成年被後見人の不動産売買契約(司法書士過去問)

下記の内容は正しいか?
成年被後見人が成年後見人の同意を得てした不動産の取得を目的とする売買契約は、行為能力の制限を理由として取り消すことができない
令和5年度 過去問より

この問題を解説ために、法的三段論法を用いて考えてみます。

大前提(法規範):
1. 民法第9条は「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」と規定しています。
2. 婚姻・養子縁組などの身分行為は、成年被後見人であっても取り消すことができません。
3. 成年後見人の同意を得た法律行為であっても、原則として取り消すことができるというのが法的解釈です。

小前提(事実):
問題文では、成年被後見人が成年後見人の同意を得て不動産の取得を目的とする売買契約を締結したという事実が示されています。

結論:
これらの前提から、以下のように結論を導き出すことができます:

1. 不動産の取得を目的とする売買契約は、日用品の購入や日常生活に関する行為には該当しません。

2. また、この契約は身分行為でもありません。

3. したがって、この売買契約は原則として取り消すことができる法律行為に該当します。

4. 成年後見人の同意を得ていたとしても、それは取り消しの可能性を排除するものではありません。

5. よって、「成年被後見人が成年後見人の同意を得てした不動産の取得を目的とする売買契約は、行為能力の制限を理由として取り消すことができない」という記述は誤りです。

補足説明:
1. 成年後見制度の趣旨:
  この制度は成年被後見人の保護を主目的としています。そのため、成年後見人の同意があったとしても、それが必ずしも成年被後見人の最善の利益につながるとは限らないという考えに基づいています。

2. 取消権の意義:
  取消権は成年被後見人自身に与えられた権利であり、これにより成年被後見人は自己の利益を守るための選択肢を持つことができます。

3. 法的安定性との均衡:
  成年後見人の同意があっても取消可能とすることで、取引の安全性が損なわれる可能性があります。しかし、法はここで成年被後見人の保護をより重視していると解釈できます。


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