自分の専門性が何か分からない。
学部生からの相談で多い相談の1つです。
「自分に専門性が何か分からない。」
「自分の専門性を生かした就活をどうすればいいか。」
「自分の専門性を生かせる企業がどれか分からない。」などなど
このような,自分の専門性に関する就活相談,多いです。そもそも,この専門性という言葉がどこからやってきたのか考えると,おそらく就活ビジネスでしょう。あなたにピッタリの仕事があるはず!という文脈から派生したものと考えられます。
1)専門性は必要か?
前提として何か専門を極めることが必須だとは私は考えていません。人には個性があり,その個性は1つのことを集中して学べる個性と,色々なことをこなせる個性があるはずだからです。就活という雰囲気の中,専門性があるのは優秀で,そうではない人はダメのような雰囲気が形成されていて,学生が「専門性が無いにしたい」と言わされているようにも感じます。
マルチな才能がある人,学問的専門では語れない能力がある人は多々います。ノウハウやスキルもあります。人間性という言い方はしたくないですが,魅力的でみんなの中心になるリーダ気質の人もいます。そのため,そもそも専門性を軸にしたい理由が本人にあるかどうかをまず確認しています。
そして無いのであれば,まずは興味やワクワク感,あるいは働き方,企業理念への共感など,別の見方を指針として就活することをオススメしています。
さて,その前提の上で,専門性を軸にしたいという場合はどうでしょうか?この専門性を,ここではある学問(分野)を学んで,研究して身につく当該分野の知識と理解度として定義します。それを軸にした仕事選びについて考えてみます。
2)専門性の差はかけた時間の差
専門性の差は大まかに言えば,それを習得するために費やした時間が強く影響すると考えています。もちろん成長はある程度のところで鈍化するので時間と専門性の成長は非線形になります。しかし初学から博士課程程度の間の学びは,大抵の場合は線形的にのびる分野が多いと予想します。つまり,かけた時間だけ専門性が成長する,高くなるということです。また,専門性というのは,基本的に何かを学んで利用できるようになって成立すると定義します。つまり研究にかけた時間,絶対的に研究活動にかけた時間が専門性に大きく影響すると考えています。
3)学部,修士,博士の違い
今のトップ層の理系がどの程度研究しているか試算すると,私の観測範囲では,大学4年の卒業研究や,修士の2年間では,1日7時間程度×週6日は研究活動しています.つまり,月168時間,年間約2000時間,3年で約6000時間です. 修士では,これだけ理系的なやりかた(研究)を繰り返すので,課題解決能力は確実に持っています.しかし,これでギリギリその分野の専門性がつく程度と思います(もちろん分野次第です)。博士課程であと3年,つまり,あと6000時間,4年生から合計で12000時間かけて専門性を磨いています。自頭がいい以前に,確実な努力で前に進んでいます.
4) 日本の企業では学部卒,修士卒,博士卒が同じ土俵のことも
会社では学部と修士が同じ土俵で戦う場合があります。昨今では博士もそこに参加しつつあります(まだまだですが博士の民間での専門性を生かした活躍が少しづつ増加)。 専門職になれば,学部卒者は,修士や博士の人の4000時間や10000時間の積み重ねとの差を埋めて戦うことになりかねないということを理解する必要はあります。いやいや企業で実務の中で学んだほうが成長する,という人も多いと思います。そういう人は,それで全然問題ではないです。どこでも学ことは可能です。少なくとも,企業での研究開発で学びながら仕事を両輪できる組織と,目の前の仕事に追われて,専門性を鍛えられない場合とはあるでしょう。その見極めは必要と考えます。
5)そもそも専門性が合致したとしても
日本の新卒一括採用では,総合職や広い部門,例えばR&Dのような大きなくくりで採用をおこないます。そのため,細かく専門性をアピールして,合致したような空気で内定が出たとしても,その専門性を生かせる部署に配属されることが確定していない場合が殆どです。そのため,他の要素よりも専門性を優先しすぎると,もし希望部署に配属されなかった場合,その会社を選んだ理由が殆どなくなってしまう可能性があります。つまりすぐに転職をすることになります。それでももちろん問題ないのですが,労力がかかります。それならば,専門性の一致よりも,通勤が楽,会社の理念が好き,社員食堂がおいしい,福利厚生がよいなど,部署に関係なく納得のいく要素のある会社を選んだほうが良いと私は考えています。
ちなみに,私は機構学分野で博士(工学)を得て,配属では制御の仕事でした。1から学ぶことになりました。
6)まとめ
言い方をかえると,3年生時点で就活時に自分の専門性が何か悩むのは当然で,それは,まだまだ発展途上だからです。そのため,何か軸をつくらなければと焦る必要はないと思います。どうしても,専門性を生かした仕事をしたいなら,上記のような競合者との差は意識する必要はあると考えます。人生100年時代,仕事をしながら,転職を経験しながら,働きながら自分の好きなことを専門にしていってもよいかもしれません。
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