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子どもが不登園になった#01

「保育園いかない!!!」
いつものイヤイヤと声のトーンが違う。
「今日はいやなの!」
息子が顔をクシャクシャにして抵抗を示す。今日は随分嫌がるなあ、と思いつつ、もう仕事に行く時間。
息子を説得してなんとか連れて行く。自転車の後ろでは不服そうだったけど、園に着いたらお友達が駆け寄ってきてすぐにニコニコ。
一安心!じゃあ、ママ仕事行ってくるね〜!と預けていつもの通り出勤した。

そう、この時はまたいつもの通りにお迎え行って、またおんなじ日が続くと思ったんだ。

でもそうじゃなかった。
お迎えの時、息子は傷だらけだった。
顔に複数の引っかき傷。目にかかってるのもある。

「え、誰かとケンカしたんですか?」
先生に訊ねる。
ベテランの先生は申し訳なさそうに、
「いえ…機嫌の悪いお友達に八つ当たりされてしまって…。息子くんは何もしてないんですけど…急にそのお友達が掴みかかってしまって…防げなくて本当に申し訳ありません」
と頭を下げた。

え、なに、なに、どういうこと???
機嫌が悪いから八つ当たりで、幼児が掴みかかるって、何その子?
野生の動物??
通り魔ですか???

頭がぐるぐるする。 

こういう時、反射的に怒れればよかった。
日頃からぐっと気持ちを飲み込んでしまうクセがでた。
ホント、怒ればよかった。
色んな感情が出てきたけど、他にもお迎えの保護者の方達が来ていたので、一旦息子を引き取り、自転車に乗せた。
息子に聞くと、すぐに誰がやったのか教えてくれた。

自転車を漕ぎながら、色々考える。
とても悲しかったし、悔しかったし、理由がわからなかった。

これがケンカならいいんだ、お互い様だから。
でも通り魔的だよなあ、納得いかないよなあ。

帰りにパパの仕事場に寄って、傷を見せて理由を伝える。
パパは基本一人職場なので、来客がなければ息子も私も出入りができるので、何かあった時はありがたい。
パパはすぐに「診断書とっておこうか」と。

おお、パパ戦闘態勢???
傷は複数あるけれど、ひとつひとつそれほど深くはないし、1週間すれば治りそうな程度だけど…。
私の表情から察したのか、パパは、
「一応ね。別に訴えるとかそういうんじゃないから。記録として残しておいていいと思う。明日俺が病院連れてくから」
と冷静に言った。

翌日パパは言った通り診断書を貰ってきた。
引っかき傷6ヶ所、全治1週間。
怪我自体は大したことはない。でも、でもね、この理由が納得いかない。

診断書をもらってから、息子とパパで登園した。保育園の担任の先生や、園長先生からは謝罪はもらったらしい。
でも何日待っても、相手の親御さんからは何も無かった。

そして、同じタイミングでその子から引っ掻かれたり、蹴られたりした子が他にも数人いたことが分かった。
中でも一番傷が酷かったのがうちの息子だったみたいだ。

あの日、あれだけ嫌がってたのは、何か感じるものでもあったのかな?
子どもって勘がいいともいうし、なにか嫌な予感でもしたのかもしれない。ただ本当に行きたくなかったのかもしれない。
どちらにせよ、無理矢理行かせたことへの後悔が襲ってきた。行かなかったら怪我しなかったよね。
何より、嫌だっていう気持ちを無視してごめんね。

そして、引っかかれた翌日、息子は6歳の誕生日を迎えた。
保育園から貰ったお祝いの色紙には、笑顔でピースする傷だらけの息子の写真が貼ってあった。

ここから3日後、息子は登園できなくなった。









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