。

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