愛された孫 2-9(私小説)
花江は沈黙が苦手だったのかもしれない。食卓がテレビの音だけになると、最近あった出来事や見ず知らずのご近所さんの噂話をした。ご近所さんのことは全く知らないので正直聞いても分からないのだが、私も沈黙が嫌いな高校生になっていたので頷いて相づちを入れた。
「りっつぁんは可哀想だった。」
最近の話が終わると、よく出てくるのは利一郎の人生についてだった。
花江が利一郎を憐れむのは、利一郎の生い立ちからだった。利一郎の実母は彼が小さい頃に亡くなり後妻が来た。後妻の間に兄弟が三、四人生