雑記 38 海辺にて
海辺にて
山口佳紀
水平線の彼方を
白い船が走っている
ーあの船はどこに行くの
娘が尋ねる
ーどこか知らない国さ
夢のように遠い国だよ
私は答える
遥かな夏 私の裡(うち)から
沢山の船が出航した
未来の世界をめざして
水平線の向こうに
消えて行った船の多くは
そのまま
二度と帰って来なかった
赤錆びた自分の船を
探し求める目に
夏雲だけが
あの日のようにまばゆい
(産経新聞「朝の詩」1995.8.17)
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