創造のとっかかり 美と何かをかけあわせる
自分が設計するときに何をとっかかりにして、何を思って設計しているのかを理解し、強化したい気持ちがあります。
建築家や芸術家は何をとっかかりにして創作しているのか考えたところ、とっかかりは一つではなくて、二つかそれ以上のとっかかりを組み合わせているのかなとふと思いました。(これは創作する人からしたら常識かもしれません。私が今まで意識していなかっただけで。)
そしてとっかかりのうちの一つは、「美」だと仮定しています。作家自身が美しいと思うもの(あえて一般的な美と離れたものを美として提起する場合や、あえて美を感じさせないようにするという美意識も含む)や、こんなふうでありたいというイメージを現実化しようとする意志が、創作のとっかかりの重要な一つだと考えます。
ただその一つだけで、創作をスタートするのは私には難しい気もしました。ほかにも、自分が興味を持っている部分や気になるところをとっかかりにして、それを「美」と組み合わせながら創作が進んでいく、というのが現実的です。
例えば、今までに私がみた作品や文章などから得た印象をもとに羅列しているにすぎませんが、ざっとこのような事例があげられます。
スミルハン・ラディク 寓話×美
ピーター・ズントー 光×素材×美
妹島和代 プラン(内と外)×美
石上純也 新しさ???×美
坂茂 構法×美
ザハ・ハディド 構成(または造形)×美
草間彌生 点々(内的な景色)×美
会田誠 美術の歴史×社会×美
ヨーゼフ・ボイス 社会×美
では自分は建築のどんな部分に惹かれて興味を持ち始めたのか考えてみました。建築の一部としての「物質」(壁とか窓とか腰壁とか吹き抜け部のボイドとか)があることで、人がどんなふうに感じ動くかということ、「物質」があることで人と人がどんなふうに関係性をもつかということ、の二点に気強く興味があります。上の羅列のなかでは妹島さんが近いかもしれないと思いました。ただ、つくりたい空間のイメージは妹島さんの作品とはそこまで近くありません。あくまで私の感覚ですが、妹島さんの建築の中では目の焦点が割と近くに感じられることが多く、個人的には遠くに焦点が集まる感じ、あるいはもっと外部を感じられるような大らかさを求めているとことがあります(割と規模の小さめな作品しか見ていないことも影響しているかもしれませんが。)。とっかかりの片方は近いけれど、美的感覚のほうは少し遠い、というところでしょうか。両方近いと同じになってしまうし、そんなことはありえないので当然といえば当然です。
また私の中でもう一点気になることは、建築とくに住宅は社会的な問題と関わりがあるということです。前に老後についてのnoteでも書いたようなことです。そこを全く無視してつくるということはできなさそうです。ただ、これが創作のとっかかりとなるか(内的動機)になるかというと、わかりません。問題解決は当然のようにやるべきことなだけともいえます。創作のとっかかりとなるのであれば、上記羅列の中に参考にできる人はいそうです。問題解決のための設計条件として考えるのであれば、それもありです。なんとなく後者のような気がしています。
重要なのは、複数のとっかかりがバラバラなのではなく歯車のように組み合わさって、例えばプランから考えたら新しい美しさを発見したり、美しさを追求したらプラン的にもおもしろいものができる、といった相互作用です。この部分は、調べてみつつも、実践あるのみです。